見知らぬ部屋から脱出しよう
「今誰か人が来たらまずいじゃない・・・!」
よく考えてみれば、寝起き+知らない部屋+窓が無い+意味不明な魔方陣とくれば、かなりやばいことになりかねない。下手をすれば侵入者扱いといったところだろう。
「とりあえず、服装は式終わってそのまま疲れて眠っちゃったから大丈夫だけど・・・」
梨那は姉が縫ってくれた花嫁衣裳を見下ろす。
「髪型もさっき直したけど・・・」
壁がつるつるなので鏡代わりにして自身をまじまじと見てみる。が、実際さっきから扉の外から慌てたようなたくさんの足音とがしている。時折、「探せ!」とか、「ここにはいません!」とかいう怒声まで混ざっている。この場所に誰か入ってくるのも時間の問題だ。
「これは本気で侵入者扱いされたら面倒だし、逆にこっちから出てった方がいいかもなぁ」
とりあえず、「案ずるより生むが易し」とでも言わんばかりに扉に手をかけてみる。
「って、開かないじゃない!何なのほんと!」
とっさに梨那の頭の中をいくつかの考えがぐるぐると廻る。
1、梨那は閉じ込められている。
2、誰かが梨那を助けるためにここに隠した。
3、探されているのは梨那ではない。
4、無意識のうちに梨那が自分で鍵をかけて鍵を隠すか壊すかした。
・・・etc
「とりあえず、窓も無いこの部屋からはどっちにしろ出なきゃなんないわね。」
小さくため息をついて変な考えを振り払うように軽く頭を振る。方策が決まったのかパッと顔を上げすーっと大きく息を吸い込み・・・
「ちょっと!開けなさいよ!人を何だと思ってるの!?閉じ込めるなんてどういう神経してるのかしら?ばかじゃないのばかじゃないのばかじゃないの!!!」
・・・罵倒した。扉の向こうの相手に向かって。
・・・扉を蹴飛ばしながら。