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その後の話~Happy End~

作者: あいしー

どうも、あいしーです。

ふと思いついた話です。が、一生懸命書いたつもりです!ぜひ読んで、出来ればコメントなどをくださると嬉しいです。

~Happy End~とありますが、そのうちバッドエンドも書こうと思っております。

著作権などの問題が怖かったので、一応二次創作ということになっております。ビビりですみません・・・。

では、どうぞお楽しみください。

「ほう、それで?」

「そうだなぁ、あの時はメロスが来てくれたんだったな」

「ははっ、そんな前の話なんてすっかり忘れちまったよ」


 日が沈んで空には闇が広がり、街は星の見える夜空に染められていた。

 そんな星空の下、高台の上にそびえたつ城の一室にランプの優しい明りが揺れている。

 そこには三人の男が明りを囲むようにあぐらをかいて、話をしている。


 一人は羊飼いのメロス。

 一人は石工を行うセリヌンティウス。

 一人はかつて残虐な愚王であったディオニス。


 彼ら三人は酒を酌み交わしながら、楽しそうに談笑している。


「そなた達の話は本当に愉快だな」

「よしてくれよ王様」

「そうだぜ、メロスの話し方じゃ言葉足らずでわかりにくいだろ」

「いや、そんなこはない。どちらの話も非常に面白く、興味深い」

「そんなそんな、照れちまうなぁ」

「いーや、俺の方がわかりやすくて面白いに決まってる」

 

 ディオニスは彼らの話に耳を傾け、語られる言葉の一つ一つに熱心に聞き入っている。


 かの残虐であった愚王ディオニスは、メロスとセリヌンティウスの硬い友情に心打たれ、改心した。その後は一国の王として、国を治めることに翻弄している。

 しかし王の職務に追われる身。そのストレスや疲労の溜まる速さは並ではなかった。

 そこでそのストレスや疲労を開放すべく、時折メロスとセリヌンティウスの二人を呼び、話をするのだ。

 愉快な、時に心を打つ彼らの言葉は、疲れたディオニスを確実に癒していった。

 

「それにしても、最近は本当にこの国も良くなったな。お前もそう思うだろ?」

「そうだな。街は賑わい、沢山の人に笑顔が溢れている。本当に良くなった」

「それもこれも、みんなディオニス王のおかげだな」

「あぁ、全くだ。あなたには恐れ入るよ、ディオニス王」


 二人は顔を見合わせて王の方を向いた。

 しかし、帰ってきた言葉は二人の予想していたようなものではなかった。


「・・・・いや。私はそんなに良い者ではない」


 酒に酔い、浮かれている二人とは違い、明らかに声の低いトーンで彼はそう言った。


「今、どれだけ私が民のためになるよう尽くしても、・・・・変わることのない真実がある」

「王様・・・」

「私は、国の民を殺したのだ。自分勝手な自己満足で」


 ぽつりぽつりと、王は少しずつ言葉を吐きだす。懺悔のようなその言葉たちは、重く、苦しみを纏って生まれてくる。

 王は堪らず俯いて、部屋にはゆっくりとした静寂が流れた。

 が、それはすぐに破られた。


「それでも俺らはあんたに感謝してるぜ。なぁ、セリヌンティウス?」

「あぁもちろんだ。あなたを責めることも、俺の中であなたが悪者になるわけでもない」


 二人とも、当たり前のようにそう言ってのけたのだ。


「・・・・確かにあんたは何人もの人を死の淵に追いやったかもしれない」


 鋭いメロスの視線が、声が、ディオニス王に突き刺さる。

 罪は消すことができない。もうやってしまったことを今更変えることなどできない、と訴えているように王は見えた。

 無意識に二人の視線から、自分の行った過去から目を逸らそうとする。


「でも、あんたは俺とこいつを殺さなかった。俺を妹のもとへ行かせてくれた」

「そうそう。それに、俺は見たよ。メロスが殺される直前、俺の元へと戻ってきたときにあなたが涙を流したことを」

「あっ、それ俺も見たぜ!」


 楽し気に、二人はそう言った。ディオニス王が行ったことが、愚かではないと否定した。

 それだけではない。メロスは意気揚々と語り始めた。


「今俺の妹はさ、結婚して夫婦二人で一生懸命働いて暮らしてんだ。でさ、前に妹が言ったんだ。王様が政治を頑張ってくれてるから今の暮らしがすごく助かってる、って。んで今、妹の腹の中に子供がいる」

「そうだったのか!?へぇ、ついに子供ができたのか。おめでとう、メロス!」

「サンキューな、また妹にも直接言ってやってくれ。まあそういうワケで、俺ら以外にも感謝してるやつはいるよ」


 優しい瞳が、ディオニス王に向けられる。

 するとセリヌンティウスも負けじと、語り始める。


「俺さ、最近よく見かけるようになったものがあるんだ。街の人たちなんかが、お互いにお互いを助け合ってるんだよ。そんで、そんなことがきっかけで付き合い始めたりするやつがいるわけなんだ。まったくよぉ、羨ましい限りだぜ・・・・!!」

「おい、脱線してるぞ~」

「はっ!ごめんごめん、つい・・・。つまりだ、あなたが今できることを一生懸命やってくれてるおかげで、新しい繋がりができてるってわけだ」

「・・・・?」


 ディオニス王は首を傾げた。

 繋がりとは一体何なのか。

 二人は察したのだろう。言い聞かせるように語りかけた。


「俺の妹の子供みたいに、次の世代への繋がりだとか」

「知らない人たちが運命で繋がるとか」

「・・・・!」


 ディオニス王は目を見張った。

 今までの罪滅ぼしとしか思っていなかった自分の行いが、そんな風に捉えることができるなんて。思ってもいなかったことだ。

 

「そうか、そんな風に思ってもよかったのだな・・」

「そうだぜ、ディオニス王!みんなも、俺らもあんたに感謝してるよ」

「もっと自分のやったことに自信を持ってくれよ」


 二人がディオニス王と肩を組み、背中を叩く。

 自信を持てと、背中と押すように。

 

「ああ。これからも、その繋がりが多く、強くなるように私は頑張ろうではないか」

「おっ。頑張ってくれよ、王様!」


 セリヌンティウスが酒の入ったグラスを頭上に運ぶ。それにメロスとディオニスが合わせるようにそれぞれのグラスを掲げる。


「じゃあ、王様の新たな出発に」

「これからの繋がりに」

「我々の友情に」

『乾杯!!』


 そうして星空の下、また新たに三人の友情が約束されたのだった。

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