46 やれる事は一つ
(グラン)
────パチン!
もう下僕ではないのに、条件反射の様に朝日が昇る時間に目が覚める。
悲しい……。
骨まで染みた下僕の習慣にグスンと鼻を鳴らしながら上体を起こすと、昨日の情けない格好のままの姿を見て更に泣きそうになった。
「全裸じゃないだけマシ……。全裸じゃないだけ……。」
自分を慰めながら部屋を見渡すと、今まで見た事ないくらい高そうな家具の数々が目に入り、絶対触るのは止めようと決意する。
そしてこんな部屋に俺を置き去りにした神王の事を考えた。
「ここってあいつの部屋なんじゃ?
────って事は、俺はあいつの部屋を奪った強盗……?」
一気に近づいてきた死亡フラグにヒヤッと嫌な汗が背中を伝う。
いや、そもそも全てが不敬罪に値して、今日処刑される可能性も……。
「じょ、冗談じゃねぇぞ!こんな事で死んでたまるか!」
どうしよう?どうしよう!!?
透明になって地上に……いや、こんな空の上からどうやって……?
焦った俺は、すぐにスキルを発動し雀の人を召喚した。
雀の人は出てすぐ、ビクビク!!!と肩を震わせ動揺した様子を見せる。
《……お、おはようございます。》
「はい、おはようさん!
雀の人、俺実は神王に攫われてさ、どうやったら逃げられる?
昨日の夜、突然ご乱心して服を破かれちまって……最後は怒って?出て行っちゃったんだよ。
このままだととにかくヤバいから、どうにか逃げる方法はないかなって……。」
雀の人の動揺なんのそので、俺は縋る様に質問した。
すると雀の人はブルブルガタガタと尋常じゃないくらい震えだす。
《……逃げられません。……っつーか、死ぬ気で機嫌とれよ、クソ〜!》
「────えっ??何だって??」
ボソボソ……と最後は何を言っているのか分からず、聞き返すと、雀の人は一瞬黙った後、淡々と喋り始めた。
《逃げる事は不可能です。
神王の能力の中には、気配察知(∞)がありますので……。
ですので、別の方法を考える方が良いと思われます。》
「そ、そんな……。じゃ、じゃあ俺は一体どうすれば……。」
ガクッと崩れ落ち、床を伏せたまま質問すると、雀の人はあっさりそれに答える。
《とりあえず一緒にいれば大丈夫かと……。
世界の命運はそれに掛かっているので、是非っ!!頑張ってください!!》
「一緒にって……。無理だろう、あいつめちゃくちゃヤバいヤツだぞ?言っている事意味不明だし……。
俺の服だってこんなにビリビリにしてきたし……。
────あ、もしかして話相手になれってか?あいつ友達とか絶対いなさそうだもんな。
だってどんなに悪いヤツだからって、人を溶かしたり虫に食わせたりするヤツだぞ?怖すぎて無理だ。」
笑いながら言うと、雀の人からチィィィッ!!!!と物凄い大きな舌打ち??の様な音がした。
「……えっ?今、舌打ちした……??」
《……こんの役立たずのクソネズミ男ォォォ〜っ!(ボソボソ……。)
────ゴッホん!!
あ〜……その……そうそう。まずは話し相手になって差し上げるのがいいかと……。
あと大事なのは、神王の言う事は全て聞く事と何やらゴチャゴチャしてきたら……とりあえず服を脱いでおけば、いつか終わると思うので大人しくしておくといいでしょう。
身体は丈夫そうだから、大丈夫だと思います。
精神もクソみたいに強そうなので、いざとなっても問題なしだと判断しました。
とりあえずいつも通りで。それが最も大事な事です。》
「?????は、はぁ……。」
雀の人までよく分からない事をいい始めて混乱してしまったが、俺は直ぐに閃いた!
あ〜……なるほどね!
いつもみたいに媚を売りまくって売りまくって、下僕として頑張れって事か……。
今までの人生を振り返り、記憶の中にある今や懐かしくもなってきたジュードの事を思い出し、フッ……と不敵に笑う。
「分かった!とりあえず、逃げられないなら仕方がない。
どんなに意味不明だとしても、俺は最高の下僕になって……自由を手にしてみせる!」
《……頑張って下さい。》
そのまま雀の人が写っていたスクリーンは消え、部屋の中はシーン……と静まり帰る。
とりあえずやれる事は一つだけ。
俺はそのままその場に立つと、手を後ろに組み休めのポーズを維持。
ひたすら神王がくるのを待った。
するとしばらくして────コツコツという足音が聞こえ、ドアの前で止まると、扉が大きく開かれる。
入ってきたのは神王様で、神々しいまでの美しい顔……なのに眉間には大きなシワがあった。
それを見た俺はすかさず走り寄り……そのままズサァァァっ!!と滑り込む様に土下座をする。
「昨日はお見苦しい所を、大変申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!!
俺の特技は雑用全般ですので、どうかどうか俺に仕事を下さいませぇぇぇ!!!何でもしますんで!!
あ、靴磨きなども得意ですので、お靴磨きをしましょうか!
鏡の様にピカピカにしてご覧になりましょう!!」
とにかく自分が役に立つというアピール!
雑用全般、戦闘以外はなんでもできる。
どうにかそれに有用性を見出しえくれれば生き残れ────。
「必要ない。」
────ズバッ!と切り捨てられてしまったが、俺は決して諦めない。
直ぐにドアの前に自分のビリビリになってしまった唯一の上着であるズボンを取って床に敷く。
「どうぞ、床は冷えますのでこの上をお通り下さい。神王様の道の一つになれたら幸いです。」
キラキラと尊敬の眼差しを向けてそう言ったのに、神王はピクリとも動かない。
────クソっ!反応がねぇと媚び売り計画が立て辛い!
チラッと扉の外を見れば、死ぬほど蔑み睨んでくる騎士たちの姿が……。
情けないのも、痛々しいのも分かっているから大丈夫!
笑いたければ笑うといい!
笑い上等と言わんばかりに睨み返すと、突然両肩を掴まれ無理やり立たされる。
「……?!」
そしてそのままクルリと回せれると、目の前には無表情の神王様の顔。
真っ赤な目で見つめられて、ドキドキと胸が跳ねる。
────死への恐怖で。




