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あしたの魔法と夢使い

作者: 水神夏樹

気付けばそこはふわふわのお花畑でした。


はいどうも、ワタクシ佐藤奏≪さとうかなで≫花も恥じらう二十歳の乙女です!

って!そこの人引かないで!!

いや、自分でもこれはどうかと思ったんですよ!?でもね、でもね、いつものようにお風呂入ってベッド入ってちょっと喉乾いて目を開けたら…お花畑だったんですよぉぉぉぉ!!!

パジャマだし!裸足だし!!

ここはどこ!?

思わず頭を抱えたくなりますよね!?叫びたくなりますよね!?

夢かと思ってほっぺた抓ったら痛かったのですよ…

状況を確認したくても人っ子一人居やしねぇって状況ですよ!

「は~…ここどこよぉ…」

思わず本当に頭抱えてしゃがみこんだ時でした。

「ああ!いたいた!」

後ろから人の声!!天の助け!!そう思って振り向いたら…居ました。確かに人…が。パジャマっぽい服着てナイトキャップみたいな帽子かぶったそれはそれは綺麗な顔したオニイサンが。クレヨンで描いたアニメのエンディングに出てきそうな羊みたいな何かに乗っかって。

顔以外完全に不審者です。イケメンのくせに不審者です。


…逃げていいですか?いいですよね。

逃げます!!!

オニイサンに背を向けて全力疾走です。最近運動不足ですが高校までは陸上部でしたよ!短距離ですが。


どのくらい走ったでしょうか。まだ息が上がっていないのでそんなに長距離ではないと思いますが…

「逃がさないよ?」

すぐ近くで声がしました。

目の前に羊っぽい何かに跨ったオニイサンが、笑顔でいらっしゃいました…

「お疲れ様ー」

オニイサンはとても優しそうな笑顔で言ってくれましたが、逆に怖いです。

何だか脱力してその場にしゃがみこんでしまいました。

「いい逃げっぷりだったねー」

「……とりあえずオニイサン誰ですか?」

「僕?僕はレム。こいつはバクのポッポ」

「バク!?おちょくった羊じゃなくて!?」

「あははははー、おちょくった羊って何?」

「もけー」

もけーって鳴き声ですか!?ってか私の知ってるバクはこんなんじゃない…

「僕ね、君にお願いがあるんだけど」

衝撃で固まっているとオニイサン…レムさんが言ってきました。

「何でしょうか?聞いたら家に帰れますか?」

「うん、帰れるよ。放っておいても帰れるけど」

「…はい?」

「ここは夢と現の間とでも言うのかな?とにかくそんなところ」

「夢と現の間…?」

「そうそう。で、僕は夢使い。こいつは夢喰いバク」

そう言いながらレムさんは羊もどきにしか見えないポッポ君を撫でております。

「何だかよく分かりませんが、ここは半分夢でオニイサンは不審者ではないんですね?」

「…うん。そう。不審者だと思ってたんだ…」

何だかちょっとショックを受けているようですが、私にはイケメンの不審者にしか見えませんでしたからね!

「それでお願いって何ですか?」

「あ、それなんだけどね、君の悪夢くれないかな?」

「……………………」

びっくりしました。驚きました。唖然としました。

「どしたの?」

「どうして…」

「ん?君、ここの所ずっと悪夢見てて不眠症状態でしょう?」

そうです。確かにそうなんですけど

「どうして知ってるんですか!?」

「だから、僕は夢使いだって言ったでしょう?」

レムさんはにこにこしながら、さも当然といった感じで答えてくれました。

「悪夢をオニイサンにあげたらどうなるんですか?」

「君は悪夢を見なくなる」

「オニイサンはその悪夢をどうするんですか?」

「悪夢はポッポが食べるよ。夢喰いバクは人の夢を食べて大きくなるんだ。僕ら夢使いはバクが大きくなると力も強くなる」

「餌ですか」

「まあそうだね。ポッポは悪夢ばかり食べるから、君の悪夢が欲しいなって」

「はあ、そう言う事情なら悪夢ですしどうぞ」

「本当!?ありがとう!いやぁ、君の悪夢ってかなり性質悪いタイプみたいだからいい餌になりそうだって思ってたんだ」

最近見てた夢は性質の悪い悪夢だったんですか…

「そうだ!何かお礼しなきゃね」

「いえ、私も眠れるようになりそうなので十分ですよ?」

「無欲だねぇ」

「そんな事はないと思いますが…」

話しているとレムさんとポッポ君が近付いてきました。

レムさんがポッポ君から降りると、ポッポ君が私の指先で口元をむしゃむしゃさせ始めました。

「…えーと?」

「お食事開始だよ」

レムさんのその言葉で私の指先からもやもやした煙の様な物が出てきて、ポッポ君はそれをもっしゃもっしゃと音を立てながら食べ始めました。

…もっしゃもっしゃって鳴るんですね。



暫くそうした後、完全に煙を食べ終わったポッポ君はその場で丸まって毛玉の様になってしまいました。

「あ、寝ちゃった。随分沢山出てきたみたいだから大きくなりそうだよ。ありがとう」

「寝てるんですか。大きくなれるといいですね」

「うん。そうだ、お礼だけど、悪夢を貰ったからいい夢を見れるようにするってのはどう?」

「そんなこと出来るんですか!?」

「出来るよー。夢使いだから」

「凄いんですねぇ」

「そう?で、どうする?」

「はい!お礼頂く様な事は何もしてませんが折角なので夢使いさんの見せるいい夢って見てみたいです!」

わくわくしてきてレムさんにそう言うと、レムさんも嬉しそうに笑ってくれました。その笑顔を見ると、レムさんはやっぱりイケメンさんだなぁって思うんですよ。格好が残念すぎますが。

「じゃあこれで交渉成立だね」

「はい」

するとレムさんがすぐ目の前まできて、そのまま顔がどんどん近付いてきて…唇に柔らかい感触が………

柔らかい、感触…?

え、ええええええええええええ!?

キス!?キスですか!?

「あれ…?君…」

レムさんが何か言っていますがそれどころじゃありません!

私のファーストキスがっ

「ねえ、君…えーと」

混乱している私にレムさんが何か言ってます。

「ねぇ、君、名前なんて言うの?」

「は、はい。佐藤奏です」

って普通に返事しちゃいましたよ。

「奏ちゃんかー」

「あ、の、今のは…?」

「ああ、ごめんごめん、びっくりしたよね。あれで夢を渡したから」

「そうだったんですか」

…仕方ない、ですよね。知らなかったとはいえ、いい夢を貰うって言ったのは私だし、それにこれは夢みたいなもんですしね!イケメンさんとキスした夢だと思いましょう!

「かーなーでーちゃん?」

「はい!」

レムさんが凄く笑顔です…何でしょう…何となく危険な感じがしてしまいます…

「ね、かなでちゃんさ、もしかして処女?」

「は、はいぃ!?」

「やっぱりそうなんだ!ねぇ、僕がかなでちゃんの事食べちゃっていい?」

「え」

「僕たち夢使いの男ってね、何故か女の子の初めてを貰うと一気に力が増すんだ。だから、頂戴?」

にっこり笑顔でこっちににじり寄って来てます。

これは

「無理ですーーーー!!」

叫んでレムさんに背を向けてまた全力疾走です!

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