第2話〜始動II〜
放送室で最初の指示を出してから、自分はもう一度職員室へ戻った。教室の机の上にあった資料ではどう考えても足りないからだ。なにかないかと探してみることにした。せめて全員の1日のスケジュールを決めれる程度には情報が欲しかった。この不思議な世界で生きていくために必要なこと________
「ガラガラガラ」
扉が開く音だ。司令室担当の人かな。目線を横にずらす。人影が視界に入った。なんだ。男か。こういう出会いは女の子としたかったものだ。その男が私の方に向かって歩いてくる。
「あのう、あなたもここに振り分けられたんですか。」
私まであと2、3歩というところで声をかけてきた。初対面としてはこれが妥当な距離感なのだろうか。私は首を縦に振る。
「私は先ほど放送をいれたものです。。階級は少佐で司令官です。」
人の名前を訪ねる時はまず自分から。よく聞く言葉だ。私は自分の名前を名乗り、彼にそれを尋ねた。
「私は田中圭太です。階級は中尉です。ここに配属されました。」
彼と喋っているうちに、何人かがこの部屋に入ってきた。1、2、3、4…8人か。これぐらいの人数なら全員会議室に連れてってもいいだろう。男が4人、女が4人、いいバランスだ。ん?めちゃくちゃ可愛い子がいるな。体もすらっとしていてどちらかというとカッコいいって感じか?喋りかけてみるか・・・・・・まあいいか。勘違いされたら嫌だし。
突然、ガサッと音がした。紙だ。これは私が今まで探していたものではないかと思い、駆け寄ってみる。目に付いた一枚を拾い上げ、上から順番に目を通してみる。
「ビンゴ」
我ながら恥ずかしいくらいの大声が出てしまった。それもそのはず、その紙には1つの校舎の使い方が載っていた。どうも武器庫になっているらしく、その世代に沿った武器が定期的に供給されると書いてある。世代が何かわからなかったので、ガサゴソ探してみると、あった。どうも戦闘の進行にあわせて世代が更新されていき、供給される物が変わっていくらしい。もちろん装備だけでなく、食料、衣類までがその対象らしい。周りの8人が興味深そうにこちらを見ているので話しかけてみる。
「どうも、ここの司令官に任命された者です。会議室にこの書類を持って行きたいので手伝ってくれませんか。」
1人で持っていくのは重いので助けを求めてみた。まあ、初対面だと言っても仲間なら協力してくれるよな。と、そこでさっきの美女とは違った、図太そうな女が何が書いてあるのか聞いてきた。この世界のルールが詳しく書いてあるんだと答えておく。ちなみにその女、名前は棚橋優子というらしい。この女、なかなかコミュ力があるらしく、みんなが手伝ってくれることになった。とてもありがたい。これからは優子と呼ぶことにするよ。もちろん心の中だけだが。
みんなで会議室に向かう。会議室は一階なので1つ階段を降りた。下駄箱と廊下を挟んで向かいの会議室に入る。もうすでにおおかた集まっているようだ。これから私がどう振る舞うかでこの基地の力は大きく変化するだろう。頑張らなくては。司令室メンバーにも着席してもらう。そこで、優子があんた1人じゃ大変でしょとでも言うかのようにマイクの準備を手伝ってくれた。さすが本当にコミュ力あるやつはその辺のとは違うな。優子からマイクをもらい、2回ほど深呼吸。みんなのこわばっている顔を見ながらスイッチを入れた。
「初めまして。ここの司令官です。私達はこの不思議な世界で生き残らなければいけません。そこで、私達はこの世界のより詳しいルールを手に入れました。しかし、これはページ数が多く、回し読みが出来るものではありません。なので、パソコン室に割り当てられた方に学校サーバーに上げていただきたいと思います。パソコン室担当は誰ですか?」
会議室の真ん中あたりで手が上がる。そこで優子が私からマイクを奪い、名前と階級は、と聞いた。なんだ。気がきくんじゃ無くてただでしゃばりたいだけか。まあ嫌いではないが。
「渡瀬幹也、大尉であります。」
敬礼をしながらだった。なかなか様になっていた。よろしいと優子が言うと、渡瀬が座った。優子が部下を連れて後で取りに来るようにと付け足していた。もう一つ重要なことがあるので優子から仕返しも兼ねてマイクを奪ってやった。
「もう一つの議題は、部隊編成についてです。今のところ、150人規模の主力部隊を4隊と50人規模の遊撃部隊を2隊作るつもりでいます。さらに警備隊は60人、戦の生命線を担う補給部隊を150人、工作部隊を50人を考えています。今ここにいるのは、各部隊の隊長、あるいは副隊長クラスの人です。まずは指揮官を決めたいと思います。我々は戦闘経験がないので、適正は測ることができません。ですので、単純ですが立候補という形で決めさせていただきたいと思います。立候補する人は手を挙げて名前を名乗りどこの隊に属したいか言ってください。」
「渡瀬幹也、主力部隊を志願します。」
真っ先に立ったのはさっきの渡瀬大尉だった。しかし私は、パソコン室に配属された人はそのまま事務系の仕事をしてもらうことにしていた。残念ながら渡瀬大尉には降りてもらおう。その事を告げると彼は少し恥ずかしいのか頭をかきながら座った。申し訳ないと思いつつ、周りを見渡すと、今ので和んだのかはじめこわばっていたみんなの表情が緩んでいた。そのおかげもあってか、みんなが自分から名乗り出てすぐに決まった。
「皆さんのご協力があってスムーズに1番重要な議題が決まりました。まだ、世界に変化があってすぐの状態でこれだけ早く進行するのは十分なアドバンテージになっていると思います。では、臨時的な部隊構成を発表します。主力部隊はABCDと仮称し、Aの待機場所は1-1教室から1-4教室までBの待機場所は2-1から2-4教室まで、Cの待機場所は3-1から3-4教室まで、Dの待機場所は3-5,6教室と2-5,6教室、遊撃部隊をEFと仮称し、Eは3-7,8教室、Fは2-7,8教室、警備隊はGと仮称し1-8,9教室補給部隊は、主に輸送のみを担うH隊と警護を担うI隊に分け、それぞれ調理室、被服室と2-7,8に分かれてください。工作部隊はJと仮称し化学実験室と物理実験室に分かれてください。指揮系統は今のところ臨時的に全ての部隊が司令部の下に入っている状況です。これで解散とします。戻ったら、移動をお願いします。それから事務部は早急にルールのアップロードをお願いします。」
やっと終わった。まずは掴みはまあまあと言ったところか。それにしても渡瀬幹也の大尉ってのは事実上の2番手って感じだな。他は高くても中尉だったから。それにしてもこの学校の建物はわからないものも多いから、1度司令部のみんなとまわってみようか。