間章 とある国立大図書館の一角、その2(第2章粗筋)
前回と同じで変則的な粗筋です。
読むのも良し、読まぬも良しな話です。
間章は基本的に本編とは関係ありません。
ここは学術国家ヒストリアの首都であるバスクの国立大図書館の一角である。
一部の書籍以外民間にも広く書籍を公開しているこの図書館。周辺国家で一番の蔵書数を誇る為、平日休日問わず人の入りが多いのが特徴である。
そんな中、熱心に一冊の本を読む青年が一人。リャーバン(5つの弦を持つリュート属の弦楽器を指す)を脇に立て掛けている分目立っている。
銀髪銀目の生粋の純月属性の少し切れ長の瞳を持つ美形の部類に入る風貌をした青年だった。
それ故に、読書をする姿に華を見て遠巻きに女性が視線を注いでいる。が、本人は本に熱中して居る為に気付いては居ない。
そんな視線の最中に少女が鼻歌交じりに歩いて来た。
青年と同じ銀髪銀目の生粋の純月属性の少し丸みを帯びた瞳を持つ美形の部類に入る容貌をした少女だった。身長と胸が未熟な様子を見ると、成人はまだまだと云った様子。
「もう!お兄ちゃんおっそ~い」
青年は声に気付いて顔を上げると少女に微笑んだ。
「あれ?エル、どうしたの?」
どうやら少女は青年の妹らしい。
注意して見れば、なるほど、顔付きは似ているかもしてないと気付くだろう。
そんな彼女だが、鼻歌交じりに歩いて来たのとは裏腹で、立腹の態を露わにしていた。
「どうしたの?じゃないのお兄ちゃん」
彼は事態を良く分かっていないのか、目を白黒させた。
「お昼ご飯……一緒に食べるって……約束したじゃない?」
怒り顔を一転させて上目遣いで寂しさに震える仔犬のような表情。
兄妹だから引っ掛かる事はないが、慣れない者にとっては特大級の罠だ。ただし、使う相手にとっては勘違い以上の効果を持つ可能性もあって諸刃の剣だと、青年は本人に口を酸っぱく言ってきたつもりなのだが……。
「僕にはいくら色目を使っても良いが、他の人に対してはあまり使うなよ?唯でさえ遊楽師として売れ始めて来たんだから、余計なトラブルは避けたいしね」
「はいはい、お兄ちゃんは心配性だよね……。もう少し私を信用してくれても良いんじゃない?」
「はは……信用するには実績が足らな過ぎるね……」
遠い目をする青年。それだけでどれだけ苦労したかを物語っている。
「そこまで……過剰な反応しなくても良いのに……」
ガクリと肩を落とす少女、その視線の先に青年が読んでいた本が目に入る。
「それで何を読んでいるの?お兄ちゃん」
ああ、と1つ頷いて青年は読みかけの頁に親指を挟み込み、本の表紙を少女に見せる。
「『銃騎士物語』だよ。以前から読みたいと思ってたんだけど今日来たら書棚に戻っていたから読んでたんだ」
へー、と感心した様子で少女が青年の手元から本を取り上げる。
「あ、おい!」
慌てて取り返そうとする青年の手を掻い潜り、少女はパラパラと頁を捲る。
「大丈夫よ?ほら」
少女の細い左小指が挟まれてるのを確認して青年は安堵の息を吐く。
「『銃騎士物語』って事はイシュトラドの『零姫』ね」
聞く者が聞く者だったら反発をされる様な事を少女が言う、
「おいおい、『零姫』なんて蔑称に近いじゃないか」
「そう?男にとっては『銃騎士』の異名の方が一般的だろうけど、女にとっては『零姫』の方が一般的よ?」
「そうなのか?」
「皇族の地位を捨てて学問に打ち込み、持てる知識で困る民人を救う。なんて女性じゃあまりできない事でしょ?」
確かに、と青年は同意する。普通の感性じゃとてもじゃないがそんな人生を選ぶことはしないだろう。
「だから女にとってイシュトラドの『零姫』は一つの憧憬の形よね」
「なるほどね」
「んでお兄ちゃんはどこまで読んだの?」
「ああ、第2章までだよ」
青年は第2章の粗筋を話し始める。
第2章の始まりは少女がアリシアという名前を与えられ、ムルトラ=フォレスタの屋敷に迎え入れられて3四半月の頃から始まる。
身体が不自由なアリシアが日常に慣れ始めた頃で、ハイルロッドの日常生活から始まる。
母親役のカルティナの類い稀なる力。
当時の町医者の技術水準や地方都市の食生活。
それらを無難に纏め上げた小休止的な話が多い印象を感じた。
そこから家族の契りを結び、真の家族になった事を挟み。
後半はアリシアの魔術と精霊術の教育。
アリシアが知るパリッシュの正体と精霊術師としての枷。
そんな彼女も掲慈の儀を経て準成人になった。
「――というのがこの第2章の粗筋だね」
「じゃあ、中盤に差し掛かったところかな?」
「まあ、本の頁の消耗具合からしてそうだね」
「第2章が終わった所なら切りが良いよね!?さっさとお昼ご飯食べに行こうよ」
「そうだな……そうするか」
頷き、立ち上がる青年が少女の手本を取りあげる。
「あっ……」
「昼食の間に誰かに取られるのは嫌だから取り置きして貰っておくよ」
青年は脇に立て掛けていたリャーバンを手に取り、図書館の司書受付に向かって歩き始めた。
「待ってよお兄ちゃん!」
前を歩く青年の片肘をに抱き着く少女。傍から見ると羨ましい光景に映る事だろう。
――> End Of Between Chapter2.
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
と言う訳で粗筋終了。
次回から第3章の始まりです。
宜しくお願いしますなのですよ。