60 遠い空の先へ
「────っ!!そ、そうそう!!そいつ!!もしかして会ったのかっ!?」
慌ててサンの両肩を掴んで揺すると、サンはやはり不思議そうな顔をしてコクリと頷く。
「は、はい……。グラン様が突然俺を閉じ込めてきたので、何かと思って慌てて外に出たのですが……その後直ぐに家を知らない男が尋ねてきて、自分をレイケルだと名乗ってました。
その後、そいつは何だか険しい顔をしながら、『ここのリーダーはどこだ!』って聞いてきて……。
正直に分からないと言うと、邪魔だから消えろと言われたので、こうしてグラン様を探しに来たんです。
そのまま大人数で家の中を物色し始めたみたいなので、ヒュードが何かヘマをやって狙われているのだろうなと思ってました。」
「……そ、そうか……。」
とりあえずサンが無事な事に、安堵の息を漏らした。
もしかしてあの後、ヒュードを探す方が先決だと直ぐに向かったのだろうか??
少々腑に落ちないが、サンの話を聞くとそれで正解な様なので、俺は安心して全身から力が一気に抜けてしまった。
そして……姿は同じだが、神王とは違い穏やかな様子のサンを見てポロポロと涙が溢れる。
サンはギョッ!と驚いた顔で固まってしまったが、俺はそのままサンの身体をもう一度抱きしめた。
俺もサンも生きている!
これ以上に嬉しい事はない!
ボロボロ泣き止まないどうしようもないおっさんを、サンは労る様に背中を擦ってくれて……情けない事に俺はそのままひたすら泣く!泣く!泣く!!
そうして少し落ち着いた頃、そもそも何でサンの外見が変わっているのか?……というより腐色病が治っているのか、それを聞くため、俺はまたサンから顔を離す。
「そういえば、サンはどうして病気が治っているんだ??だってさっきまで普通に肌、腐ってたじゃねぇか。」
「あ、あぁ……。そういえば……。」
サンも今思い出した様にハッ!として自分の手をまじまじと見下ろした。
「グラン様に隠れろと言われた時、何だか体が熱くなって……。
もしかしてその時かもしれません。それから突然、体が軽くなった感じがしましたから……。」
「え……?……いや、何で???狭い所に閉じ込められたから……とか??」
流石にそんな簡単な事で治るとは思わないが、そうとしか考えられない。
む〜ん……と難しい顔でそう言うと、サンはクスクスと嬉しそうに笑った。
「どうでしょうか?分かりませんが……俺はグラン様のお陰だと思ってます。
ほら、以前図書資料室に連れていってもらった時、それに似た内容の絵本があったでしょう?
傲慢な王様が神の怒りに触れて、醜いカエルにされてしまった話。
確か、貧しさに負けない心優しい少年によって、元に戻ったんですよね?」
「あ、あぁ、あったなそんな絵本。
確か、その少年の優しさに触れてなんちゃら〜って話だっけ?
まぁ貧しさに負けずに、真面目に生きてるヤツが幸せになるんだぞ〜っていう嘘っこ話だけどな。」
悪いヤツ程得をするこの世の中を思えば、チィっ!!と思わず舌打ちをしてしまったが、サンは笑顔で首を横に振る。
「いいえ。きっとそれはこの世の真実になりますよ。
グラン様は真面目で優しくて、人の世の醜さの全てに負けずに生きてきました。
だからこれから沢山の幸せの中で生きる事ができるでしょう。
そして元に戻った王様は……その心優しき少年に感謝を捧げ、一緒に幸せになりますよ。
今度は間違えずに。」
「────んん〜??……あ〜、絵本の最後の事か?
確かに最後は、そうなったかもな!」
絵本は確か王様がカエルから戻ってハッピーエンドだったはず。
だからそれからの事は書いてなかったが……サンがその後の幸せなストーリーを考えて言っているなら、きっとサンが人生に対して前向きになっているという事だろう。
俺は死ななかったから、サンは1000年後の神王と同じにはならない。
それに病気もどういう理由かはサッパリだが、治っている。
なら、これから沢山の幸せがサンを待っているという事だ!
「……なぁ、サン。」
どこまで一緒にいられるかは分からない。
サンにはこれから輝く様な人生があって、色々な願いも夢も生まれていくはずだから。
それが見つかれば、俺達の道はきっと別れてしまうだろうが……それはそれで誰でもそうだから仕方ない。
なんだっていいさ。
サンがサンらしく幸せになれる人生なら。
俺はサンの名前を読んでニコッと笑顔を見せた。
「とりあえず、これから一緒に空の先に行ってみないか?
自由ってヤツを堪能してみようぜ!」
そう言うと、サンは幸せで仕方ない!と言わんばかりの笑顔を見せてくれる。
キレイなその笑顔に思わず見惚れていると、サンは俺に抱きついてきて、そのまま絡みつく様に腕を俺の背中に回した。
「……それがグラン様の幸せなら喜んで。
これから沢山幸せになりましょうね、グラン様。
────〜〜〜……。 」
最後にサンが言った言葉はよく聞こえなかったが、美しく晴れた空を見上げ、俺も嬉しくて笑顔になる。
そして、そんな美しい空の先へ……遠く離れた空へと視線を向けようとしたのだが、サンは片手だけ離し、優しい手つきで俺の両目を隠した。




