第2章 第7話 定食屋『鹿羊亭』
食事だ!料理だ!美味しい展開だ!
と思っていた時があたしにもありました。今晩は。
長らくお待たせして申し訳ありません。
食環境の設定が不完全だったので少し更新が遅くなってしまいました。
文化の設定って大変ですね。という訳で新しいお話をおおくりいたします。
(2012/05/10 一部名称の修正)
若干昼下がりになってどの店も客入りも少なくなる頃合。アリシア達は商業区の定食屋『鹿羊亭』へとやってきた。
カルティナの行き付けで多少融通が効く上に味も上々と認識して居る。
「いらっしゃいませ」
茶色のショートカットをした女性店員が駆け寄ってくるとカルティナは手を挙げた。
「ベル、お久しぶり」
女性店員もそれを見て片手を上げる。
「ああ、ティナじゃないか。久しぶりだねー」
親しげに挨拶を交わす2人にパリッシュは訊ねる。
「お知り合いですか?」
「行き付けなのよ、ここは」
カルティナは10日に2、3回程魔術協会に顔を出しに行くのが習慣となっている。カルティナの魔術協会での仕事は主に指南役と選定役。主に初級職階級の育成の為の講座の開講と中級職階級の『初級精霊術師』の試験監督である。勤め先の魔術協会は南部執政区の外れ、商業区に比較的近い為に、昼食時は良く『鹿羊亭』に訪れている。
「と言うか、古馴染みかね?」
ベルと呼ばれた女性店員は苦笑しながら答えた。
「で、久しぶりに顔を見せに来たのは良いけど――」
ベルと呼ばれた女性はアリシアを見てそっとカルティナの耳元で訊ねる。
「その女の子は誰?親戚?貴女に凄くそっくりだけど」
「ああ、私の娘なのよ」
「は?ええっ!?」
カルティナはその反応に少し苦笑した。確かに今まで既婚者とは周知の事実だったが、娘がいる等という話は一切無かったカルティナに娘がいると言われればこの反応も、また当然と言えば当然なのだろう。
そんな彼女の反応を察してか、
「初めまして、アリシアと申します」
とアリシアは自己紹介で返す。
「これはご丁寧にどうも。あたいはベルティ=イェレットだよ。アリシアちゃん」
丁寧に返されてベルティも自己紹介で返した。
「この子、まだ足が悪くてね。台車で移動しなくちゃいけないから融通利かせてくれるかな?と思って」
「なるほどね」
ベルティはそれを聞いて店内をざっと見渡す。
「席は4人掛けの食卓席へ。お嬢ちゃんが席に着いたら隅に台車を持って行く対応で良いかな?」
「ええ、それでお願い」
ベルティはゆっくりと店内の段差のない場所を意識して3人を案内する。店内はほぼ満席だったが、店舗内の端に丁度都合の良い食卓が空いて居たようだった。
「こちらへどうぞ。注文が決まり次第、近くの店員を呼び止め下さい」
ベルティは一礼をすると離れて行った。
カルティナはアリシアとパリッシュを促して食卓に着くとパリッシュに耳打ちをする。
「そう言えば、貴女って普通の食事はとれるのだったかしら?」
「私は人工生命をベースに作られていますので摂取上では問題は有りません。食べた物は魔力に変換されます」
「ああ、そうなんだ」
それなら問題は無いとカルティナは笑ってパリッシュに目録を手渡す。自分はと言うと隣に座ったアリシアに乗り出して目録を見せた。
「アリシアちゃんは何が食べたいか決まったら教えてね」
目録には文字がずらりと並んではいるが、予備知識が全くないアリシアにとってはどの文字が何を指しているのかがさっぱり判らなくて首を傾げるばかり。
結局パラパラと目録を捲って、
「う~ん……ボク良くわからないからお母さんに決めてもらって良い?」
とカルティナに助成を頼む事になった。
「じゃあオススメを選んであげるね」
流石にカルティナはこの店の常連だからこそメニューは知り尽くしている。今の自分の気分とアリシアの分を手堅く決める。
暫くパリッシュも目録をにらみ続けていたが、注文する者を決めたと合図をして目録を閉じた
「すみません。注文お願いします」
カルティナは近場の女性店員を捕まえる。
「麦米の焼き飯と野菜のボルタと堅焼きガレイ、野菜炒めをお願いします」
「それでは野菜のボルタと堅焼きガレイを追加で」
パリッシュの注文を確認してカルティナは更に料理を追加する。
「後、ライ芋の蒸かしを3人分、小人豚の香草焼きを追加で」
「畏まりました」
女性店員は受注票の内容を確認して引き下がって行った。
焼き飯とボルタはこの地方の郷土料理である。
焼き飯はハイルロッド産の麦米という乾燥に強い品種を使用している。色鮮やかな野菜や根野菜を微塵切りにして麦米と一緒に炒め、少量の香辛料とハイルロッド特産の豆醤を使って味付けをするシンプルな料理だ。
ボルタはハイルロッドの乾季に採れた野菜を鶏肉と一緒に一晩煮込んだスープ料理だ。堅焼きガレイ(パン)と一緒に頼み、ガレイをボルタに漬けながら食べる料理で、家庭でも良く作られる家庭料理の一種である。
ライ芋の蒸かしはそのままライ芋という甘味の有る芋を蒸かした物で、子供のおやつとして振る舞われる事も有る。
小人豚の香草焼きは体長25ヴィレット(約30センチ)程度の小さな豚の腹に香草と野菜を詰めてオーブンで焼く料理。小人豚は養豚が普及しているとはいえ、そこまで盛んでは無い為に準高級食材だ。祝い事等に振る舞われる料理として若干敷居の高い物という認識がある。
今回、小人豚の香草焼きを注文したのは、カルティナ成りの祝いの形だった。
1つ目は、パリッシュが付き添いだとはいえ外に出る事が出来るようになった事を。
2つ目は、少女が魔術を学ぶ為の許可を魔術協会に取り付ける事が出来た為。
一月前の彼女の状態と比べればどれ程改善したか彼女はその目で見て来た分、応えてあげたくなったのだった。
「それでティナ、魔術協会の方はどうでしたか?」
注文を終えてパリッシュがカルティナの今日の成果を訊ねる。
「ああ、アリシアちゃんに魔術を教える事に関しての許可は取り付けて来たわ」
「本当ですか?お母さん」
待ちに待った魔術の手解きの許可にアリシアは目を輝かせる。既に魔力灯等の日常的な魔法具の操作用の魔術はカルティナに習っていたが、精霊魔法などに関しては魔術協会の許可が必要な為に、アリシアはずっとお預けを食っていたのだった。
「ええ、でも正式に親子になってからになるからもう少し待ってね」
「はい」
許可は保護者の保証の必須の上指南役が同伴となるのだが、カルティナは二つ名持ち。指南役には打って付けだ。後は親子の契りを交わして保護者を作るという前段階に来ている。
「まあ、許可を取る方は問題無かったのだけど、もう一方が問題だったわ」
カルティナは溜息交じりにポツリと呟く。その様子にパリッシュが反応する。カルティナのこの反応を見るに余り良く無い問題なのだろうと推測する。
「と言いますと?」
「魔術協会の方で通達が有ったみたい。『アルファレドの後継者』を見つけ出せ、って」
――> To Be Continued.
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
取り敢えず郷土料理とかの設定って物凄く難しいんだなぁと改めて実感しました。
地形、地域の特産物、そして気候を考慮に入れて文化の発展を想定する。食は文化の基本とか言いますけど、確かにその通りと言わざるを得ないなぁと……。
取り敢えず設定を直して問題はなさそうなのでGOサインだして更新再開します。
本当に皆様お待たせして申し訳ないです(ぺっこり




