耐性摂氏六〇〇度　　（四法院の事件簿　外伝）

　谷元英雄は、代議士権田聖の選挙区秘書をしている。
　支持者や支援者への挨拶やお願いなどで、日々選挙区を忙しなく回っていた。
　事務所へ帰ってみると、部下の二條が出迎えてくれ来客だという。
　奥を見ると疲れが顔の夫婦が訪ねて来ていた。
　夫婦が言うには、娘が居なくなったという。何度か警察へ足を運ぶも、捜索願の受理を断られた。その為、政治家の力で受理させて欲しいという事だった。両親と警察署に出向くと、捜索願を受理して頂けることになり、ひとまず役目を終えると人脈を活かして娘さん探しを協力する。
　谷元は支援者宅に向かい話を聞くと、そのお宅の息子さんの異変に気付いた。母親は、うつ病だと言うが、とてもうつの症状には思えない。次のお宅に訪問すると、また娘さんが病気で、今度はアルツハイマー病だという。
　十代の子が、うつ病とアルツハイマー病だと云う事に引っ掛かった。
　その他にも気になる情報が次々と入ってくる。行方不明者を探していたが、選挙区にどうやら奇妙な病が広がっているように思えた。
　谷元は、その病が気になり調査を始める。診察した各医師を訪ねて回り、その中で極めて稀な事であることは医師も認めた。しかし、それは稀で個人としては深刻ではあるが、社会的な問題になることではないと断言した。
　行方不明と奇妙な病気の因果関係とは………。