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ラフ&スムース 第三章 ⅩⅩⅩ 初稿



「ラフ&スムース 第三章」




「ゲームセット!」


「ぜえっ! ぜえっ! ぜえっ!

……あ、もう……駄目だ―……っ!」


ばたりと、コートの真ん中で突っ伏して倒れ込む仁科さん。


「仁科先輩っ!?」


駆け寄る千里さん。


「…………まったく、ひなの部長に、あんなこと言うからですよ。

ていうか、土のコートで倒れると服、汚れますよ?

早く立って試合後の挨拶してください」


審判の羽曳野先輩は誰に対しても相変わらず容赦がなかった。


「……あ、ご、ごめんなさい!

すぐ立ち上がりますんで!」


よろよろと、千里さんのサポートを受けながら

汗だくの疲れた身体に鞭打って起き上がった。


「だ、大丈夫ですかー!?」


「う、うん! ありがとう笹倉ちゃん」


選手は最後ネット際に集合して挨拶をする。

互いに握手をしながら言葉を交わしあった。


「……どうかな? お望み通りになった?」


「あー、あはは! 凄く、勉強になりました!

前年度覇者の日向ひなのさんに

ここまでがっつり相手してもらえるとは思ってなかったですよ!

今日のこの練習試合は間違いなく

私にとって今までで一番有意義な時間でしたよ!

ありがとうございました!」


「……そっか、それはなにより」


「それでは、両者礼!」


「「ありがとうございました!」」





「…………なんだかなあ……」


練習試合はスケジュール通りに問題なく終わった。


結果は、一勝二敗。

トータルでは我が校の負けである。


一回戦はあっという間だった。

5ゲームマッチだったのだが

いっきに3ゲームを決められて終わってしまった。

赤石中学チームは本当に急造のペアなのか疑わしいくらいに

連携が上手く取れていて

どうやら我が校の三番手ペアは付け入る隙を見つけられなかったようだ。


ていうか、仁科さんもそうだけど、千里さんめっちゃ上手いよ!

なんかもう洗練されている感が半端なかった。

本当に僕と同じ一年生?


ウチの三番手ペア曰く

「まるで去年のひなの部長ペアが

ワンゲーム取られた時の相手のようだった」

と……


そのときの相手も赤石中学だったらしいのだが

でも、千里さんは当時まだ小学生だった筈なので

その試合にはたぶんぜんぜん関係が無いとは思う。


考えられるのはひなの部長の相手をしたその人から

直接、千里さんや仁科さんが指導を受け、

その試合運びを忠実に再現したとか、なのかな?


う~ん……なんかあんまり現実感ないけど。


二試合目はそれなりに拮抗した試合になった。

千里さんらが連戦で疲れてきたのか

それとも我が校の二番手である羽曳野先輩ペアが強かったのか

5ゲームフルに使っての試合となった。


まあ向こうも一番手と三番手(今は二番手だが)の子同士がペア組んでるから

(1+3)÷2=2 で

実質二番手と言えなくもないから同等ってことで、いいのか。


え? そんな単純な話じゃないって?


一試合目での相手ペアの動きをよく見ていたのか

それとも過去の試合のことを言ってるのか

序盤こそ相手に2ゲームを取られはしたものの

「……ふむ、やはりそうか……

このパターンは、研究済みだ」

って台詞が羽曳野先輩の口から聞こえてきてから

一気に盛り返してきたんだよね。


最終的にファイナルゲームにまで持ち込んで

おお! これはいけるんじゃないか……!? と、

完全に流れはこっちに来ていたと思ってたんだけどなあ……


それでも最後は競り負けてしまった。


正直、何で負けたのかよくわからんかった。

流れが急に変わったというか、なーんか違和感があったんだよね。

イマイチよくわかんないんだけれど。


羽曳野先輩、悔しがってたなあ……

三番手の三年生ペアに「先輩ごめん!」って言ってるのが聞こえたから

つまり、結構本気で挑んでいたんだと思う。


それだけ千里さんと仁科さんは強いということか。


しかし、最後の試合だけは様相が違った。


少しの休憩を挟んで試合開始前

仁科さんは

「勝てないまでも、全力で! できるだけは粘ってみる!」

と千里さんに言っていた。


それを聞いたひなの部長。


「わかった。 じゃあ私もそれで行くね」


と仁科さんに言う。


「「…………」」


二人とも、一瞬ポカーンとなったが

ひなの部長の引き出しを

できるだけ多く見たかった二人は


「「の、望むところです!」」


と、意気込んで挑んだものの


あとはまあ、この通り。

仁科さんは体力の殆どを使い果たされ

というか搾り取られたと言った方が正しいのか?

結局要所要所の凡ミスにより最後は敗れた。


どういうことかというと

仁科さんはあらゆる手段を使って全力で点を取りに来てたのだが

ほぼ全てのショットをひなの部長に難なく返されてしまった。


そして、ただ返されたのならまだ良いのだが

全部仁科さんが無理せずとも手の届く範囲内に返球されていた。

そしてまた仁科さんは工夫を凝らしたショットを再びひなの部長に放つ。

しかしまた仁科さんの手元に戻ってくる。

それの繰り返しが延々と続き、

最後は精も根も尽き果てた仁科さんのミスショットにより自滅した。

という、なんとも恐ろしい結果となった。


ていうか、ひなの部長これマジで強すぎへん?

シングルスのコートならどこにも死角無いのと違うん?

あれだけ相手に左右に振られても

追いついて息切れもしない半端ないスタミナも持ってるし

流石に全力スマッシュチャンスは相手に与えなかったみたいだけど

生半可なショットだと本当にどこも通らない感じだったよな。


…………。


改めて横から客観的に見ると、

益々そう簡単には手が届かない人なんだと実感してしまった。

本当に追いつけるのかな? 僕。


結局、この試合で余裕勝ちしたのはひなの部長ただ一人で

他のペアは多くの課題の残る結果となった。


まあ、それが分かっただけでも収穫だと言えよう。 

もう時間はあまり無いけれど。






 

◇◆







赤石中学校

女子ソフトテニス部コートにて。



「睦月! たっだいまー!」


「おかえりなさい、千里。

…………日向先生……は? 一緒じゃないの?」


「あー、その……帰りは丁重に断ったよー。

トレーニングと称して走って帰ってきた。

なんか仕事も忙しそうだったしねーあははー!」


「そう……部長さんは?」


「仁科先輩はねー

最後の試合でヘロヘロになっちゃったから

いま歩いて帰って来てるよー。

まだ道中の半分くらいかなー?」


「そう……それで? どうだった?」


「えへへー、結構、豊作!」


「そう、それは良かった。

やはり、肝は前年度覇者、日向ひなの?」


「そうだねー、でも、あれはちょっと今の私では無理だよー

フィジカルが違い過ぎる……」


「……まあ、でしょうね」


「でも、ちゃんと見て、覚えた(・・・)


「ふふ、楽しみにしてるわ」


「あ、もちろん他の人も良かったよー

特に二番手の子、まさか”モード北山”が

破れそうになるとは思わなかったよー」


「…………そう、それは、ちょっと手強いわね」


「でも大丈夫! そっちもちゃんと見てきたからー」


「じゃあ、あとは練習あるのみね」


「はいー! 頑張りますー!

……でも残念、あっちの秘密兵器だけは拝めなかったよー」


「?…………秘密、兵器?」


「そ! 山桃さんちの鈴音さんー」


「…………! 

SEPIALONセピアロンの彼女、か……

それはいいわ、こっちも楽しみだし」


「…………ふ~ん……」


「……なに?」


「睦月が、楽しみなんて、言うんだ……」


「お、おかしい?」


「ううん! おかしくない! おかしくないよー!

それはとても良いことだよ!

うんうん! 楽しみだよねー!」


「…………ば、馬鹿!」


「ふふっ

それでねー、今日、その子とまた会う約束してるの!

鯨筋張るの、教えてあげるんだ―!

あ! そうだ! 睦月も一緒に来る?」


「あの子、まだ張ってなかったんだ……

いや、私はいいわ。 ちょっと用事もあるし」


「そうなんだー、残念」


「よろしく言っといて」


「わかったー。

それじゃあ、また明日ねー」


「あ! 千里!」


「なにー?」


「…………アレから、特に変わったこと、ない?」


「アレって……! あ~……アレ?」


「その、体調、とか……」


「…………うん、ぜんぜん! おかげさまでバッチリ!

元気元気だよー!」


「……そう、それは良かった」


「……………………睦月」


「ん?」


「……用事って、また危ないことじゃ、ないよねー?」


「……ただの、ヤボ用よ」


「ホントにー?」


「あんなことばかりしてたら、命がいくつあっても足りないわ」


「た、確かに……そりゃ、そうだけどー……」


「千里」


「な、なにー!?」


「この際だから、ハッキリ言っておくけど

貴女はもうこの件には関わらないで欲しいの。

正直、足手まといだしそもそも千里には関係のない話だし」


「関係なくないっ!」


「…………!」


「親友でしょ! 私たち!

それに、私……助けて、貰ったし……」


「……あれは私の不始末を片付けただけ。

貴女はなにも気にしなくていいわ」


「睦月っ!」


「やってることは、犯罪行為だから……

千里は、関わらない方が、いい」


「そ、そんなの! 今更だしー」


「駄目!」


「…………」


「千里……もし、助けたのを恩に感じてるなら、

貴女が無事に生活を送れてることこそが

恩返しになるってことなんだから。

それを台無しにしないで欲しいの」


「……うん……」


「わかった?」


「…………わかった」



本日はここまで書いて終了です。 なんか中途半端ですね。

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