67 あの日へ
「じゃあ、一緒に行きましょう。貴方と一緒ならどこだろうと俺は幸せです。今度は置いてかれないですね。」
一人じゃない。
一つになるから永遠に一緒。
俺の幸せはグランと一緒にいること。
だから……ある意味これは最高の幸せの形なのかもしれない。
「……そうだな。今度はちゃんと一緒に行こうか。 」
グランもそれが最高の幸せだと思っているらしく、それがとてもとても嬉しかった。
もう誰にも邪魔されずに一つになってずっと一緒、それが俺達の『終わり』であり『永遠』になる。
俺は幸せで仕方なくて……堪えきれない笑みを浮かべながら、グランと俺の体を分解し混ざり合って境界線を消していった。
俺達は一つ。これが俺達の辿り着いた『幸せ』。
ぐちゃぐちゃに溶けて混ざって……もう離れるなんて概念がなくなったその時────……。
────ピッ!!
突然俺とグランの間に、一本の境界線がひかれた。
『…………っ!!』
それにハッ!として、その線を壊してやろうとしたが、その間にもどんどんと俺達は離れて別個体になっていく。
『────っ待て!』
直ぐに手を伸ばして離れていくグランを追いかけると、その途中にあの雀の顔をした【時の神】がいて、俺に向かって舌を出して中指を立ててきた。
「俺の復讐を勝手にお前が終わらせんな、バ〜カ!
大事な奴が存在している内は、『別々』を楽しんどけよ。
────今度こそ……あばよっ! 」
────ハッ!!
【時の神】が消えて、意識は直ぐに覚醒したのだが、そこは真っ暗で狭い空間の中で……。
手には少量の硬貨を持っていて、俺には────ココがどこなのか知った。
「……1000年。ここは────あの日……グランの部屋の……。」
直ぐ近くに、愛おしいグランの気配を感じる────が、同時に酷く不快な反応が近くにいる事も感じて、大きく口元は歪んでいく。
「フ……フフフ……。」
楽しくて楽しくて笑いが漏れ、とうとうその場で大笑いしてしまった。
「アハハハハハハ!!!アッハハッ!!ハハッ!!!はははははは!!」
まさか二度も時を渡ってしまうなんて!
グランはやっぱり凄い!
────ドンッ!!
俺は上の蓋を吹き飛ばし、外へ出る。
そして大きく口元を歪めたまま…………一瞬でグラン様の気配がする場所へと飛んでいった。
◇◇
「────っちッ!!面倒掛けやがって、ドブネズミ如きが! 」
レイケルは大きな舌打ちをしながら、気絶しているグランへと近づいていく。
そしてそのまま魔法を放とうとした様だが……突然グランの前に気配なく現れた俺に気づき、非常に驚いた様子で肩を揺らした。
「なっ……なんだ……!?いつの間に……??……あぁ、気配遮断のギフトスキルか。
ふん、そこの男と同じスキルかな?────ん?お前、その外見……まさか……? 」
俺のむき出しの肌を見たレイケルは、大きく顔を歪ませる。
俺が引き取りに来た腐色病の者だと気付いたからだろう。
「────くくっ!何だ、ちゃんといたのか。
これで俺は新薬をどんどん生み出す天才医術師として、歴史に名を残す事ができる!
ハハッ!笑いが止まらんな!」
ゲラゲラとそれはそれは嬉しそうに笑うレイケルを見て、俺も嬉しかった。
グランを殺した奴を、もう一度苦しめる事ができるから。
「フフッ。楽しそうだね?俺も楽しくて仕方ないよ。
楽しければ楽しい程……絶望って大きくて深くなるからさ。」
「…………は?恐怖で頭がおかしくなったのか?
恨むなら自分の見てくれを恨むんだな、このバケモノめ。」
クルクルと自分の頭に向かって指を回すレイケルを見て、周りの兵達も大笑い。
そんなレイケル達を見回し、俺はさぁどうしようかな?と考える。
前と同じじゃつまんないよね?でも────……。
俺は、フッ……とグランに言われた言葉を思い出した。
『俺は、悪いヤツは嫌いだし死んだって別に何とも思わねぇけど、良いやつが死んじまうのは嫌なんだ。だから俺は同じ様に消えたいと思っちまった。』
グランの幸せ。
善人が死んでしまえば、グランは幸せになれないらしい。
なるほど……と納得した俺は、笑みを浮かべたまま、後ろに倒れているグランへ視線を向けた。
なら、これから消すのは悪人だけにしよう。
そうしたら優しいグランは幸せ。
消えたいと思わなくなるって事だ。
そのままゆっくりとグランに近づき、優しくその頬を指で撫でる。
「一つになるのも幸せですけど、どうせいつかは『終わり』が来て一つになれるなら…………2つのまま一緒にいる幸せも、存分に味わっておこう。
受け入れてもらえる幸せと快感は、一つになって混ざり合っちゃうと得られないから。
今度はゆっくりゆっくり……少しずつ『中』に入れて貰おうかな?」
「何をごちゃごちゃ言っているんだ。気味が悪い。おい、アイツを生きたまま捕らえよ。
それとあっちに転がっているドブネズミは始末しておけ。
────あぁ、少々遊んでもいいぞ。」
レイケルは鼻で笑いながら周りの兵達に命令を下した。
すると、命じられた兵たちは下卑た笑いを浮かべながら、こちらへ近づいてくる。




