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クオス・メネケス -銃騎士物語-  作者: 水姫 七瀬
第1章 記憶喪失の少女
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第1章 第8話 落とされた撃鉄(1)

お早うございます。

今回からささやかですが戦闘描写をお見せする回が続きます。

拙い表現ですが、お楽しみ頂けたら幸いです。



「メドクス・ローメの軍属配備を視野に入れて頂きたい」


 その言葉で空気が一気に凍る。


「それは軍部の意向と捉えて良いのかね?」


 アルファレドは眉間に皺を寄せて問い質す。

 先の研究成果報告会で述べたとおりアルファレドにはメドクス・ローメの軍備配備など考えてはいない。同意をする気も毛頭無いのだ。

 しかし、目の前に居るジャーナムと言う男。その答えは想定の内と涼しい顔で答える。


「私が冗談を言う人柄だとお思いで?」


「いいや、思ってはいない。確認の為だよ」


 『焔将』の二つ名を頂くジャーナムは実に実直を通り越して愚直と評価されるような人柄だ。冗談では無いだろう。


 アルファレドは現在の要因を素早く整理して状況判断を行う。

 そもそも、今朝の研究成果報告会で『軍備配備はしない』と意志を示したばかりで半刻と少ししか経っていない。明らかに研究成果報告会の参加者の内に間諜が紛れ込んでいるか、引き受けた者が居るという事だ。最高機密の研究は騎士団の副団長でさえ知る術が無い筈の情報。もっと立場が上の者が一枚噛んでいる可能性を考慮に入れる。


「私は一切軍属配備を考えていない。また交渉の余地も無いとだけ言っておくよ」


 相手もある程度情報を持って居るはず。技術的に無理なものは無理だと知っている。今更交渉などしても意味が無い。


「仕方ないですな」


「諦められるのが正解かと」


 この手のタイプは搦め手が通用しない。正攻法で拒絶するしかない。それで諦めるなら良し、引き下がらないのなら難解な資料でも叩き付けておけば諦めるだろう。その程度にアルファレドは思って居た。それ故に次の言葉には彼の正気を疑った。


「協力して頂けるならそれで良し、と思って居たのですが、非協力的ならこちらも手段を選んではいられませぬ。研究成果を接収させて頂く」


「何を言っている?」


「なに、『ラーディア様研究成果の実験体を使って謀反を企てていた』とすれば良い」


 眉根を寄せてアルファレドは言動の重要性を吟味する。

 情報の捏造、それが行えるのは上部の上部、一握りの権力者にしかできない。

 この場合はジャーナムの上司では無く、全騎士団統括者かアルファレドと同等の権力を持つ立場、皇族しか思い浮かばない。


「それが本心か?ジャーナム殿」


(上は兄である第一皇子ラタトィユか、軍部の上層部に従事している第三皇子キルトニッシュのどちらか……ジャーナムが来たからにはキルトニッシュしかあるまい)


「今ならまだ間に合いますよ?ラーディア様」


「断る」


 ジャーナムが右手を挙げて部下に命令を下す。


「ラーディア様はご乱心の様子。捕縛せ――」


 命を告げ終わる前にアルファレドはテーブルを蹴り上げて高速魔法言語を口にする。


「Do-Joble AerLodo-Lor.(15番の起動)」


 これに些か驚いてジャーナムはテーブルを蹴り返す。とそこにはアルファレドは居なかった。


「なっ!?何処に消え――」


 アルファレドはブローブ(魔力付与による銃器。この場合は片手で扱える程度の大きさのものを指す)を自分の机の引き出しから素早く取り出し、構えて引き金を引いた。

 ドシュッという音が響く。


「――た?」


 銃口から飛び出した弾丸がアルファレドからしてジャーナムの左側に位置する騎士一名の鎧に着弾する。

 実に貧弱な鉛玉。ジャーナム含む4名の誰もがそう思った瞬間にバジッと低い音がして着弾した騎士を大きく弾き飛ばした。


「がっ!?」


「なっ!?」


 ガシャンっと大きな音を立てて壁に叩きつけられて騎士が床に崩れ落ちる。崩れ落ちた騎士の身体から微かに白い煙を上げていた。


「一体……何が――」


 その突然の光景に釣られてジャーナム含めた3人が思わず振り返っていた。


 これを好機と見てパリッシュが駆ける。


「Ann-Soutra Fallaratto-Bligg.」


 風属性の加護を受けてパリッシュは大きく跳ぶ。

 タンと跳躍の小気味良い音が響くと一気に壁際の箒を取って壁に『着地』していた。身体を捻ってジャーナムの右側に立っている呆然とした状態の騎士に向かって壁を蹴り、宙を舞い、箒を振り被る。


「Ann-Centlenum gundatto-Bligg.」


 短く高速魔術言語を使って土属性の加護を受け、腕力を強化。一気に箒を振り抜く。

 ボキっという音と共に箒が折れて回転しながらすっ飛んで行く。

 木製の箒とは言え、土属性の加護を得た人間離れした強力から振るわれる一撃は意識を刈り取るどころか生命を刈り取る一撃にも成り得た。

 首に箒の一撃を受けて崩れ落ちる騎士が帯刀する腰の剣を素早く引き抜いてパリッシュは距離を取った。幸いにして一撃を叩き込まれた騎士は生命活動を停止する事は無く、地面に転がり泡を吹いている。


 その間、アルファレドは高速魔法言語を使い、研究室の固定魔法を次々と起動していく。


「Do-Joble Rar, Far, Fay, AerLodo-Rar. (2番、3番、9番、12番の起動)」


 次の瞬間、パリッシュはアルファレドの側に移動していた。


 実にわずかな時間での所作であった。


 そこまで事態が推移して、ジャーナムと配下の騎士一名はやっと抜剣する。


「よくも、やってくれましたな、ラーディア様……」


「よくも、と申されても貴方が行おうとした事を先回りしただけの事ですよ」


 さらりとアルファレドは言葉を受け流してブローブを構える。脇に控えるパリッシュも中段に長剣を構えた。


「抵抗されるのは良いが、私にはまだ配下が室外に控えている事をお忘れか?」


 ジャーナムに言われるまでも無く、アルファレドはその事を理解している。

 伊達に研究室を一人で任されている訳では無い。そこには皇族だからと贔屓されない裏打ちが有る。年功序列という掟が有る学問府で異例の如く頭角を現した若き鬼才。それがアルファレドの世論評価。過去には8年冒険者として生活していた経歴も持つ為に荒事にも素早く対応する事が出来る。5年間研究に明け暮れては居たが、技量の衰えはすれど行動力はいまだ健在である。


「呼べるのでしたら、呼べば良いと思いますよ?呼べるのでしたら……ね?」


 アルファレドは撃鉄を引き上げて軽く笑みを浮かべて挑発した。





                    ――> To Be Continued.

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。


戦闘描写って難しいですね。

ファンタジーモノには付き物とは言え、今までそういう描写を書く機会が無かったのでやっぱり書き切れない部分は存在している気が……。

その辺りはやはり研鑚を積むしか無いのでしょうね。

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