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クオス・メネケス -銃騎士物語-  作者: 水姫 七瀬
第1章 記憶喪失の少女
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第1章 第9話 落とされた撃鉄(2)

お待たせしました。

リアルが少しばかり忙しくてこんなに時間が空いてしまいました。

まあ、戦闘シーン書いてたら文字数が膨らんでしまって切りの良い場所で区切ろうにも、切りの良い場所が無かったという理由も有りますが。

それでは続きをお楽しみください。



 ジャーナムは何をと大声を張り上げた。


「者共、来たれ!」


 それは部屋の外にも間違い無く届くような大声だった。それなのにも関わらず、部屋の外からは一切の反応が無い。むしろ、それ以前に気付くべきだったのだ。先程までの喧騒で部下が室内に突入して来なかった事に。


「どうして誰も立ち入って来ない?」


「ふ、副隊長……?」


 二人は怪訝そうにお互いを数瞬見合った。


「結界ですよ」


 アルファレドが口を開いた。


「そもそも、この僕が研究室内に何も事前準備をしてないとお思いで?」


 それを聞いてジャーナムは顔色を変える。

 そう、このアルファレドの研究室は様々な固定魔法によって一声あげれば限定的な異界と化す事も可能なのだ。

 初めに使った15番は如何なる場合でも、研究室内からなら一瞬でアルファレドの執務机の前に移動する効果が有る。2番はドアの施錠と強化。3番は壁面の強化で9番は研究室内から外部に魔力を漏らさない為の結界の発動。そして12番はパリッシュをアルファレドの付近に一瞬で移動させるというものである。

 それぞれ効果は大掛かりな魔法に近いものだが、条件付けと補助魔力の蓄積機が室内にある場合に破格の低消費量で運用ができるというものだ。何れも鬼才とまで評価されたアルファレドならではの布陣だった。他にも固定魔法は用意されているが、実用的なものはこれら以外には片手の指で数えられる位の戯れに作った物が多い。


「くそっ、我らの動向を知っておったか!?」


「そんな高尚なものじゃない。研究成果報告会の他の研究者の反応を見ていればいずれ起こる事だと予測できる」


 アルファレドは手の中でブローブを弄り回しながら続ける。


「君達は……莫迦だ。愚か者だ。どうせ今回の事も浅知恵しか持たぬどこぞの愚弟が考えた事だろう?いかにも仕組まれた事だと判りそうな事だ」


「そこまで解っておいでか。しかし、自らの弟を愚弟呼ばわりは許せませんぞ」


 ジャーナムが剣を中段に構える。配下の騎士はそれに倣いて彼の手前に出て剣を構える。

 行動を諌めるつもりの言葉がきしくも挑発という結果に終わってしまった。

 実は、アルファレドも敢えてどちらとも取れる言葉を使ったのだが。それでも挑発に乗ってしまった彼は『第三皇子キルトニッシュの命で動いている』事がほぼ確定したのだった。


「お前はラーディア様を捕縛せよ!私は人形を獲る」


 仕方ない、とアルファレドは腰から短刀を引き抜き左手に持つ。

 短刀は波打つ形の刀身を持った護拳の大きい形の所謂マインゴーシュだった。

 対人戦で問われるのは制圧力。相手を如何にいなして踏み込むか。それ故に主武器を持たない反対の手には盾かそれに近い武器を持つのが一般的だ。

 アルファレドの前に進み出た若い騎士は第4騎士団の団員だ。第4騎士団は外部戦力、戦争に駆り出される戦騎士が多い。目の前の騎士も多対多の戦術を修めていようとも1対1の単騎戦には疎い様だ。盾を主に使う彼らが今盾を持って居ない。それが有利になる、か。

 そこまで考えてアルファレドは左半身に構えて自分の執務机の横に出る。


 一方、パリッシュは一気に執務机を乗り越えてジャーナムに向かって長剣を振り下ろす。

 ガツンという音と共にジャーナムが少し後退して受け止める。膂力にしてはパリッシュの方が土属性の加護によって増して居る為にやや有利ではある。しかし、ジャーナムも伊達に副団長まで上り詰めてはいない。力は負けても経験なら上と言った所。直ぐ様引手を取ってパリッシュの体勢を崩して引き入れると膝蹴りをパリッシュの腹部に入れる。


「ぐぅっ!?」


 小さく呻いてパリッシュがよろめいた所に更に上段回し蹴りが迫る。パリッシュはこれを長剣の腹で受け止めて下がった。


「Ann-Juss Ragissetto-pyuly」


 素早く高速魔法言語と詠唱してダメージを癒すと正面に長剣を構える。

 

 その様子を窺いながらアルファレドは騎士の攻撃に応戦する。

 水平斬りには専ら弱い銃と短剣というスタイルだ。狭い室内ではかなりの不利になる。

 出来るだけ相手との距離を取るのが基本となる。

 突きを繰り出されれば短刀で受け流し、薙ぎは往なす。距離を詰められそうになれば銃で威嚇する。それの繰り返しになる。


 そもそも、8年もの放浪の旅をしていたのだ。対人戦の経験もそれなりにある。この十数年、戦争の無かったこの国では軍隊では模擬戦は有ろうとも実戦経験は積む事ができない。アルファレドと若手の騎士とではやはり経験というものに差が出てしまう。

 ならばどうして、アルファレドが梃子摺って居るかと言うと、やはり彼の甘さから来る問題だった。出来る限り無関係の者の命を取りたくない。そう思っていた。


「君はどうしてこんな不毛な謀に加担する?騎士なら国の為に尽力するのが当たり前ではないのかい?」


 アルファレドが問うと若き騎士は鋭い表情で答える。


「これが国の為になるならば、汚名を被っても悔いは無い」


 低く重い声にて語られたその言葉、アルファレドにはそれが嘘では無い本心の言葉だと理解する。それを知った上でアルファレドは声を張り上げた。


「ジャーナム!お前は自らの部下に嘘で塗り固めた言葉で命令するとは見下げ果てたぞ!」


 若き騎士がその声に気圧されて一歩下がる。


「何を戯言を!Ei Juss Farlling-Todow」


 ジャーナムは怒声を上げて高速魔術言語を詠唱する。自らの剣を中段に構える。


「Ann-Centlenum Farisetto-Bligg Toy Gupp」


 ボゥっという音と共に剣に炎が宿る。『焔将』ジャーナムと呼ばれる所以である。炎剣を自在に操る。それが彼の戦闘スタイル。彼はそれだけ本気なのだという事になる。


「もしや君達はキルトニッシュから何も聞かされていないのかね?」


 ジャーナムは聞く耳持たぬと剣を振いパリッシュに躍り掛かる。


「Eis-Soutra,Vanratto-Fajell」


 アルファレドは短く高速魔術言語を口ずさみ、『雷の衣』を自らとパリッシュに使う。身体能力向上効果があり、尚且つ反応速度を高めてくれる。多少の攻撃を防いでくれる効果もある。また不用意に手を出せば電気に襲われるという比較的高位の魔術である。

 パリッシュが炎剣を長剣で受けた瞬間にパリっという乾いた音が響いて剣越しにジャーナムを電撃が襲った。


「ぐぅ……」


 小さく呻いてジャーナムは炎剣を引く。

 炎剣の熱はどれ程の物かは分からないが、鋼鉄とは言え熱と衝撃を加えられれば脆くなる。それを危惧した上での『雷の衣』。意図通りの効果を表したようだ。ジャーナムはこれで迂闊に打ち合う事が出来なくなった。

 アルファレドはそれを横目で見て若き騎士に再度問う。


「君はどうしてこんな不毛な謀に加担する?」


 若き騎士は「それでも」と声を上げる。


「これが国の為になるならば……」


 そこまで言って剣を振う。

 アルファレドは半身引いて剣の軌跡に短剣を合わせて受け止める。バジっという音がすると若き騎士は顔を歪める。


「では君は国の為に成らない――」


 電撃で動きが一瞬鈍くなった若き騎士に詰め寄り、腹部に銃口を押し当てる。そのまま雷属性の魔力を付加した弾丸を撃ち込んだ。


「――だからここで倒れていると良い」


「がっ!?」


 鎧に打ち込んだ弾丸はガンッと言う金属同士を打ち合わせた音を立てて、若き騎士を貫いた。若き騎士は撃ち込まれた電撃に身体を痙攣させながら崩れ落ちる。


(恨みは無いがこれも巡り合せ。許せよ)


 アルファレドは心の内で謝罪をするとジャーナムの方へと向き直った。





                    ――> To Be Continued.

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。


やっぱり戦闘描写って難しいですね。

何というか自分の表現力の無さに辟易してしまいます(汗)

やっぱり修行とか必要ですね、こうゆーのは……。

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