40 嘘だろう
『こんな美味しいモノがご飯の中に隠されていたとは……。
────うん、美味しいです。』
旨さに耐えながら一生懸命に、それを探す様はとても微笑ましいモノであった。
サン……。
思わずグスンっ……と鼻を啜り、目を開けると次の瞬間、突然────ガっ!!と首を掴まれる。
「────っ!!!!??」
息が詰まりうめき声を上げると、目の前には険しい顔をした神王様がいて、俺は神王に片手で首を絞められている事に気づいた。
更にそのまま身体を持ち上げられて、宙ぶらりんにされると苦しさは倍増し、ジタバタと足を動かす。
「なんなんだよ……お前は……ふざけたことしやがって……。
外見だけだと思ったのに…………そんな事……。
────あぁ、まさかお前、アイツらが作った人形か何かか?
俺を満足させて、どうにか自分たちを助けて貰おうって事か。」
アイツら??
自分達を助けて貰う??
サッパリわからない事を伝えたいが、向けられた怒りに対する恐怖と、首を掴まれている物理的な痛みと苦しさのせいで声が出ない。
周りに控えている執事と侍女達も震えていて、助けは望めない事は間違いなさそうだ。
「く……苦し……っ……!」
とりあえずパクパクと口を開け閉めしていると、散々怒鳴り散らした後、突然神王はストン……と表情を失くし、俺の首から手を離した。
そしてゾッとする程冷たい目を俺に向ける。
「……ふ〜ん。まぁ、悪くないか。────だったら楽しもうかな?
せっかく俺のために作ってくれたおもちゃだ。どこまで楽しめるか……楽しみ。」
神王は、ゲホゲホと咳き込んでいる俺の襟首を掴むと、無理やり立たせた。
そしてその後は二の腕を掴み、乱暴に引っ張って部屋を出ていく。
「あ、あの!俺の食べ方汚かったから怒ってるんですよね?!
も、申し訳ありませんでした────!!!土下座でもなんでもするんで……あの……許して下さいっ!!」
ヒィヒィと悲鳴を上げながら謝ったが、神王は口の端を大きく上に上げた。
「あ〜……本当にそっくり。こんなにソックリに作ってくれるなんて……最高だ。」
「つ、作る……??お、俺は普通の人間で────……。」
先程から俺を人形?みたいな言い方をしているが、本当に何の事か分からない。
確かに時を超えた時点で普通ではないかもしれないが……少なくとも、神王の言っている事には当てはまらない様な気がする。
どうにか説得をしようとしたが、それも虚しく何処ぞやの部屋に入れられると、そのまま奥に置いてある巨大なベッドの上に放り込まれた。
「……!!うわっ!!」
ポヨンっ!と信じられないくらい柔らかい感触に驚く暇もなく、そのままベッドの上で神王に押さえつけられ身動きがとれなくなる。
「……あ、あの……。」
ゾッとする程冷たい瞳で見下され、体格差もかなりあるため相当なプレッシャーを感じてしまい思わず震えた。
しかもどういうつもりか本気で分からず、それが本当に怖くて、それ以上言葉が出てこない。
青ざめた顔で神王の目を見つめる俺を見て、神王は初めて笑顔を見せた。
その顔が何というか……本当に嬉しそうで、一瞬戸惑ってしまう。
「…………?」
大人しくなった俺を見て、神王は押さえつけた手をゆっくり外し……なんと上半身を包むシャツを破く勢いで全て脱がした。
「……へっ?……あ、ううん??」
これには驚き目を見開くが、神王は気にする事なくそのままズボンにも手を掛けてきたため、必死に身体を捩りズボンを上げようと上に引っ張る。
「────なぁぁぁぁぁ!!!??ちょっ……!!??……あのっ!!俺、こう見えて……じゃなくて!!見間違いがないほど、男なんです!!
しかもおっさんなんですっ!!!あのっ!!その……っ!!!」
「…………。」
俺が涙目になりながら必死に叫ぶと、神王の表情が突然崩れて、頬に赤が差す。
そしてハァハァと息が上がっていき、必死に死守していた俺のズボンをあっさり破ってしまった。
丸裸にされ、目の前には明らかに興奮している様子を見せる神王がいる。
……えっ……う、うそだろう……?この人、俺相手に……???
戸惑いながらも、どこかこれは冗談や虐めの一環だろうとも思っていた。
だって俺、男だし、おじさんだし……。
正直少年時代に飢えに負けて男娼館の扉を叩いた時だって、『そのみすぼらしい外見じゃ無理』って言われて追い出されたくらいだったから。
しかし……先ほどまで何も写っていなかった目の奥にある情欲の様なモノを見つけて、今まで味わったことのない恐怖を感じた。
「……っう……うぅ。」
カタカタと歯を鳴らし、必死に湧き上がる恐怖と闘いながら、まだ頭の中では『 嘘だ。』『冗談に決まってる。』と思っていたのだが……神王がグッ!と下半身を密着させてきた時、冗談じゃないんだと思い知った。
『自分が性の対象にされている。』
その現実は、俺にとんでもない衝撃と恐怖と……そして生理的な嫌悪感と屈辱を与えた。
『あぁ、もう一欠片も残ってないと思っていたプライドみたいなモノが、自分にもあったのか……。』
ボンヤリとそんな事を思いながら、嫌だと思う心のままジタバタと逃げようとした。
しかし、突然嫌がり身を捩らせる俺にムッとしたのか、神王は俺の頬を殴りつけ、殺気まじりの目で俺を見下ろす。
「俺のために作られたくせに、何で嫌がる仕草をするの?ほら、嬉しそうに笑えよ。
『抱いて下さい。』『嬉しい。』って言ってさ、イヤらしく誘って喜ばせてよ。偽物人形。」
目を見開き、呆然と見上げてくる俺に更にイラついたのか、神王は反対の頬も殴りつけてきた。
そのせいで口の中が切れて血が出たが、こんなのは慣れっこだから問題ない。
だけど、神王の欲望を感じる目と荒くなっていく息が心底恐ろしかった。




