第3章 第4話 親愛なる人の為に
お疲れ様です。
ちょっとリアルでお仕事が回って来まして、わたわたしてました。
仕事をするに当たっての資料の整理とか色々時間がかかって気付いたら間が結構空いていたり……。
すみません単なる言い訳ですよね?申し訳ないです。
そんな訳で新しいお話をお送り致します。
暫く場を支配した静寂を切って、ベルティは口を開いた。
「なにをバカなことを……」
半笑でカルティナを見ると、その顔は至極真面目で嘘をついているようには見えない。
アンガースを見ると、先程までバカな程陽気であおっていた酒杯を止めて面白く無さそうにそれを見つめている。
「なあ、変な冗談は止めてくれよ?」
直も2人は気まずそうに黙る。
「だってさー、有り得ないだろ?アリシアがアルフ様だなんて……。アリシアがティナの実の娘だって言うよりも有り得ないじゃないか!」
急に立ち上がってベルティはカルティナの肩に掴みかかった。がしかし、抵抗もせずにそれを受け入れたカルティナの表情は痛みに顔を顰めてはいるが、変わりはない。
「本当なのか?本当にアリシアがアルフ様なのか?」
「ええ……」
歯切れ悪くカルティナが言う。
ベルティは直も信じられないと言った表情でどっさりと椅子に腰かけると、酒杯を片手で持ち上げて口を付けて中が空だった事に気付く。
「おいおい、慌てるなよ?ほら」
ベルティの動揺を読んで苦笑しながらアンガースが酒杯に酒を注いだ。
「ああ、ごめん……ありがと……」
上の空といった調子のベルティにアンガースは心配そうに見遣った。
アリシアが酒を飲むのを窘めるのに忙しかったベルティの酒杯。余り濡れていなかったそれになみなみと注がれた酒を、ベルティは一気にあおった。
「んふ……ぐっごほっ」
勢い良くあおった所為か、軽く咽て涙を浮かべた。その苦しみは少なくとも夢では無いと語る。それでも素面ではとても受け入れがたい事実なだけにもう一杯一気に注いではあおる。
「程々にしておきなさいよ?」
カルティナのその言葉は冷たく、まるで現実に引き戻す為の剣で、それが喉元に充てられているような錯覚をベルティは覚える。
「本当の事……なんだな……」
3杯目をあおってベルティの表情が曇る。と、そこにやっとパリッシュが戻ってくる。
今はどんな状態なのかと視線で問うパリッシュに、カルティナは首を振った。
少し、考えるように黙ったベルティは顔を上げて3人を見遣る。
「どうしてこんな事になったのか……あたいには説明してくれる。そういう事で良いんだよな?」
「ええ……。それを話した上で頼みたい事が有るの」
カルティナが済まなそうに目を伏せた上で返答をする。
「……良いよ。話してくれ」
意を決したベルティはカルティナに話を促した。
カルティナは食卓の椅子を2つ引き出してベルティの対面に置き、パリッシュと一緒に座って事の顛末を話し始めた。
* * *
事の発端である、メドクス・ローメの研究について、そしてパリッシュがそれである事。アルファレドであるアリシアの身体に起こった事。元凶はキルトニッシュ=クルトラルフ=フォン=ファルディア=イシュトラドである事。
今現在の状況について、『アルファレドの後継者を探せ』という皇家からの勅命が魔術師教会に通達が来ている事。
そして昨日、マルケット=クルトラルフ=フォン=ガノディア=イシュトラドの掲剣披露会の招待状が届き、そこにアリシアが名指しで指名されて居た事。
カルティナとパリッシュが話し終るまで四半刻(30分)程度掛かった。
* * *
カルティナが全てを語り終わった時、ベルティは押し黙っていた。
ベルティは1つ溜息を吐いて天井を仰ぎ見た。
「あの子が……あのアルフ様なのか……」
そう呟いた直後に「ふっ」っと笑った。
「なんなんだよ。あんな格好良い色男があんな可愛い女の子になっちまいやがって……。そりゃーちょっとズボラな所があって?研究熱心過ぎて皇族にしては社交性無いなとは思ってはいたけどさ……。これって最低最悪の失恋なんじゃない?ああもう、訳分かんないわ」
ベルティは酒樽から新しく酒杯に注いで一気にあおった。
「でも……なんだろうね……。死んでいないって知っただけで、なんだか救われた気がする」
ベルティはカルティナに向いて頭を下げた。
「話してくれてありがとう」
「いいえ、もっと早く話してあげたかった位だわ」
カルティナが目を伏せる。
「そんな事無い。事情が事情だしね」
そう言ってパリッシュに向き直る。
「パリッシュ、あんたもありがとう。あの人を守って、救ってくれて」
その言葉にパリッシュは一瞬目を見開いた後、苦笑して返答する。
「いえ、当然の事です。我が主を守るは我が使命ですので」
ゆっくりとそう口にした。
「んで?話をした上での頼み事ってのはなんなのかしら?」
その言葉にアンガースが返答を返す。
「俺達と一緒にヴィリシュタールの皇宮まで行って欲しい」
「まあ、そうなるか……」
話の流れからしてそうなるだろうと見越していたベルティは素直に話を整理した。
「護衛って事で良いのかな?ただ話を聞く限りでは相手は第三皇子だろう?こっちに歩が悪く無いかい?」
「ヴィリシュタールには俺の伯父貴殿がいるからな。そこに掛け合ってみるつもりだ。それと、ファルトラ=フォルライツ殿にも掛け合うつもりだ」
「第3爵殿ね……」
ベルティにとってフォルライツ家にはあまり良い思い入れが無い、と言うのも、アルファレドの許婚で第一妃候補筆頭がフォルライツ家の長女だ。少しの対抗心が芽生える、もすぐに収まる。現状を考えるとそれも詮無い事だ。
フォルライツ家は軍部の名門で優秀な軍人を輩出する名門だ。それ故に軍の内部に広く食い込んでいる。味方に付ければこれほど頼もしいと思える人物は他には居ないだろう。
因みに、当の第3爵たるジャンベル=ナイフェルト=ファルトラ=フォルライツは、アルファレドの武術指南役でアンガースが軍部に所属していたころの上官だった過去がある。アンガースとは個人的な親交も深い分、力となってくれるだろうという目算もしている。
「まあ、第2騎士団の団長を引退間近なあの人にはちょっと荷が重い問題ではあるんだろうがな……」
アンガースが苦笑して要らない事を付け足した。
ベルティはそこまでを聞いて一回目を閉じた。その後、頭の中で情報を整理した後に結論を口にする。
「あたいも行くよ」
「ありがとう、ベル」
ベルティの返答にカルティナが礼を述べる。
「これも惚れた弱み、と言うべきかな?確かに今のあの子を見てもアルフ様に結びつかないけど……今じゃあ、アリシアはあたいの妹分みたいなもんだしなぁ……守ってやらない道理はないだろう?それに――」
そこで一旦切ってベルティの目は鋭くなる。
「――昼間に貰ったドレスはそういう意味だったんだろう?」
それを聞いてカルティナがバツの悪い笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、そうね」
「じゃあ、断る理由はないな」
ベルティは酒樽を片手に持ってそれぞれの酒杯に注いで回る。
「今からあたしも仲間だ。前倒しの景気上げとして一杯グイっと行こうじゃないか」
全員に配り終わって酒杯を構える全員を見て、そこでベルティがふとした疑問を口にした。
「そういやパリッシュ。あんた酒とか飲めるの?」
その疑問にパリッシュはぎこちない笑みを浮かべる。
「大量でなければ問題ありません」
「それじゃあ良いな。それじゃあみんな行くよ?って乾杯の音頭は誰がとるんだ?」
「私がとるわ」
カルティナが笑って手を上げる。
「それじゃあ、改めて。我らが姫の精霊の加護を祈願して……乾杯!」
「乾杯!」
全員が口を揃えて合いの手を上げ、一斉に酒杯の酒を飲み乾した。
この後、10日後に当たる『日の月』の20日早朝。使用人を含めてアリシア達7人は首都ヴィリシュタールへ向けて3日間の馬車の旅を行う事になったのであった。
――> To Be Continued.
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
という訳で首都への移動前のお話は終了です。
次回から3話か4話程が首都への移動のお話になります。
街の外はやはりファンタジーなので少しの戦闘が挟まります。
因みにこの世界、獣と魔物は別の概念として扱われています。
その辺の説明はまた馬車の旅の途中で語られますので参考までにどうぞ。
今月はちょっとお仕事が忙しくなるので更新頻度は落ちそうな予感。
申し訳ないですがそんな感じでお願いします(ぺっこり




