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『PHANTOM』  作者: 浅宮 真麻
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第1話~恋した相手は男の子!?~

ここはとある高校の校門前。

普段の静かな空気とは異なり、お祭りムードが漂っているのは今日がこの高校の文化祭だからだ。

可愛い子が多いという評判を聞きつけ、文化祭に遊びに来た、大学生の二人組。

花で飾られた校門、屋台の活気や呼び込みの声。

そんな漫画であるような文化祭の光景に興奮する者一名、気遅れする者一名。

これこそがこの話の主人公でである隼人とその悪友である。

悪友の真明はテンションが上がりっぱなしのようで、

「グッドラック♪ 夕方のいい結果を期待しているぞ」

とだけ言って、隼人の

「え!?ちょっ――」

静止も振り切り、さっさと一人で行ってしまった。


こうして一人の残された隼人。

何しろそこの学校に在籍していたわけでもなく、今日が初めて。

元々あまり乗り気でなかった上に、置いていかれてさらにテンションが下がってしまった。

とりあえず門をくぐったのは良いものの、特に行きたい場所もなく。

さらにお得意の方向音痴も炸裂し、

メインイベントが行われる体育館を目指していたが、いつの間にか人気のなさそうな廊下を歩いていた。


(はぁ……)

迷ったことにようやく気づいた隼人は心の中でため息をついた。

周りを見ても文化祭会場とは思えない、空っぽの教室が立ち並ぶ広い殺伐とした廊下。

人の気配もなく誰かに道を聞くこともできない。

(こんなとこにいたら明らかに不審者だよな……)

かといってどこに行けばよいのかも案内図だけでは全然分からない。

第一現在地が地図のどこなのかさえ分かっていないのだ。

分かるほうが不思議である。

(とりあえず、うろうろしてたら人気のあるところに辿りつけるだろうか……)

そうぼんやりしながら歩いていて曲がり角の向こうに人がいることに気づいていなかった……。


ドンッ――バサバサバサ――

曲がり角で隼人は誰かと正面衝突してしまった。

ふと我に返ると、落としたらしい冊子を拾い集めているセーラー服を着た子がいた。

慌てて拾うのを手伝おうとするが、セーラー服の子に、

「前方不注意のこっちが悪かったのに、拾うのを手伝ってもらったら、ますます立場がないです」

とやんわりと断られてしまった。

(こっちも前方不注意には変わりないのに……)

かといってそのまま立ち去ることもできずに立っている隼人だった。


「不注意でぶつかってしまってすみませんっ」

拾い終わった後、再び謝るセーラー服の子。

その高くもなく低くもない中性的声は心地よかった。

「いやこっちもぼんやりしてたから……」

「でも、貴方一般客ですよね……?失礼ですが迷子になられたとか?」

おっとり系の顔立ちなのに何気に鋭い。

隼人は何も言えなかった……。

「ここの校舎結構入り組んでますよね。大丈夫ですよ、私も迷子ですし」

「へ?」

「文芸誌配り歩いてたらいつの間にかこんなとこまで来ちゃったんですよ~」

(もしかして……この子、僕と同類?)

でも流石にそれを聞くのも失礼な気がしてあえて触れなかった。

「よかったら、これも何かの縁ですし、一冊いかがですか?

ぶつかっちゃったお詫びって事で……」

そう言って、邪気のない笑顔を作るセーラー服の子。

普段はあんまり読書をしない隼人だが、この冊子だけは受け取ってしまった。

受け取ったのはやっぱりその子を好きになったからだろう……。

先ほどから心臓が早鐘を打っていたのだから――。


こうして迷子のお供ができてしばらくし、

「ミズキ先輩!!」

息を切らしながらやってきた一人の少年。

「あ……」

「『あ……』じゃないですよ……。先輩が呼んでこいって……部員顎で使ってますよ……」

ため息交じりにに説明する少年としまったと顔に書いてあるミズキちゃん。

「ごめんけど、体育館どっち?」

「僕が案内しますから。てか先輩の指定してた時間ぎりぎりですから走りますよ?」

「……仕方ない。あ、体育館までついてきたほうがいいですよ?」

そういって手招きをしているミズキちゃん。

その可愛さに鼓動もヒートアップ、

久々の全力疾走をする羽目になるのだった。



人の多い体育館。

秋のはずなのに熱気を感じるのは盛り上がっているからだろう。

「隼人ー、首尾はどーよ?」

偶然にも真明と出くわした隼人だった。

「そういうお前は?」

「ん……、こいつ」

そういって視線をずらすと、確かに隣には可愛い女の子がいた。

(……真明ってこういう子好きだったっけ?)

驚くのも無理はない。

普段正明が連れている派手めな女子とは違って清楚系の女の子だったからだ。

隼人が口を開きかけたちょうどそのとき。


「こんにちは。俺ら『PHANTOM』が奏でる歌が観客に伝わるように歌いたいと思います――」

耳に響いたのは高くもなく低くもない中性的な声。

先ほどあったミズキちゃんの声だった。

(顔もミズキちゃんなんだけど……)

その口調、服装ともに男そのものだった――。


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