表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クオス・メネケス -銃騎士物語-  作者: 水姫 七瀬
第3章 動き出す邪な影
34/44

第3章 第1話 皇宮への招待状

お久しぶりです。

プロットチェックとその他諸々で1ヶ月程休載しておりました。

皆様いかがお過ごしでしょうか?

今回から第3章が始まります。

皆さま宜しくお願い致します。



 新年を迎えて最初の週、『迎年の旬』の終わり、『日の月(アメル)』の9日。

 因みに、『迎年の旬』とは年末の『金の月』の第3週の頭から、『日の月(アメル)』の第1週の末尾までを示す期間で、新年を迎え入れるために親族一同が集まり一緒に過ごす期間のことを指す。

 故に、今のフォレスタ邸にはアンガースとカルティナ、アリシアとパリッシュの4人と早めに戻ってきた警護兵くらいのもので、使用人は大体暇を出されて里帰りをしている。戻ってくるのは翌日の10日だろう。

 フォレスタ邸の庭にある修練場。その一角に設えた丸食卓を囲んでアリシアとカルティナが向かい合って休息を取っていた。

 庭先には少し雪が積もっていて、風は寒いがアリシアが魔術の修練を始めて少し経った頃に簡易的な壁を立てて、若干寒さに強くはなっている。

 暖を取る為に魔具の篝火を点けて置けばかなりましになるが、外気が流れ込むのを考えると気休め程度にしかならない。

 アリシアは上に分厚いジャケット、下は膝丈のパンツにレギンスという格好。

 対してカルティナはいつものローブ姿。

 いつもと違う所はアリシアが『雷』の属性色を右目に宿している所だろうか。

 『日の月(アメル)』の第1休日以降、アリシアは修練場でアンガースの下で『雷』の属性を利用した精霊術と体術を学んでいた。

 これは、一重にフォレスタ邸に居る人が少なくなった為に、アリシアの属性が『金』だけであると偽装する必要が無くなる期間がこの時しか無いからである。

 今は事後としてアリシアとカルティナは休憩。アンガースは今度は剣術を、と模擬剣を取りに行っている。


「もう随分と精霊術には慣れましたか?」


「え~……と、どうなんでしょう? ボク自体精霊術を使い始めたのは3日前ですし、精霊を身近に感じるという感覚にはまだ慣れていません。もう少しで何かを掴めそうなんですけどね……」


 考え込むアリシアにカルティナは苦笑をする。


(無理も無いわ。普段は精霊とのつながりを遮断しているんですものね……)


「アリシア、今日から夜は耳飾りを外しなさい。より多く、触れる事によって精霊と交信が深まります。……ですが、これまで以上にその眼の色を見られないように注意しなさいね」


「わかりました」


 素直にアリシアが頷いたところで、パリッシュが戻ってきた。


「ティナ、この様なものが届きました」


 パリッシュが差し出したのは、フォレスタ一家宛てに出された豪奢な赤地に白地の紙を重ねた封筒だった。


「これは?」


「コトルさんが受け取ったそうです。持ってきたのは豪華な馬車に乗った使用人であった。と聞きました」


 カルティナが封筒を受け取り、裏を見て目を見開き、少し押し黙ってから呟く。

 皇家の紋章をあしらった蝋印で封をされた封筒。

 パリッシュが手際良くナイフを取り出してカルティナに手渡した。

 丁寧に蝋封を切って中身を取り出して中の書状に目を走らせる。

 暫くしてぽつり、とカルティナが言葉を漏らす。


「今年は行かなければならないのかしら……」


 招待状を読み終えたカルティナが盛大に溜息を吐いた。

 差出人名義はマルケット=クルトラルフ=フォン=ガノディア=イシュトラド、アルファレドの実弟でカルティナの従弟、という扱いになる彼の掲剣披露会の招待状だった。

 今年で12歳の彼は皇族ともあって掲剣の儀を合わせて執り行うとの事。開催日付は『日の月(アメル)』の23日、約半月後と日数的には余裕は有るが、カルティナにとって精神的に余裕を持つ事が出来ない物であった。


「お母様どうかしたのですか?」


 向かい合った椅子に座ってアリシアが茶器を右手に訝しげに訊ねる。

 彼女から見てもそれ位険しい表情を取っていたのだろうとカルティナは慌てて、

「ああ……まあ、招待状が届いたのよ」

と、取り繕う。

 手に持った封筒を振りながら顔を曇らせるのには何か理由があるのか?とアリシアは勘繰るも、原因が分からずであった。


 「因みにどなたからですか?」


 「私の従弟でね……マルケット=クルトラルフ=フォン=ガノディア=イシュトラドという人からのよ」


 ガノディアという言葉を聞いた時点で、アリシアが目を見開く。


「『4番目の皇族男子(ガノディア)』と言う事は皇子様じゃないですか……。そんな方が従弟だなんて凄いですね……」


 感嘆の声を上げるアリシアを見てカルティナは溜息を吐いた。

 マルケットはアリシアの実弟なのだと言えたらどんなに楽だろうか、と内心で頭を抱える。もし、『アルファレド』としてなら懐かしく感じる一面なのだろうが、今のアリシアは記憶を一切保持していない為に事実を言ってしまうには時期尚早と言うもの。しかも下手に情報を与えても、掲慈を迎えたとはいえ精神的にはまだまだ少女である彼女には情報の整理はできないだろう。下手に公の場でそれを口にすれば大事になる。


「でもどうしてそんな方の招待状に溜息を吐くのですか?光栄に思えてこそあれ、邪険にすることなんてないと思いますけど?」


「ええ、そうね。普段だったらそうかもしれない……けれど……」


 カルティナが指し示した招待状の一文には、『ご息女たるアリシア様も御越しになるのを楽しみにお待ちしております。』と書かれていた。


「これはボクも招待されているのですか?」


 不思議そうにアリシアが呟いた。

 イシュトラドは意外と身分に厳しい国だ。カルティナ自身は故第2皇妃の姪という立場と第4皇子の従姉という立場ゆえのものなのだろうが、あろうことかカルティナの娘であるアリシアを名指しで招待することは異例中の異例だろう。そうなるとカルティナも警戒せざるを得なくなる。

 ただでさえ、皇宮は第3皇子であるキルトニッシュという警戒対象がいる。そんな所へアリシアを連れて行けるかというと、カルティナは素直に首を横に振りたくなる。

 だいたい、時節がおかしいのだ。アリシアがフォレスタ家と『家族の契り』を交えてから一月も経っていない。歳末もあって役所の上層までの情報は滞って居るはず、なのに情報伝達の速度が余りにも早すぎるのだ。

 やはり、どう考えても罠にしか思えない……のだが、掲剣披露会の日付は本物で、断るに断り切れない。むしろ、参加しないほうが不自然に映る事も十分あり得る。

 どの道を選択しても手詰まりを思わせる。

 カルティナの眉間に皺が寄り表情が険しくなる。


「お母様……?」


 不安そうに見上げるアリシアに気づきカルティナは顔を一つ振って笑顔に戻った。


「心配させてごめんなさいね。なんでもないから……」


 口直しに一口紅茶をすすろうとして茶器を上げたところで、

「ティナ、茶器を下してください」

とパリッシュが声を掛けた。


「え?」


 不思議に思ってカルティナが茶器に視線を向けると、茶器には滴の一つさえついていなかった。存外自分が珍しくも激しく動揺をしている事に改めて気付かされる事になり、そんな自分に苦く顔を曇らせる。

 茶器に新しい紅茶を注がれると一口味わってカルティナは考える。


(これは私達だけでは解決できそうにないわね……。いくつか手札を用意しないと――)


 カルティナはアリシアをまっすぐに見据えて、


(――この子を守り切ることはできないかもしれない……)


 表面では平静を保ち、内側では熱く、カルティナは心の奥底で決心した。

 そこにアンガースが模擬剣を2本と大きな麻の袋を1つ持って戻って来た。


「ただいま」


「お父様お帰りなさい。遅かったですね」


 アリシアが笑顔でアンガースを迎えた。


「すまないね。模擬剣とは言え、体に当たると怪我をするからな。シアに皮鎧を持って来たのだよ」


 そう言って近くの机に麻袋から皮鎧らしき物を取り出して並べた。


「多分サイズは大きめで動き辛いかも知れないが、怪我をするよりはましだ」


 そう言ってアリシアを手招きした。


 アリシアもその点では異論無く、

「わかりました……」

と頷いたのだが、

「けどなんだか臭~い……」

皮鎧の一部を手にとっては顔をしかめた。


「まあ、俺が昔使っていた物で長年使っていなかったし多少はこうなるよな……。今回は我慢して着てくれ。今度、お前の分も買ってやるから」


「は~い……」


 渋々、皮鎧をパリッシュに手伝って貰いながら着るアリシア。それを見守るアンガースにカルティナが手招きをした。その表情はかなり硬いことからアンガースも何かあると顔を引き締める。


「どうした?」


「これを……」


 カルティナが書状をアンガースに手渡した。手元の書状にサッと目を通すとアンガースの顔色も微妙に変わる。微妙にという所は流石に強面の武人と言った所か、感情の自制が利いている証拠だ。


「後で話があるわ」


 カルティナはそれだけ言うと再び丸食卓の椅子に腰かけた。


「判った」


 答えを返したアンガースは普段の自分を立て直してアリシアを見る。

 丁度鎧を身に付け終わった状態で軽くショートソードを腰に下げる所だった。


「今から『雷』の属性を使った戦い方を少し教えてやろう」


「はい」


 アリシアも気を引き締めてアンガースに向かいあった。


「良い返事だ。それでは抜剣!」


 アリシアがショートソードを抜いて構えるとアンガースがマインゴーシュを両手に一本ずつ持って構えた。


「むしろ戦い方よりも自衛の仕方を教えた方が良いのかしら……」


 対峙するアリシアとアンガースを見てカルティナは目を細めたのだった。





                    ――> To Be Continued.

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



今回からは少しきな臭さを出しながら数話推移して行きます。

それはけっして望まれる方向では無く、と言った所ですね。

ここから2話を使って首都へ移動する準備を進めて、そこから首都に移動する話に持って行く予定です。

長らくお待たせしましたが、皆さま頑張って更新していくつもりなのでよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ