61 グランの死【真実の裏側編】
☆グロやや注意
(サン)
────1000年前。
ガチャガチャと大きな足音を立てながら近づいてくる悪意ある集団と、空っぽになっているハウスの中、今俺がいる場所はグランのへそくりをいつも隠している場所だ。
「…………。」
そしてグラン様の切羽詰まった様子と煩いくらいに聞こえる『声』から大体の事情を知り、ハァ……とため息をつく。
俺を売って逃げたのか……あのヒュードとかいう男は。
それを知って最初に思ったのは、目的は俺だからグランは助かるだろうという事。
そしてそれと同時に湧き上がるのは、今まで幸せだったという喜びの感情と『ありがとう』という感謝の気持ちだった。
それを感じながら、隷属魔法のせいで動きが鈍っている身体のまま笑みを溢す。
自分の命一つでグラン様が助かるなら嬉しい。
建物に残される時、そんな想いを持ちながら、俺は幸せだった思い出と共に最後を待ったのだが────……俺は一つ大きな思い違いをしてしまった。
心の『声』が聞こえなくても、一つしか答えは選べないと思ったから……自分の幸せな思い出を思い出す事を優先してしまったのだ。
だって自分の命を犠牲にしてまで、俺を助けようなんて誰が考えると思うのか?
寿命もいくばくかもない、こんな俺のために……。
でも、俺の代わりにグランは死んだ。
跡形もなく。
「グラン様……?」
隷属魔法の抵抗が弱まっていくのと同時に、グランの反応が徐々に弱くなり……そして消えたのを察知し血の気がひいた。
────ドキン……。
────────ドキン……ドキン……。
心臓の音が耳に響く中、俺は隷属魔法を完全に破り、隠されていた場所から直ぐに飛び出す。
嘘だ……。
嘘だ……嘘だ……。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!
「 ────グラン様っ!!!!」
直ぐにいくつもの反応が集まっている場所へ走って走って……たどり着いた先に見えたのは────真っ黒に燃やされ灰になってしまったグランの姿と、それを笑いながら見ている知らない者達の姿であった。
「 ん?お前……腐色病の……?
────ククッ、な〜んだ!やっぱりここに残されていたのか!それは手間が省けて良かった。」
一番楽しそうに笑っていた偉そうな男は、俺を見て目を輝かす。
そして────俺にはその男の心の声が聞こえた。
『ドブネズミめ、嘘つきやがって。もっと苦しめて殺してやれば良かった!!』
『だがコレで今試したい新薬の実験が全部できるぞ!
最近騎士団の監視が強くなって実験体の調達が制限されてたからな。
────クソがっ。医術の貢献をしようとしている俺を理解しない無能集団め!!』
『俺は歴史に名を残す偉大な男になる!
こいつを使って新薬をどんどん発明して────金、地位、名誉!!全てを手に入れてやる!このレイケル様がな!!』
強く頭の中に入ってくる欲望だらけの汚らしい言葉の数々に、ガンガンと頭が痛くなる。
しかしそんな事は全く気にする事ができないくらい、俺は目の前でサラサラと黒い灰になって消えていくグランの体に大きな衝撃を受けていた。
「 あ、あ、う、あああ……あ………。
う……あぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁ────────!!!!!!!」
まるで獣の様な声をあげて駆け出し、まだ残っている灰を必死にかき集める。
「グラン!!グラン!!グラン!!!」
そんな必死に泣き叫ぶ俺の姿は楽しいモノだったのだろう。
レイケルと周りの兵たちからは愉快と快楽の感情が伝わってくる。
そしてそんな俺に向かってレイケルは笑い混じりに言った。
「さっきのドブネズミみたいな男は、実に情けない男だったな。
殴られてもぺこぺこと頭を下げて、プライドのカケラもない。
私だったら頭を下げるくらいだったら自害を選ぶがな。」
そう言ってアハハッ!!と大笑いするレイケルだったが……俺が顔を上げないままグランの消えてしまった土の上を撫で続けている事に腹を立てたのか、剣を静かにぬく。
「チッ!この醜い化け物が。このゆくゆく歴史に残るであろう大貴族のレイケル様を無視するとは……。
これは調教が必要だな。
腐色病のやつらは、文献によると切っても燃やしても死なないらしいが……どれ、ここで少し試してやろう。
とりあえず手足を切って────……えっ?」
レイケルは剣を持った手を軽くあげて、自身の光り輝く剣を見ようとしたのだが、それを見る事は叶わなかった。
剣を持っていたはずの手が地面に落ちていたから。
「ぎ、ぎゃあああああぁぁぁぁぁ────!!!!!!!」
……プシャっ────!!!
忘れていた様に突然、勢いよく吹き出る血に悲鳴をあげたレイケルは、直ぐに自分のスキルで止血をしたらしい。
斬られた腕の断面をグッとにぎり、血は止まった様だ。
「き、き、き、貴様ぁぁぁぁぉ────!!!一体何をしたぁぁぁぁぁぁぁ!! 」
大声で怒鳴るレイケルの怒気に我に帰った兵達は、一斉に剣を抜き、いつの間にかレイケルの剣を持って立っている俺を睨みつける。
しかし一人だけズテン!と後ろにひっくり返ってしまった兵がいたため、周りの兵たちはどうしたのかと、直ぐに仰向けに倒れてキョトンとしている兵を見た。
すると────……。
「……あ、あれ……??……なぁ、なんで俺、両足ねぇ……の……??」
ガタガタと震えながら、ひっくり返っていた男が周りにいる兵に尋ねると、そいつは自分の失くなっている足へ手を伸ばし……突然大きな悲鳴をあげた。
「い、いてぇぇぇぇぇよぉぉぉぉ!!!!あ、足、俺の足ぃぃぃぃぃぃ────俺の足がァァぁ゙ァァァ────!!!」
ギャーギャーと泣き出す兵の男を見た後、全員が俺の方を見たが……あまりにも遅すぎて欠伸がでそうだ。
レイケルが馬鹿みたいにベラベラ喋っている間にその手に持つ剣を奪い、レイケルの手も煩く騒ぐ兵の足も斬ってやったのに、今頃気付いたの……?
驚愕と恐怖の表情が顔に浮かび始めた他の兵達が、攻撃を開始するその前に────今度はその横を通りながら、全員の足を切ってやった。
「う、う、うぅ────ああああぁぁぁぁぁ!!!」
「ひ、ひぃひ、ひ、いてぇぇぇぇっ、いてぇよおぉぉぉぉ!!!」
すると、真っ赤な絨毯を敷いた様に血だらけに染まった地に立っているのは、レイケルと俺だけに。
汚らしい血がついた剣を、ピッ!と振ってその血を飛ばすと、ゆっくりとレイケルへ視線を向けた。




