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~五匹目・覚悟、生きるもの~

―待ってくれッ!
















俺は勢いよく起き上がり周りを見わたした。町からはまだ赤い光が光ってる。

見たところどうやら化け物に襲われてからそう時間も経っていないみたいだ。

そして、お堂の置くには・・・


「お、お目覚めか。隆也」

あれ、涼介でも真田でもない聞いたことがある声が・・・

聞こえた方へ視線を向けるとそこには、無地の和服一枚に素足、二枚目の男が壁にもたれ、腕を組んでいた。


「なんだ?そんな変な顔して~そうか、この格好じゃあわかんないか」

と、言うと男の体が光出し俺の持っていた刀に姿を変えた


「お、お前は!」

俺はびっくりして掛けられた布を跳ね除け、指を指す。動揺した俺を見て男は笑い堪えながら元の男の姿に戻る。


「いや~ごめん、ごめん。隆也がそんなにびっくりするとは思ってなかったものでな フフッ・・・」

「笑いすぎだ!てか、あんた誰だよ!」

「そっか、まだ名乗ってなかったな。オレは銀。他のことは涼介と響子が集まってからだな」


あれ?何かがおかしい気が・・・あ!


「なぁ、銀」

「ん?なんだ隆也」

「なんで俺たちの名前知ってるんだ?」

よくぞ聞いてくれたとばかりに銀は自信満々に答えた。


「記憶共有さ」

「記憶共有?」

なんだそれ、まさか俺の記憶がみれるとかか?


「その通り」

あわてて後ろを振り向くと瞬間移動でもしたかのように銀は俺の背後に体育座りしていた

「うぁッ!」

び、びくりした・・・いつの間に俺の後ろにまわったんだ?


「天井を使ったんだよ」

そうか、天井を蹴って俺の後ろに移動したのかなるほど・・・あれ?おかしい、さっきから俺一言も喋ってないんだが・・・なのに俺の思ってることがわかるんだ?


『テレパシーだよ』



口も開いてないのに、銀の声が俺の頭に流れ込んできた。


「テレパシーってあの?」

『そうだな。但し、オレ以外とはできないが』

いまいち理解できない俺はさらに質問を続ける。


「それじゃあ俺の考えてることが、全部銀に筒抜けってことか?」

『そこは大丈夫だ。強く念じなきゃ問題ないし、だからこうして練習してるんだけどな』

原理はよくわからないが、念じなきゃいいんだだな。


「わかった。これから意識す・・・」

まだ何か忘れてるような・・・あッ!


「銀!涼介と真田は?二人とも無事なのか?!」

俺は思わずに銀の衿元を掴もうとしてしまったが、銀はまるで俺の動きを読んでいたかのように身体を倒し、避けた。

俺は勢い余って壁に激突しそうになったが踏みとどまり、すぐさま俺は振り向き自分の目を疑った。

今、銀の目が一瞬色が変わったような・・・・気のせいか。


「二人とも風花の部屋にいるから、ちょっと顔見せてこいよ。心配してたからな」

またいつの間にか、お堂にある戸を開け、もたれていた。

これは・・・あまりツッコまない方が良さそうだな・・・



「わかった。行って来る」

と、お堂を後にしようとすると銀が

「隆也、これ返しておけよ」

手渡されたものは、見に覚えある布で、あきらかにあの時助けてくれた男の物だった。


「わかったが・・・あの男は何処にいるんだ?」

銀に聞いてみたが・・・


「知らないなぁ~神社から出てないと思うから捜してみな」

銀は頭の後ろに手を組みながら答えた。

まぁ、いいか。あまり期待してなかったがな。


「わかったよ、んじゃあ、また後で」

俺は前を向きながら軽く銀に手を振り、お堂を後にした。

さてと、風花の部屋は・・・俺の記憶ではさっき出た戸から右に曲がって突き当たりだったかな?とりあえず俺はその通りに足を運んだ。


よし、ここだな。



着いた戸には『風花の部屋』と書かれたなんとも可愛らしいネームプレートが掛かっている。

風花も可愛い趣味してたんだな~と、少し思いながら俺は、ゆっくり戸を開けた。



入ってみれば机には小さなぬいぐるみにピンクの花柄カーテン、ベッドにはパジャマを着た真田と、そこに寄りかかって寝ている涼介がいた。

そして一番視線が行ってしまうのが・・・俺の背丈ぐらいある本棚が壁一面にあった。

種類は参考書や文庫本、さらには日常では使わないサバイバル本まである。

せっかくだからどれか適当に読んで見るか、まだ二人とも起きそうにないし。


本棚から本を引き抜こうとするが、本棚にギチギチに入ってるから、なかなか抜けない。

俺は力いっぱい本を抜き出すが、本と一緒に本棚もこっちへ倒れてきた。

避けるにも部屋が狭すぎて避けられない。慌てて俺は本棚を押さえるが本はそうは、行かない。

次々と本が大きな音を立てながら、床へ落ちて行く。

幸い涼介たちには当たらなかったが・・・本棚を立て直していると、二人を起こしてしまった。


「ふぁ~」

「ん・・・」

涼介は軽く伸びをして、真田は体を起こし、目を擦りまだ眠そうだ。起こす気はなかったんだが・・・二人とも俺に気づいたのか同時に。


「た、隆也!」

俺の顔を見て、涼介はほっとしたのか少し笑ってるように見えた。

真田は、ベッドから這い出て俺に飛びついてきた。


―イテッ!



体に激痛が走り、体中がギシギシと軋む・・・

しゃれにならないこの痛み・・・

骨が折れる・・・てか折れてるけどな。



「さ、真田・・・痛いから離してくれないか?」

俺は痛みに耐えながら笑顔で真田に頼むと、真田は飛びついたことに今気づいたように顔を赤らめ俺から少し離れた。


「ご、ごめんなさい!」

真田は必死に頭を下げていた。


「いいんだよ。別に・・・あはは・・・」

こんなに謝ってる真田を責めるわけにもいかないし、このことは水に流すとして・・・


「隆也、これからどうするんだ?」

涼介はこちらへ向きに座りなおし、真田と俺も円陣を組むように座った。


「とりあえずみんなの意見が聞きたい。真田は?」

こういうのは、みんなの意見をきくしかないからな


「私は、おかあさんたち心配だから町に行きたい」

真田は下を向きながら答えた。

確かに親父やかあさんは心配だけど、まだ化け物がいるかもしれないから難しいかも・・・それは保留にして涼介にも意見を聞くか。


「う~ん。涼介はどう思う?」

少し考えた後涼介は、一気に離し始める。


「まず第一に、水と食料の確保。でないと一週間も生き残れないからな。次に、敵の確認。そうしないと町にも出ていけないし、後は― 」

「わ、わかった涼介。一旦落ち着け!」

「あ、ごめん。お前が寝てる間に頑張って考えてたんだ!いいだろ?」

涼介は拳を軽く握り、自信満々に話していた。


「そういう、隆也はどうなのさ?」

真田は自分も意見を言いなさいと言わんばかりに俺に質問してきた。





俺は―






「《立花を助けに行く》だろ?」

目の前には和服に素足の二枚目が俺たちの目の前にいた。俺は興奮のあまり立ち上がる。


「ぎ、銀!いつの間にたんだ?」

「ただ単に、天井をつたってきたんだけど」

銀は得意げに笑い、俺を無視して話をし始めた。


「そうそう、オレからも言いたいことがあるんだ」

そう言うと、銀はベッドの上に座る。


「確かに水分も食糧も必要だ、でもこの神社には保存食やミネラルウォータが備蓄されてるから大丈夫として問題は・・・」

少しの沈黙の後、銀の目つきが深く怖い瞳になった。それはまるで化け物みたいな瞳をして、俺たちを見ながら言葉を吐き棄てた。









―お前ら“死ぬ覚悟”はあるか・・・・・・








俺たちはその言葉に背筋が凍る寒さと、緊張のあまり固唾を飲んだ。



それでも、銀は言葉続ける。


「立花を助けるっていうのはそういうことだ。今の日本はきっとあの化け物みたいな奴らがゴロゴロしてるはずだからな」

 銀はベットに大股にどっしりと座って俺を見下ろす。


「俺はできてる・・・6年前から・・・な」

そう、俺はあの風花が襲われた日からできていた。

誰かを守るためなら俺の命なんでくれてやる!


「隆也はこう言ってるけど二人はどうなんだ?」 

銀は答えを求めるように涼介と真田を睨みつけた。すぐに口を開いたのは涼介だった。


「俺は、できる・・・する。もう失うものはないからな」

少し顔は沈んでいたが瞳は決意の目をしている。

対して真田は下を向いたまま顔を上げることができないみたいだ。


「わ、わたしは・・・まだ・・・ま・・・だ・・・」

真田は涙声でつぶやいていた。

それは、そうかこれが普通の反応だろう。

でも俺はあの時誓ったんだ、どんなにかっこ悪くても守るって自分に誓ったんだ、でも・・・・・


風花は守れなかった。


不甲斐無いよな、だからこそ、二人は命を賭けて守り通す、そして風花も助け出す必ず。


「すまん、オレが意地悪だった、だから泣くなってさ」

いつの間にか銀の威圧感がなくなって真田をなだめていた。


「よし、今日はここまで!また明日、町へ行こうな、な!」

涼介が立ち上がって声を張り上げみんなにそう言った。苦し紛れだったようだけど確かに

外は暗い、それにみんなも事件のことで疲れているのだろう。


 俺もその提案に乗るか。

「そうだな、もう暗いしみんな疲れてるだろうから明日に備えて寝よう!」



時は過ぎ、夜も更ける頃・・・


「ね、眠れねぇ・・・」

俺は、お堂の真ん中で雑魚寝をしていた。くそ、なんで俺だけ布団無しなんだよ・・・


真田は風花のベッド使ってるし、涼介は何所から持ってきた知らない布団で寝てるし・・・銀は刀になって寝てるし・・・それに引き換え俺は何も無しかよ!

まぁ、いいか。

どうせ今日は眠れなそうだから外にでも行ってみるか。

俺は立ち上がり、お堂の戸を開けた。

空は、星がキラキラと輝き月もきれいな満月になっているが、町まだ少し光を放っている。

親父とかあさん生きてるかな~そんなことを思っていたら・・・


「眠れないのか・・・?」

とっさに声のする方をみると、青のパーカーにくすんだ白っぽいシャツ、ズボンはだぼだぼの黒いジーパン。そして、一際目立つ長さの違う二本の刀を束ねて肩に立てかけ、膝を立ててお堂の壁に座りもたれていた。

年もそんなに離れてなさそうだし、敬語はいらないか。


「まぁな」

この人には聞きたいこともあったし丁度いい、少し聞いてみよう。


「なぁ、少し喋らないか?」

でも断れるかも・・・


「ああ、別にいい・・・」

へぇ~なんか一匹狼みたいな人と思ったらそうでもなさそうだな。


俺は彼の横へ腰を下ろし少し喋る事にした。まず第一に聞くことは・・・


「名前なんて言うんだ?」

彼は少し動揺したように肩をビクッと上げ、咳払いをした後に口を開く。


「竜汰・・・」

「それじゃ、これからよろしくな竜汰!」

俺は笑顔で竜汰に手を伸ばした。そしたら竜汰を手を伸ばし、手のひら同士で叩き次は、手の甲同士で叩く最後はがっちりと拍手をした。

竜汰の顔は見えなかったけどなぜか、笑ってるように見えた。


「そういえば竜汰ってなんで見知らぬ俺たちに協力してくれるんだ?」

その答えはすぐに返ってきた。


「それは、お前らが昔の仲間にあまりにも似てるからさ、だからどうしても見捨てられなかったんだ。だた、それだけさ・・・」

「その仲間って今は?」

「死んださ、みんな俺をかばってな・・・」

竜汰は空に見ながらぼやいていた。


「ごめん、悪いことを聞いちゃったな」

「いいさ、もう昔の話だ」

と、言いながら竜汰は立ち上がり町の方へと歩いて行った。


「竜汰、町は危ないぞ!」

俺も立ち上がり竜汰に忠告すると竜汰は天に右腕を上げ。



無言のまま、満月の光と夜の闇の中へ消えていった。


さて、俺もそろそろ寝るか・・・。

あ、布返し忘れた・・・まぁいいか、また明日でも渡せばいいか。

そして俺はお堂へ戻り布を被って眠りについた。

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