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クオス・メネケス -銃騎士物語-  作者: 水姫 七瀬
第1章 記憶喪失の少女
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第1章 第11話 闘争の結果と始まり

皆様お疲れ様です。

新しいお話をアップします。

今週末には実家から帰還しますので以前と同じか少し遅いスピードで更新すると思います。

宜しくお願いします。



 アルファレドは右足を引き摺りながら建物内を移動していた。

 右腕は肩口から失った状態で、これ以上の出血を阻むために紐で縛り付ける。法服(ローブ)は研究室を爆破する際に立ち上った炎の所為であちこち焦げ付いていた。

 ここは研究棟から離れた北東の森の中に作られたアルファレドの研究所の地下室。アルファレドは研究室の爆破の際に起動させた固定魔術の100番。『学問府研究棟から研究所地下室にアルファレドを転移させる』という効果のそれは爆発の間際に発動したのだった。


「ぐ……もう…少し……なんだ……」


 アルファレドは荒い呼吸を堪えて部屋の片隅にある棺桶に似た箱を開ける。箱の中には銀色の髪をした裸体の女性が眠っていた。いや胸の部分が開き、台座のような物が見える。それはメドクス・ローメの素体だった。

 アルファレドはそれを確認して魔力核を填め込むと、蓋を閉じた。

 暫くすると、銀髪のメドクス・ローメは目を開き身体を起こした。それを確認するとアルファレドは箱を背にして崩れるように倒れ込んだ。


「アルファレド様!?」


 それを見て、メドクス・ローメ、新しく肉体を得たパリッシュが駆け寄る。


「良いか……僕は……もう…助かり…そうにない……。東に……ハイルロッド……という衛星都市……南にアンガース、ムルトラ=フォレスタ……という男が居る……。自身…の処分を…その男に問…え……」


 パリッシュは「はい」と頷く。

 アルファレドは力無くそれを見遣るも、失血の所為かもはや視界は霞んで、パリッシュの輪郭が判別できる程度だった。


「申し…訳…ない……君を…こんな…事に…巻き…込んで…」


「そんな事を言わないでください!」


 アルファレドは眉根を(ひそ)めて苦痛に呻くと意識を失った様だった。


 パリッシュは慌てて部屋中を駆け回って薬品をかき集める。

 学んだ知識を生かして主の怪我に合いそうな物を選び、片端から試してみる。

 治癒系の薬品は基本的に癒しという意味の高速魔術言語の「Farnum(ファーナム)」が着いている物が多い。薬品棚の特に貼札(ラベル)に似た名称が固まっている段を探して持って来たものだ。アルファレドの薬品整理時の癖は重々熟知している。それを基に選んでいくのだが、これと言った効果のある薬品はみつからなかった。

 多少、傷の回復や体力の回復は見られても、致命的な右腕の切断部分や右大腿部、腹部の怪我は良くならない。ラロタファーナムでさえ本人の生命力の減少が著しく、満足の行く効果が得られなかった。

 最終的に残ったのが無印の貼札(ラベル)の貼られた薬瓶だった。

 最早反応も返せないくらい衰弱した主を見て、パリッシュは祈るように薬瓶の中身を水差しに入れてゆっくり飲ませた。

 このまま死ぬくらいならダメで元々と最後に飲ませる。

 かなり衰弱が激しく、嚥下するのもやっとの状態で飲ませた最後の薬品。飲ませて少ししてから微かにアルファレドの身体が発光し始める。

 徐々に激しくなる光と共にアルファレドの身体が高熱を発し始めた。


「ぐ…うぅ……」


 低く唸り始めた主を見て慌ててパリッシュが魔術を使って回復を促す。主にこの場合に問題があるのは体力の無さであった。



 そのまま幾度と無くパリッシュは付きっ切りで回復魔術をかけ続けた。事前に使用した薬品の効果もあり、半日過ぎたころには熱が下がり始めてアルファレドの呼吸も安定し始める。

 峠も超えただろうと安心して一息吐いたパリッシュだったが、アルファレドはまだおぼろげな視線を彷徨わせて荒い息を吐いていた。

 せめて主には心安らかに休んで欲しいと思い、アルファレドの瞼を優しく閉じさせる。


「あなたは頑張りました。後はゆっくりとお休みください」


 パリッシュはアルファレドを抱え上げると、地下室から出て寝室らしき部屋のベッドに横たわらせると衣服を探して歩き始める。

 半間程歩き回り、アファリア修道院の兵僧着を見つける。いざとなった時の備えだろうか、今のパリッシュに丁度良い大きさの服がしまわれた箱から取り出したのがそれだった。

 パリッシュは手早く着替えてアルファレドの元に戻った。

 アルファレドの身体は既に光が消え始めていたのだが、それ以上に驚くべき変化があった。なんと、身体が小さく縮んでいたのだった。そればかりではなく、髪も長く伸び、ベッドの上から流れ落ち、床にまで届く程であった。

 パリッシュは慌ててアルファレドの身体を確認する為に衣服を脱がしていく。腹部の傷は薄らと跡が見えるが時間が経てば消える程度だった。右大腿部の傷も塞がっている。大きな効果と言えば右腕がいつの間にか再生しているという事だった。生まれたばかりの様なまだ乾いていない右腕の皮膚は赤く腫れている所を見るとまだ直接外気に晒すのは危険だと判断してパリッシュは急いで右腕に包帯を巻いていく。

 大きな問題は彼が彼女になっていた事だろうか。身体を確認した際に露見した一番の身体変化。こればかりは何の効果かは判らなかったために後回しにしていた。

 パリッシュは何か手がかりが無いか確認するべきかを考えたが、現在の状況を考えるとこのままの方が放たれるだろう追手を視野に入れて考えた上でこのままの方が良いと判断する。


 パリッシュは今のアルファレドに合う衣服を探したが結局見つける事ができなかった為に、パリッシュに用意されていた衣装箱の中から厚手の突貫着(ワンピース)を選んで着せる。腰に紐を括り付けて着崩れないようにした。

 一通り彼(?)の服を整えてパリッシュは自分の旅支度をし始める。地図、テント用具、携帯食、携帯灯(ランプ)、外套を用意した背嚢に詰めていく。その後、アルファレドの焦げた法服(ローブ)から証紋(学問府内での証明の為の物、学問府の紋章半分と個人識別紋章を組み合わせたもの)を剥ぎ取り、背嚢に詰め込んだ。


 次に地下の倉庫から武器になりそうなものを探す。アファリア修道院の兵僧着を用意していた所為か、アファリア修道院の兵僧が好んで使う儀装槍(装飾が施されている祭儀用の槍)を見つける。1.4レクス(170センチ程度、1レクスは120センチ)の歩兵槍で0.35レクス程度が装飾刃で中心に精霊石製の宝玉をあしらい、放射状に何かの鍵のような形の刃が突出している。使い様によっては槍にも儀杖にもなる武器だった。

 パリッシュは儀装槍を片手に持って振り回す。

 槍の使い方に関しては長掃け(デッキブラシ)や箒を武器に戦う事を想定として槍の扱い方を頭に入れていた為に、少しは様には成っているが、所詮素人の付け焼刃にしかない実力で無理矢理にメドクス・ローメが持つ人外の膂力で捻じ伏せているのが難点だろう。

 だが、木の棒よりは剣に対して効果を得ることができるだろうとパリッシュは納得する。


 パリッシュは必要な物を揃えてアルファレドを背負った。

 小康状態に持って来てはいるが、依然として危険な状態であることには変わりが無いし、何時この場所が知られるとも限らない。可能な限り早く離れる事が好ましいと判断する。


「必ず、ハイルロッド南、ムルトラ=フォレスタ様の所にお連れ致します」


 決意を固くしたパリッシュは日の落ちた頃合いを見計らって研究所から出て、ハイルロッド南へ向けて、東に歩き始めたのだった。





                    ――> To Be Continued.

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



こうして第1話に続く訳ですね。

これで後2話位書いたら第1章が終わって本編スタートになる訳です。

その際に悩んでいるのは現在の『第1章』を『序章』に表記変更するかどうかという事なのです。

ここまで書いておいてこれが序章なのか、と思う人も多そうですが、プロット的にはここまでが序章扱いです。

あ、章間には前章の粗筋を書いて内容をサラリと確認できるようにはしていきます。

なので正確には多分後3話分の枠を持って次章に突入します。

ここまでお付き合いして頂いた皆様、スロースタート過ぎて首を長くしてお待ちだと思いますが、もう少しお付き合いくださいませ。

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