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クオス・メネケス -銃騎士物語-  作者: 水姫 七瀬
第1章 記憶喪失の少女
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第1章 第5話 運命の引き金(1)

少し遅くなりましたが次話をお贈りいたします。

今回から数話に渡って物語の原点を語るパートに入ります。

少々独自用語なども出てくると思いますがお付き合いお願い致します。



 これは少女とパリッシュと呼ばれるメドクス・ローメ(魔力人形を指す)がアンガースとカルティナに出会う5日前、アルファレドがまだ学問府研究棟に健在だったころの話。



 その日の早朝は研究成果報告会があった。

 学問府研究棟では10日に一度、研究室の代表報告会がある。

 学問府研究棟の研究室は実に研究室の数は階20室、合わせて160室に及ぶ。その中でも極秘研究部門というトップシークレットの研究を行う研究室が集まる8階の代表報告会だ。人数は少ない。議長1名、学問府理事長と秘書官、各研究室代表22名、合わせて24名の中規模な物となっている。


 アルファレドは皇族だが学問府に所属する上では一人の研究者であり研究室の代表だ。特別な理由でもない限りはいつも通りに参加するのが流れであった。


 今回の報告会は特に他の研究室に目立った成果は無く、すんなりとアルファレドの研究室の報告まで推移した。


「では次はアルファレド殿の研究室の成果をお願いします」


「分かりました」


 アルファレドは自らの記録結晶(任意の記録を魔力によって保存し、映写する魔法具(現代のプロジェクターに近い物))を使い、映写板に資料を写した。


「現在、我が研究室で行っているメドクス・ローメ(魔力人形を指す)の研究成果です」


 映像に素体設計図を映す。


「現在、試験的に1体の運用を行っています。素体に使われているのは国内でかなりの力を誇る『金の属性』を持つ精霊です」


 素体の胸中を指す。


「素体には人間に近い構造を持たせて居る為に外見は人と変わりが有りません。胸中には心臓の代わりに魔力核を有して居るのが特徴です」


 設計図の胸部から延びる矢印に示された魔力核の部分を指す。


「この魔力核に精霊を憑依契約させる事によって、精霊に自由に動かすことができる肉体を与える事、それがこの研究の基部です」


「アルファレド殿、良いかな?」


 アルファレドに学問府理事長が手を挙げる。


「この魔力人形。精霊に肉体を与えるというものはどんな利点があるのだね?」


「我々には守護精霊が憑いています。それに物理的影響力を与えるのが利点です。例えば要職に着いている者に護衛として、守護精霊が物理的干渉を行う事が出来れば一般の護衛兵よりも安全が確保できます。彼らは憑依した人を一途に守護することを最優先します」


「能力は折り紙付という事か」


 別の研究室長が唸る。


「兵器として使うという道があると思うのだが、それに関してはどうかね?」


 アルファレドはその言葉を聞いて眉間にしわを寄せた。


「何を言っている?」


「精霊に仮初の肉体を与える事が出来るならそれを兵士として戦場に投入することもできよう?」


「何をバカなことを!?守護精霊に戦争の駒に成れと言うのか!?そもそも守護精霊は各々を守護する存在だ!そのような存在に戦えと命じられるとい言うのか!?」


「そのための研究ではないのか!?」


 会議室が騒然となる中、アルファレドは瞑目して静まるのを待つ。


「静粛に!皆の者、各々思う所があるだろうが今はアルファレド殿の研究報告の真っ只中だという事を忘れるでない!」


 学問府理事長が諌めると皆一様に議論の声を止める。


「アルファレド殿、続けてくれたまえ」


 学問府理事長の指示を受けアルファレドが続ける。


「今の質問にお答えします。兵器としては運用する気は毛頭有りません。先程ブロンソ研究室長がおっしゃったとおり、守護精霊は守護する者。そんな存在に戦争を強要する手段など有りません。飽くまでも要人警護の一環としてのものであり、戦争の駒などには考えておりません」


 毅然と言い放ったアルファレドに一部が合意し、一部が苦虫を噛み潰したような渋い表情を浮かべる。


 確かに、このメドクス・ローメを大量稼働させ、軍部に配属すればかなりの軍事力になる事が想定できる。しかも、精霊は飽くまで物質界の存在ではなく、精霊界の存在だ。メドクス・ローメが損壊しようとも、魔力核が存在する限りは新しい身体を与え続ける事が出来る。それは素体の生産体制を用意する事ができるなら、一般の民から徴兵するよりも効率が良く、補充も効くという事に他ならない。精霊は存在自体が不滅な為に新たに兵士としての養成を必要としない。素体さえできれば金銭的にも時間的にもコストは大幅に削減する事が可能だ。

 デメリットは守護精霊に『殺人を指示させる』という点。守護精霊は自らの存在を『守護する者である』と置いている。精力的な殺人は即ちそれ守護に非ず、と判断して精霊は契約を破棄するだろう。

 そもそも、このメドクス・ローメの研究基部はアルファレドの母、アルトローネ=カルメント=フォン=ラーネイロウ=イシュトラドが提唱した理論を基にしており、理念は飽くまでも『精霊と直に交流する』という物だった。そこには武力運用するという考えは一切ない。


「現在、素体を新たに2つ作成しました。試験運用として皇族の護衛として配備する事にしようと思っています。経過報告は次回以降に致します」


 アルファレドはそう締め括り、席に着く。

 学問府理事長はそれに頷くと次の研究室長に報告を促す


「次の報告者は――」



 アルファレドは考えた。

 確かにメドクス・ローメには一般の人間とは違い、魔力で動作する気候の影響で、憑依契約を行った精霊の魔力の強さによって人間以上の性能を持つ事が出来る。その様な側面がある以上、軍事力として期待する者は出てくると想定はしていたが、些か露骨過ぎて気に食わない。それに、これは母から受け継いだ研究でもある。そんな研究を戦争の道具として使われたくない。常々アルファレドが思って居た事だ。


 つらつらとその様な事に考えを巡らせていると報告会はすんなりと終ってしまった。


「では次回は10日後、また同じ時間に報告会を行う」


との学問府理事長の一声で報告会は幕を閉じた。


 アルファレドは煮え切らない気分でさっさと会議室を出る。

 自分の研究室に戻って先程の報告会での出来事を綺麗さっぱりと忘れたかったからである。

 今のアルファレドの胸中には研究に戻る事、ただそれだけしか無かった。

 嫌な思いは研究によって発散する。アルファレドは典型的な学者肌の男だった。







                    ――> To Be Continued.

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。


今晩は少しスーパーで食材を買い込んでおでんを作りたいと思います。

みなさんも寒さに負けないような温かいごはんを食べましょう。

それでは今晩は失礼します。

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