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ラフ&スムース 第三章 ⅩⅩⅥ 初稿



「ラフ&スムース 第三章」




RiRiRiRiRiRi


ガチャ


「はい、日向です。

……あ、日影様ですか!

……はい……はい……ひなた様?

ひなた様は只今入浴中でして……」


「……ん? お母さんから?」


「あ! ひなた様! って、ひなた様!? 

またそのような姿で屋敷内をうろついて! はしたないです!」


「え、そうなの? だってわたしには自分自身は視えないし

どうなってるのかよくわかんないし……

どうせここ自分ちだしどんな格好だろうがべつにどうでもいい……」


「そういう問題ではありません! 

さ、早くお召し物を……」


「ん、とりあえず、電話、代わって?」


「……あ! そ、そうでした! 

日影様、お電話代わります! はい、ひなた様受話器!

あと、すぐにお着替えをお持ちしますので

ひなた様はお電話終わってもそこに居てくださいね!」


「はいはい、貴女も大変ねぇ。 

こんなご主人に仕えちゃって……

べつにメイドとしてなんか働かなくても

誰も文句なんか言わないし、言わせないのに」


「…………私のことはこれで良いんです。

他に役に立つことなんて無いんですから……

では、すぐ戻ってきますので」


タタタと足早にこの場を去った我が家のメイドさん。


私はふうと溜息をつきながら電話の受話器を耳に当てる。


『……いったいどんな格好でいるのかな? ひなたちゃんは?』


「……べつに。ただバスタオルを腰に巻いてるだけだよ?」


『……はあ……まあ、その辺に関しては

私も人のこと言えないから仕方ないけど、

あまりあの子の心労を増やすようなことはしないであげてね』


「あ~! お母さんがそういうこと言う?

いつも怒られてたのお母さんじゃん!

これでも全裸じゃないんだから、本来は怒られない筈なのに

お母さんが居ないせいで私にお鉢が廻ってきてるんですからねー?」


『こら! そんな、強盗のウラに隠れたコソ泥みたいな考えはやめなさいって』


強盗に説教された。


「ぶー! そんでなに? そっちは楽しくやってるんでしょ?

こっちは何の変哲も何もない変わりない

退屈な日常を繰り返してますが、何か?」


『そうだろうと思ってね。 そこで提案なんだけど

貴女もこっち来ない? あの子と一緒に』


「え……だって、そしたら里に責任者が誰も……」


『まだ、しばらくは大丈夫よ。 

この前見た感じかなり安定していたし

まだ数年は保つわ』


「それは、こちらがちゃんと監視管理しているからであって、

無防備を晒していれば内側の連中がもしそれに気が付いたら……」


『どうやって? そんな手段、過去にも例が無いわ。

それにいくら手薄になったとはいえ

里にはまだ数名は信頼できる人間が残っているし、深山の大婆様もいる。

有事の際は少しは持ち堪えられる。 心配はいらないわ』


「う~ん……それはそうなんだろうけど、

でもだからと言って責任者がこぞって全員責任を放棄して

現場を離れるのはなんかこう、無責任というか、心の葛藤というか……」


『そもそも、今の貴女がそこに残っていても何にもならないでしょ?

それはあの子も私も同じ。 まだ分家の深山の連中の方が役に立つわよ』


「お母さん、やっぱりまだ……」


『昨日、思うところあってちょっとだけ力を使ったんだけどね……

一瞬で、力尽きちゃった……』


「…………」


『だから、ね? ひなたもこっちに来なさい。

ひなのもひなもこっちに居るんだから』


「それは……だって……

ひなのちゃんも、ひなちゃんも……」


『私が貴女を区別してるなんてこと、するわけないでしょ!

みんな家族なんだから、気軽に来たらそれでいいんだから!』


「……………………うん、わかった。

丁度、退屈してたところだったんだ!

準備できたら、すぐ向かうよ」


『あ、ちなみに、貴女の世話は睦月と師範代さんにやってもらうから』


「……えっ?」


『あの子にはちょっと別の用事をお願いしなくちゃいけなくて』


「ちょっ! そんな後出しでそんなこと言う!?」


『いいでしょべつに、どうせ貴女今ただのニートなんだし、

やることも特に無さそうだし、最低限ボディガードさえいればそれで』


「だってそんなの気を遣うじゃん! 私も周りも! 私そんなの嫌だよ!

ただでさえお母さん達をよろしくって頼んであるのに

そこまで睦月ちゃんに負担かけられないよ!」


『何言ってるの? 元々深山はそういう役回りなのよ?

あと、べつに私はもうガードから外してくれて構わないわ。

こんなポンコツ、どうせ今後役に立つことも無さそうだしね』


「それは駄目! お母さんは現当主なんだから

たとえ現状がどうであろうとそんなことは許されないよ」


『……はあ……それは、困ったわね……』


「睦月ちゃんにはその時が来たなら、力を貸してもらうけれど、

だけどそれは今じゃない。 

今は片手間でできるようなことだけで十分。

平時の時まで彼女達の大切な人生の一部を奪っちゃ駄目だよ」


『睦月はそういうの、全然気にしていないわたぶん。

むしろそれが当たり前だと思っている』


「知ってる。 だから嫌なの!」


『!…………貴女、なにか、知ってるの?』


「っ! そ、それはっ…………睦月ちゃんが言わないなら

私に言う権利は、無いから……」


『……そう、まあいいわ。

とにかくそういうことだから』


「そ、そういうことって!? だからっ」


『ぷんっ! お母さんに隠し事なんかするから、これは罰よ。

それに今は命令権や決定権は私にあるんだから。

どうしても嫌なら、さっさと代替わりしてちょーだい』


「っ!

…………わかった。 命令なら従います。

じゃあ、これから支度する、から……」


『そ、いい子ね。 聞き分けができる子は大好きよ。

それじゃあよろしくう!』


「…………」


……私が跡を継ぐなんて、一言も言ってないんだけどな……。

だって、私は……


……でも……そっか、よく考えたら、お母さん、彼女も……


チンと、受話器を置くと背後からすぐに声がかかった。


「ひなた様、日影様のいる深山の家に行かれるんですか?」


「うん、貴女も一緒だよ。 ホリィ」


「は、はい! もちろん!

微力ながら、どこまでもお嬢様にお供してお護り……」


「いや、どうやらお母さんは貴女に別の用事をお願いするみたいよ?」


「……え? ええっ!?」


「何するかは聞いてないけどね」


「ひ、ひなた様!? そこ、大事なとこですよ!?

それに、じゃあひなた様は誰がお護りに!?」


「それは睦月ちゃんにお願いするんだって」


「む、睦月様ですか!? 確かに、彼女なら腕は確かです、けど……」


「まあ、そんなの無くても私は自分の身は自分で護れますけどね」


「そ、それは駄目です! 

お嬢様にはハンデがあることをもっと自覚していただかないと!」


「だって私、決定権無いんだもん! 

命令って言われたら拒否せず疑問も抱かずちゃんと実行しないとね。 

だから貴女が何をやるのかはあっちでお母さんに直接聞いてね」


「そ、そんなあ~!」


「……まあ、ただ、お母さんが何の考えもなく

私達二人を呼んだりはしないと思うから

何か考えがあるのか、もしくは野性の勘か……」


「なんなんですかその野性の勘って!?」


「さあねえ……まあ、お母さんのことだから

あんま深くは考えてないんじゃないかな?

でも、偶然にもその勘ってやつが後から凄い的確な行動だった

ってことがよくあるんだよねえ……なんか不思議なことに。

ま、とにかく出立の用意を……へ……へ、へくちっ!」


「……と、とにかくまずは服を着てください」


「はいはーい」


もしかしたらホリィに関係あることなのかもね。

だとしたら今回私は只のオマケかあ……

まあ、いいんだけど。


「……ふふっ」


「ど、どうかされましたか? お嬢様……いきなりお笑いになって?」


「いや、なんでもないよー」


電話だと、普通に会話できるからなんか新鮮だったな……。

これが本来のコミュニケーションなんだよね。 


世間一般では。



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