52 絶体絶命
「ここに務めている全員が<聖天人>なんですか?それってどうやって決まるんです?
実は俺ぇ〜生まれも育ちも森に近い田舎街なので、色々知らないんですよね〜。
ほら、知らないと神王様に失礼かなと思いまして〜。
皆様はなんてったって神王様の元で働く選ばれし者達!……なんですもんね〜?
ですので色々教えていただきたいな〜と思ったのですが……。」
チクチクチクチク!!
プライドの高そうな性格を突く形で話しかければ、何人かはピクピクと反応し、物申したい様子で俺を睨む。
あと一押し!と言わんばかりに、ヨヨヨ〜……!とわざとらしく嘆く。
「よって、残念ながら神王様の物凄い伝説の様な話もそこまで詳しく知らないのです!
ですのでぇ〜神王様の偉大さをもっと知れば、俺ごときが近くにいてはいけないと思うでしょうねぇ〜……。」
「……ハァ……。これだから汚らしい貧民は。同じ空間にいるだけで、奇跡だと思いなさい。」
侍女の一人が我慢できない!と言わんばかりに殺気立って言うと、次々と他の侍女たちや執事達も文句を言い始めた。
「この世界を治めし唯一の王として、是非沢山の神の子を地に降臨させて頂くため、こうして我々汚れし『人』は、生まれて直ぐから死ぬほど努力しているのですよ。
それなのに何故貴様の様な、知性も教養もない、ましてや子も成すこともできないドブネズミが……。」
「身分、教養、マナー……全てにおいて認められた一部の人間だけが、1000年前から神王様の元に仕えるのを許されているの。
つまり貴方の様な人は……どうすればいいか分かるでしょ?
恥じて消えなさいよ、薄汚い野良犬。」
……うん、しゅごい!
言葉が武器になったら、俺は今頃めった刺し!
もう笑うしかない暴言の嵐と、神王が如何に凄い人かトークに笑うしかない。
しかし、やはり会話の内容からして、神王の元で働けるのは一握りの聖天人だけで、それが1000年前から続いているようだ。
やはり俺が死んでしまった後、何かキーになる様な事があったのは間違いない。
ニヤッと心の中でほくそ笑みながら、会話を続ける。
「神王様はそんなに凄い人だったのですかぁ〜!これは益々収縮しちゃいます〜。
そういえば神王様は1000年前に誕生された様ですが……元々高貴な生まれのお方だったのですか?
歴史についての勉強もまともにしていなくて知らないんですぅ〜。」
「ふん、能無しのクズが。
神王様は、当時の王族や貴族と呼ばれる愚かな祖先共を纏めて断罪したそうだ。
傲慢で、かつ地を汚す不浄なモノを纏めて掃除してくださったのだ。
我々は温情で残して頂いたに過ぎない。」
「な、なるほど!王族と貴族はそんな酷い者達だったのですか〜。 」
いや、今のお前らと変わらないと思うぞ……???
まだ少ししか聖天人というモノを知らないが、正直貴族との違いが分からない程そっくりであるため、心の中で思わず突っ込んでしまった。
結局権力を手にした人間が選民思考を持つのは、人間の当たり前の性なのかもな〜……なんちゃって!
ハハハ……と乾いた笑いを漏らしながら、とりあえず神王は王族や貴族の身分ではなかったっぽい事が分かったので、そこから話を広げていく。
「一体どの様な事をして、神王様の裁きが下ったんでしょう……。あのお優しい神王様の怒りを買うなど、相当な悪さをしたんでしょうね!」
「そりゃあ、そうさ。『男』が神王様の怒りを買い、そのまま『人』はあと僅かで全滅まで行ったんだ。
貴族と呼ばれる身分の『男』だったらしいが……本当に馬鹿で愚かな『男』だ。
世界を滅ぼしかけた大罪人め。」
大きく顔を歪めながら、執事の一人が吐き捨てた。
『男』とは、多分レイケルのことだろうか?
やはりレイケルが何かしらの悪いことをして、今の神王が誕生した事は間違いない。
「一体どんな大罪を犯したのですか?レイケルは。」
そう言った瞬間────空気が凍った。
青ざめて後退りを始める執事と侍女達を見て巨大なハテナが浮かんだが、突然頭の中に警戒音がガンガンと響き、頭を抑える。
《警告!!警告!!危険レベル計測不能!!命の危機が迫っています!!回避────不可能!!》
「は、はぁぁぁぁぁ??!!! 」
サッパリ意味がわからず、後退りした瞬間、背中に何か固いものが当たる。
あ、あれ??壁まで遠いのに……?
違和感を感じた直後、その固いモノから声が聞こえた。
「…………何でその名前を知ってるの?」
後ろから聞こえた底冷えする様な声に体は固まり、思わずその場にへたり込む。
「……っう……うぁ……。」
そして汗をポタポタ掻きながらゆっくりと振り返れば────無感情で俺を見下ろす神王がいて、喉が鳴った。
感じるのは本気の怒り。
今までに感じた事のない、凄まじい怒りだ。
そんな激しい怒りを奥に宿した無感情の瞳で睨まれ、すぐそこに迫った『死』に、体は馬鹿みたいにガタガタと震えた。
「……あ、そ…………き……のう、見つけた本……に、書いてありま……した。」
息も絶え絶えにそういうと、神王は視線を俺から部屋の中へ移し、ベットの上にある本を見つける。
そしてゆっくりその本へちかづいていくと、ページをペラペラと捲った。
「……こんな本がまだ存在してたのか。歴史書じゃなかったから油断してたな。」
神王は一瞬でその本を燃やし尽くし、まるで最初からそんな本など存在してなかった様に消して俺を睨みつける。
「────で、何を聞きたいの?クーラは。そいつの過去?性格?」
「いえ!!全く!一ミリたりとも知りたくはありません!そんな人体実験が大好きなサディスト野郎なんて────……っ。」
「……なんでそれを知ってるの?」




