間章 とある国立大図書館の一角、その1(第1章粗筋)
予告通り変則的な粗筋です。
読むのも良し、読まぬも良しな話です。
間章は基本的に本編とは関係ありません。
単に粗筋だけ書くのもなぁ…な考えで作った物で他意は有りません。
(2012/03/10誤字修正)
ここは学術国家ヒストリアの首都であるバスクの国立大図書館の一角である。
一部の書籍以外民間にも広く書籍を公開しているこの図書館。周辺国家で一番の蔵書数を誇る為、平日休日問わず人の入りが多いのが特徴である。
そんな中、熱心に一冊の本を読む青年が一人。リャーバン(5つの弦を持つリュート属の弦楽器を指す)を脇に立て掛けている分目立っている。
銀髪銀目の生粋の純月属性の少し切れ長の瞳を持つ美形の部類に入る風貌をした青年だった。
それ故に、読書をする姿に華を見て遠巻きに女性が視線を注いでいる。が、本人は本に熱中して居る為に気付いては居ない。
そんな視線の最中に初老に入りかけた容貌の眼鏡を掛けた男性が青年に近付いて声を掛けた。
「やあ、盛が出ているね」
青年は声に気付いて顔を上げると初老の男性に微笑んだ。
「これはこれは司書長。お疲れ様です」
どうやら初老の男性はこの図書館の司書長を務めているらしい。
しかしこの図書館、学術国家の国立大図書館と言われるだけあって規模が桁外れである。故に司書長と云えども全体の一角を任されて居るに過ぎない。
「君は特徴的だから遠目でも判るよ」
彼の側に立て掛けてあるリャーバンを見遣る。
「今日は相方は居ないのかね?」
「相方は別行動中です。本を読むのが苦手らしくてね。司書長は今休憩ですか?」
「ああ、有能な部下が多いと上は楽ができて良い」
はっはっは、と快活に笑う司書長と呼ばれた男。若干青年は引き気味だ。
「ははは……部下を扱き使う上司は嫌われますよ?」
「違い無い、心して擱くよ」
多少の嫌味にも動じない
「そうして下さい」
青年は苦笑して相槌を打った。
「それで今回は何を読んでいるのだね?」
興味深げに司書長が青年の手元に視線を落とす。
ああ、と1つ頷いて青年は読みかけの頁に親指を挟み込み、本の表紙を司書長に見せる。
「『銃騎士物語』と言うそうです。先々代の精霊皇の食客だったそうですよ」
「ああ、少し前の本だな。私も読んでみようと思っていたのだが、終ぞ読む機会を逸してしまったものだ」
「そうですか」
「まあ、今と成っては特に読む気にもなれんからの。粗筋だけ教えてもらえんかな?」
「良いですよ?と言ってもまだ序盤ですけどね」
青年はこれまで読んだ物語の粗筋を話し始める。
物語の始まりはアンガース=リオルテ=ムルトラ=フォレスタとその妻のカルティナ=メディス=フォレスタが友の葬儀から帰る所から始まる。
友であり、かつての信頼できる旅の仲間であったアルファレド=クルトラルフ=フォン=ラーディア=イシュトラド、イシュトラド皇国の第二皇子。
死因は研究室の爆発による事故死であり、その被害規模は死者18名、イシュトラドの学問府研究棟の最上階である八階のおよそ3分の1を吹き飛ばすほどのものだった。
しかし、彼等はアルファレドの人柄を知って居た上で疑問に思う。とても納得のいく物では無い、と。
やがて二人は街道の途中でアファリア修道院の修道僧が好んで着る僧兵着を着た女性を見かける。
馬車から降りてその女性に話しかけるとアファリア修道院の修道僧とは文字通り毛色が違う銀髪だった。
アンガースは訝しく思いながらも子連れで目的地が自分達と同じハイルロッド南だと聞き、同行を促した。
ハイルロッドに着いた一向は銀髪の女性に目的を聞いた所、アンガースに会う為に来たと話す。
アンガースは銀髪の女性を自宅に招き話を訊く事にする。
彼女はアルファレドが作った魔力人形だという。
彼女が持ってきた物は彼女自身と自らの主だという。
安楽長椅子の隣側に寄せて居たのは子供で、しかも少女だった。
確かに少女の相貌は故アルトローネ第二皇妃に良く似ている。
それでも俄かに信じがたい事実。しかし、銀髪の女性、パリッシュは嘘を言って居るそぶりは無く、証拠としてアルファレドの証紋を差し出してきた以上、本当の事なのだろうと信じる事にした。
アンガースは長旅の疲れも有るだろうと労い、休息を取るようにと勧める。経緯の説明はその後で良いとと指示を出して。
しかし、これが災いと成った。
少女はその間に目を覚ましてフォレスタ邸から脱走を図る。
幸い被害は4人の軽傷者が出る位で軽微だったが、少女はその際魔力の暴走を引き起こして倒れる。
このままでは死に至ると、親強い付き合いの有る町医者を呼び、総掛かりで対処をして峠を越える。
そして、それを機にパリッシュが事の顛末を語る。
5日前の学問府研究棟の研究成果報告会にて、アルファレドに魔力人形を軍属配備を示唆するも拒否。理由は軍属配備することで魔力人形に宿った守護精霊が拒否反応を起こし、伝播する事によって国内の守護精霊が消える事であった。
アルファレドは学問府内で不穏な空気を感じて魔力核2つを封印する事にする。
しかし、封印した直後にイシュトラド第4騎士団副団長、ジャーナム=ファルトラ=フォートグリフとその配下が押し寄せ、魔力人形の軍属配備を強要する。
しかし、アルファレドは拒否し続け、最終的には交戦となる。
その結果、アルファレドは研究室を爆破した後に逃亡するも右腕を失い右大腿部に重傷を受けたのだと言う。
アルファレドのアトリエで新しい姿を得たパリッシュをアンガースの元へ向かわせようと説得し、力尽きる。
パリッシュは何とかアルファレドのパリッシュは主を助ける為に手を尽くし、一命を取り留める事に成功した。が、薬の効果で少女の姿になっていたのだった。
結局、その薬の効果は判らなかったが、姿形が変わったのは幸いと思い、供にハイルドッド南のムルトラ=フォレスタの元へ向かったという。
パリッシュが経緯を話し終わるとアルファレドの処遇を決める事になった。
決定したことはフォレスタ家に養子として迎える事。またパリッシュは侍女としてアルファレドの傍に仕えると云う物だった。
処遇が決まり、アルファレドは新しい名前『アリシア』を得て、アリシア=メディス=フォレスタとして生きて行くことになった。
「――というのがこの第1章の粗筋ですね」
「ふむ、何とも長い前置きだな。作者は性根が腐っているんじゃないかね?」
違いない、と青年は苦笑して首肯する。
従来の物語ものは主人公が早々明文化されるのが王道だった。
その王道に反したひねくれ方が今一面白味が感じられない様な気がするのだ。
「早い決断をするのも良いが、こう云った作品は気長に読むのが吉だ。もう少し付き合ってみるのも好いだろうて」
はっはっは、と司書長は笑う。
「司書長がそう仰るならもう少し付き合ってみます」
青年が相槌を打った所で一人の青髪の青年が駆け寄って来た。
「司書長!こんな所で油を売っていたんですか!?そろそろ戻って頂かないと……」
どうやら彼は司書長の助手のような立場らしい。
「仕方ないのう。それじゃあ失礼するよ。また今度続きの話でも聞かせて貰うかのう」
「分かりました。また今度お相手致しますよ」
司書長は、はっはっはと声を上げて笑いながら青髪の青年に引き摺られて行った。
「さて、続きでも読むか」
青年は指を挟んだ頁に視線を落として読書の続きに戻ったのだった。
――> End Of Between Chapter1.
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
と言う訳で粗筋終了。
ホント作者の性根腐ってますよね(苦笑)
皆さんにもご迷惑おかけしています。
というか大いに反省しています。
皆さんごめんなさい(つД`)
と言う訳で次回から第2章の始まりです。
宜しくお願いしますなのですよ。