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クオス・メネケス -銃騎士物語-  作者: 水姫 七瀬
第3章 動き出す邪な影
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第3章 第6話 雪上での戦い

お久しぶりです。

先週はオフ会とかの準備とか諸々あって更新ができませんでした。

なんというかペースを戻そうとしてましたが、中々難しいですね。

そんな訳で新しいお話をお送り致します。



 始めは物珍しいのもあって、アリシアはきょろきょろと忙しなく外を見ていた。

 1日目が過ぎ、馬車の中で1晩を過ごし、2日目になって夕方に街宿に入る。

 2人部屋を3部屋取り、休憩を取る。

 存外、バレックは寂れた町村で、寒季になれば見る物も無ければ楽しむ物も無い。

 せめて暖季や乾季ならば中継村落として行商が露店を出している時もあるのだが、今は見る影もないどころか雪が積もっている。

 必然的に宿泊中は宿から出る事が無い為に、アリシアのストレスはかさむばかりで捌ける事が無い。

 3日目、朝から馬車の移動で外に出ることも無いからと、アリシアはうんざり顔で外をぼんやりと眺めたり、最後には暇に疲れるという 本末転倒な事態になってカルティナにもたれ掛かる様に眠ってしまった。


「まったく……手間が掛かって仕方ないわ」


 カルティナが、苦笑しながらアリシアの毛布を掛け直す。


「と言いつつも、奥様はお嬢様の事を(いた)く気に入ってらっしゃますよね」


 シーリアが可笑しそうにくすくすと笑う。


「本当、あの研究家だったティナがこうも母親の顔をするとはね」


 ベルティも相槌を打っては笑う。


「そうね……。こんなに子供が可愛いと思えるのなら、もっと早くに子供を作っておくべきだったわ」


「ぶふぁっ!?」


 何とも言えない微妙な息を吐き出すアンガース、女性陣のど真ん中で槍で突き上げられて目を白黒させはじめる。


「お前らなあ! もっと慎み深くしろよ!」


「そんな事言っても……どうせならちょっと頑張ってみる?」


 アンガースの歳を見せない初心(うぶ)さ加減を面白がってカルティナが挑発する。


「だから慎みを――」


――ジリリリリ……


 その時、車内にけたたましくベルが鳴り響く。


「ふにゃ!?」


 驚き跳ね起きつつも、寝ぼけ眼で何が起きたか分からず周りを覗うアリシア。


「大丈夫よ? シア」


 カルティナが抱き寄せて背中を抱き締める。


 アンガースは表情を引き締めて、車内の壁にある魔法具に触る。


「Do-Shullet Arta-Myuz La Weydull.」


 魔法具の起動詠唱を唱えると、魔法具から風を切る音が漏れ聞こえる。

 聴音具(ちょうおんぐ)と呼ばれるそれは、対となる珠同士で集音してそれぞれ届ける効果がある。今は外と繋がっている。


「どうした? コトル、ロー」


 アンガースが聴音具に呼び掛けると、直にコトルニクス声が届く。


『旦那様、シープの群れです。風で探りを入れたんですが……10頭前後の群れですね』


「それは……まあ不運だと思って諦めるか。俺達も出るから止めろ」


『了解です』


 アンガースが聴音具から手を離すと、外部の音が途切れる。


「どうも、一戦ありそうだ。」


 側に立て掛けていた剣帯を身に付けながら声を掛けると、カルティナ、ベルティ、パリッシュも頷いて各々武器を取る。


「あ……え……?」


 周りの慌ただしさに戸惑うアリシア。が、すぐにそれが意味する所を理解する。


「お父様!」


 アリシアが中腰のまま待機するアンガースに声を掛ける。


「なんだ? シア。応援かな?」


「私も出ます」


 一瞬で、アンガースとカルティナの顔が曇る。


「何を言ってる? 実戦だぞ?」


「判っています。数が多いのでしょう? ですから出ると言ってるのです。私だって戦えます!」


 口を開き、何かを思惑して頭を抱えるアンガース。


「お願いします」


 アリシアの態度からして早々、引き下がるとは思えない、が説得する暇もない。


「私が護ります。それで宜しいですか?」


 パリッシュがアンガースの胸中を察して提案する。


「頼めるか?」


「はい」


 はっきりと頷くカルティナを見遣り、アリシアの両肩を掴むアンガース、表情に憂慮(ゆうりょ)が浮かぶ。


「良いかシア。絶対に無理をするな! 少しの油断が命を失う原因となる。胆に銘じろ」


「は……はい」


 アンガースの余りにも鬼気迫る表情に気後れしたアリシアは、小さく同意するに留まった。


 徐々に窓を打つ風の音も少なくなり、馬車の移動速度が落ちて来たのが判る。


「シーリア、絶対に馬車を出るんじゃないぞ!」


「はい!」


「出る!」


 アンガースが一気に馬車の扉を開けて飛び出す。


 それに続き、ベルティ、カルティナ、パリッシュ、アリシアの順に飛び出した。



      *      *      *



 外は日が暮れて数刻経っているからか、かなり冷え込んでいる。

 アリシアは、外に出るときつく防寒着の襟元を絞った。吹き荒れる風が雪を舞い上げて渦巻いている。


「旦那! 7から9で――Ann-Redlieta.」


「ギャウッ」


 渦巻く風の壁を裂いて、狼――シープウルフが一匹馬に向かって飛び掛かって来たのを、コトルニクスが精霊魔法『風弾(ふうだん)』で打ち落としたのだった。


「ローと俺で馬は守ります! 旦那方は掃討を頼んます」


「コトル! 右!」


「Ann-Redlieta.」


 ローグリフの声に反応して、右に振り向き様にコトルニクスが一発放つと、一匹が吹っ飛ぶ。

 大型野獣のシープウルフには効き目は薄いが牽制にはなる。

 その間に各々、体制を整える。


「Eis-Soutra,Farisetto-Fajell.」


「Eis-Soutra,Fallaratto-Fajell.」


 カルティナとパリッシュが魔術を詠唱する。それぞれ、『火の衣』と『風の衣』冷気を防ぎ、風を味方につけるのは寒冷地での戦闘の常套手段。


「つぇいっ!」


 ベルティが視界に捉えた飛び掛かるスープウルフの顎に右足で強烈な蹴りを放つ。

 ゴキリという生々しい顎の骨が砕ける音がした次の数瞬、手刀が狼の首に叩き込まれた。


「ひぅっ……」


 崩れ落ちた大きな狼の姿にアリシアが一歩後ずさる。


「怯えてはダメ!」


 鋭いカルティナの言葉が飛んで来ると共に、パリッシュが槍で眼前の狼に止めを刺す。


「う……」


 命を奪う行為と言うものを目の当たりにして、アリシアの表情が曇る。


「良い? これが外界で生きるという事よ? 迷ったら……死ぬわよ!」


 カルティナが会話途中で杖を横薙ぎに振ると、狼の横腹に命中してすっ飛ばす。


「それじゃ、重いの……行きますかね」


 地面を蹴り上げて、土を掘り起こしたベルティが『土』属性の聖印(せいいん)を切る。


「Ei Juss Farlling-Todow.」


 大きく、手甲を纏った腕を振るう。


「Ann-Centlenum gundatto-Bligg. Ann-Centlenum Gundatto-Bligg Toy Wanjuss-Shut-Ronjuss.」


 ざりざりと音を立てて、抉った凍土を手足に纏う。


「それじゃあ、暴れさせてもらうよ!」


 狼に腕を振るったベルティの動作に連動して、纏った凍土がしなやかに、鞭の様に叩き付けられる。

 どしゃり、と土が当たる音がするとともに。土の先が棘状に変化して刺さっていた。


「ほら! 一匹だ!」


 倒れ伏した狼が痙攣しては血を流し、雪原を赤く染める。


「よっし! 馬車で身体がなまってたんだ! 派手に暴れるよ!」


 飛び出すベルティにカルティナが追従する。

 遊撃手に回って掃討を手早く済ませようという事だろう。既にアンガースも独自に遊撃に回っている。


「シア! パリーから離れたら駄目よ!? 無理もしてはいけませんからね!」


 頷く暇もなく、カルティナの姿が消した風の壁の向こう側から、黒い影が飛び出してくる。


「ふっ!」


 飛び出してきた黒い影を、パリッシュが下段から槍で掬い上げる。

 頭を狙ったのだが、相手が本能的に避けたのだろうか。肩口を切り裂くだけに止まり、若干勢いが落ちた上体で飛び交ってくる。


「Do-Sharfa FallarattoGalletto.」


 震える声で詠唱を終えたアリシアの杖から『風弾(ふうだん)』が飛ぶ。魔術として使ったものであるからか、若干威力が下がる。

 しかし、正面からぶつかった狼の出ばなを挫く事ができた。

 パリッシュは衝撃で中空に投げ出された狼の胴を石突で叩き落とし、返す刃で止めを刺す。


「や……やったぁ!」


 初めての実戦での、初めての魔術の活用でアリシアに高揚感が生まれて浮足立つ。


「アリシア!」


「えっ――」


 止めを刺した獲物から槍を引き抜き、素早くアリシアの左側面に槍を素早く突き入れる。

 ――どしゅっ。

 何かに突き刺さる音がして、そちらにアリシアの視線が流れる。


「ひっ……」


 小さく呻いて、アリシアが尻餅を付く。

 目の前には……今直にでも喰らい付かんとばかりに(あぎと)を開いた狼の顔があった。


「あ……ああ……」


 アリシアの顔が恐怖に引き攣っていた。


「戦場での気の緩みは死に直結すると言われたでしょう?」


 弱くも叱咤するパリッシュの言葉を胸に刻みつけて、アリシアがゆっくりと立ち上がる。


「ごめん……なさいっ」


 目尻に涙を浮かべながらも気丈に前を向くアリシア。


「まだまだ来ますよ?」


 その後周囲を警戒し続けるも、襲い掛かってくる影も無く、静かになった。


「良し、終わった! シープも他には居ないみたいだ!」


 コトルニクスの声で戦闘は無事に終了した様だと各々判断する。


「大丈夫だった? シア」


 狼討伐が終わった後、半ば呆然としているアリシアに駆け寄って、カルティナが顔を覗き込んだ。


「あぅ……ぐっ……ふぅぅっぐすっ……」


 声を押し殺しながらアリシアが涙を流し始めた。

 アリシアがこの討伐で得た物は、満足感や充足感では無く、父の忠告に耳を傾けず、一時の成功に足を取られただけの、不甲斐無さと死への恐怖であった。

 声を押し殺して、涙を流し続けるアリシアを、カルティナは胸を貸して抱き締め続けたのだった。





                    ――> To Be Continued.

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



という訳で、戦闘はサクッと終った訳です。

次回、ヴィリシュタールに到着の上に、各々の行動がまた始まる事でしょう。

一応、できる限り早く更新したいと思ってはいます。

まだまだ本調子ではありませんがよろしくお願い致します(ぺっこり

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