第2章 第3話 新しき日々(3)
皆様お疲れ様です。
新しいお話をお届けします。
けっして脇事してた所為で投稿遅れたんじゃないんですからね!本当なんですからね!
日常編って結構書くと長いんだなぁと実感中です。それでは続きをどうぞ。
今朝の朝食はガレイ(少し硬めの丸パン)とスープ、乳製品(ヨーグルトのような物)に野菜サラダ。
食後には果物も出るが、今は食卓にない。
「ふんふんふ~ん」
鼻歌を歌ってアリシアは縦に割ったガレイにジャムを塗り付ける。ゆっくり丁寧に塗り付ける。
ハイルロッドの名産『オルコット』。柑橘系の果物で大きさは少女の両手に収まる程度。
乾季の中盤に収穫され、酸味が少し強いがそれを上回る甘味が有る。ジャムや果実酒に加工される事が多いが生でも食べられる物だ。
「アリシアはオルコットが大好きなんだねぇ」
若干ジャムを付け過ぎではないか、と心配しながらアンガースが声を掛けるとアリシアはニコニコ顔で答えた。
「ええ、ボク、ジャムが好きになってしまいました」
「そう、それでは今度オルコットの畑に連れて行ってあげましょうか?」
斜め前のカルティナが合いの手を差し伸べる。やっと眠気が抜けて来たのか表情が柔らかい。先程の不機嫌さが嘘のように雲散霧消している様に少女は安堵して応じる。
「本当ですか?カルティナ様!?」
思わず乗り出したアリシアに鋭い視線を投げるカルティナ。普段は優しいが、マナーには少し煩いくらいの態度を取る。アリシアは瞬間的に自制して反省の色を浮かべる。
カルティナは内心可愛らしい姿に母性を擽られる、が、それはそれでこれはこれ。今は人生の上で大事な教養を身に付ける期間。厳しく接しなければ、と想い態と冷たい態度を取っていた。
「はうっ…、ごめんなさい」
慌てて席に座り直して少女は彼女に輝かせた視線を送る。
「喜ぶのは良いですけどタダでは連れて行ってあげませんよ?」
「え……?」
「最近、寝起きが悪いそうね」
カルティナが含みを持たせた言い方でパリッシュを見る。パリッシュは意図を読んで頷く。
「そ、それは……」
「貴女はまだ子供なのだから夜更かしは身体を壊す元ですよ」
「あぅ……でもっ……」
「アリシアちゃ~ん?まずは体力を付ける事を第一にって、言ったわよね?」
「はい……」
「言う事聞かない子はお母さん、歓心しないなぁ?」
少女は『お母さん』という言葉にピクリと肩を揺らす。
因みに2人はまだ親子の関係では無い。一昨日、やっと根回しが終わってマールジア修道支部の修道長から連絡が来た。後は親子の契りを交わすだけとなっている。想定していた時期は早いが、どの道親子になるのだ。怪しまれる事も想定内として行動する事になった。親子の契りは修道会で行われる。もう時節は3日後と予定を組んでいる。
それでも以前から期待して居たアリシアには効果的であった。
「だからね。アリシアちゃんがきちんと自分で歩けるようになったら連れて行ってあげます」
「はいっ!約束ですよ?カルティナ様」
(それでも……連れて行けるのは来年でしょうか?)
もう直ぐ寒季、植物は葉を枯らして行く季節。アリシアの身体に体力が付いた頃には葉も枯れ落ちて見る華も無くなっている事だろう。
「もちろんですよ」
2人はにへら~と笑って朝食を再開する。
基本的に、この国の習慣に食事中は言葉を交わしてはいけないと言う作法は無い。朝
4人で仲良く朝食を取りながら今日1日の予定を語り合う。
本日の予定は、カルティナの魔術師協会へ出頭、アンガースは職場に勤務。アリシアとパリッシュはグウェイズ=ハルマーが営む診療所に行く事になっている。3日に1回診てもらう事が決まっているのだ。
カルティナが診るのも良いが、医師としての現役を降りてもう5年。軽度のものなら診る事は出来るが、重度であり、不測の事態がいつ起きるかも知れない現状では、やはり現役医師に委ねた方が良いとの判断だった。
アリシアがフォレスタ邸に保護された日から今までの一月、グウェイズが回診をしてくれていたのだが、好い加減本業として診療所を開ける訳にもいかないと云う判断で今回から大分体力の付いたアリシアの方から訪問する事になった。
一方、カルティナが魔術協会へ出頭する理由は、アリシアの登録書類を手に入れる為である。
アリシアに魔術から派生した精霊魔法を教える為には、どうしても魔術協会に登録及び許可証の発行をしてもらわなければならない。
カルティナはできる事ならアリシアに記憶が戻らない限りは平凡な人生を送って欲しいと思っている。今まで『ゆっくり生きる』ことをしなかった『彼』の分まで今の『彼女』にして欲しい。だから自分で興味を持った以上の事は教えない事にする。が、狙われて居る事も必定。身を護る術として精霊魔法を少しは使えるようになって欲しい。関わって欲しくないが関わって行かないと生きていけない、というジレンマ。これが親として子を導くという事なのか、とカルティナは内心溜息を吐いてアリシアを見つめる。
肝心の彼女は今、侍女に食後の果物の皮をむいてもらっているのを興味深そうに眺めていた。
「あう?」
という妙な声を出して振り返るアリシアに一瞬戸惑う。
口には小さく切られた果物が咥えられていた。その表情が妙に幼くあどけない。
はしたないと叱ればいいのか、可愛いと愛でれば良いのか、判断できずに曖昧に微笑むカルティナ。
「口の物を飲み込んでから話しなさい?」
自然と柔らかな表情を浮かべる彼女の立場はまだ本当の家族ではないが、態度は立派な母親であった。
因みにアンガースの職場はハイルロッド統合庁舎で、彼は南3番地区の地区長の様な立場である。それなりに責任ある立場の様であった。
――> To Be Continued.
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
色々方向性を見直して自分で何が書けるんだろうと模索中の1週間でした。
コメディ書いてみたいなとか、他の構成とかしてみたらどうなのかな?とか色々と……ね。
結果として『クオス・メネケス -史伝の歌姫-』という物をシリーズに追加したりしました。
こちらは短編集です。銃騎士物語とは関係ないので特に読まなくても大丈夫なお話。
今週からはもう少し真面目に頑張りたいなぁと思います。
それでは~。