37 神王
《献上金を神王に捧げた後は、全員揃って神王が見えなくなるまで祈りを捧げます。
それが終われば、一ヶ月は普通の暮らしが手に入るでしょう。
勿論来月分の命を貰うため、新たにお金を貯める必要はありますが……。》
昨日の夜に最終確認として雀の人に今日の事について詳しく聞いておく事にしたのだが、とにかく何の質問をしたら危険信号になるのかが分からない。
そのため、結局今の今までぶっこんだ質問はできずにいた。
これなら大丈夫だろうと、献上する際の手順みたいな事を聞いてみたら、これはOK。
ならば……と少々突っ込んだところまで聞いてみる事に。
「そういえば、神王様ってどこに住んでいるんだ?1000年前の王様と同じ様に、王都のお城とか?」
質問して直ぐに頭の中に警戒音が鳴らないか、ドキドキしながら様子を見たが、その気配はなし。
どうやらこれも聞いても問題ない質問だった様だ。
雀の人は淡々とその質問に答えてくれた。
《現在神王は、1000年前に王都にあったお城の遥か上空に存在する『天庭』で暮らしています。
そしてそんな神王を守る事を使命と考えている聖華騎士団は『天庭』の真下にあるお城に配備され、そこを中心に聖天人の中でもトップ層の者達が暮らしていますね。》
「へぇ〜。城を中心にトップ層が住んでるのは1000年前から変わらないな。
だけど、天空に浮かぶ家ね……。マジで神様みたいじゃねぇか。」
《……神と呼ばれるモノの定義は様々ですから、答えるのが難しいですが……。
もしも世界を意のままに変える事のできる人物を『神』と呼ぶなら……1000年前にいたこの世界の『神』は死にました。》
「はっ???それってどういう……。」
ビービーッ!!!!
警告の様な音が頭の中に響き、直ぐに会話を終了させて眠ることにしたのだが、そこで俺はある重要な事にハッと気づいてしまった。
『神』は死にました。
じゃあ……それを殺したのは……?
「────次っ!!!さっさとステージの上に上がり、跪けっ!!」
ボンヤリと考え事をしていると、騎士の一人がギロッ!とこちらを睨みながら怒鳴りつけてきたので、俺は慌てて祭壇から自分の献上金を受け取りステージの上に上がる。
そうして神王様にほど近い場所に来た事で、今更ながらに先ほどの恐ろしい映像が強く頭にフラッシュバックし────何度も足が止まりそうになった。
ドキン……ドキン……。
恐怖に心臓が早打ちを始め、俺は視線を常に下へ向け、横並びになった後は献上金を前に出し、跪く。
『キッチリ10秒くらい跪くべし。』
雀の人がそう言ってた。
目を瞑っていたため、太鼓の様な自分の心臓だけが聞こえる中、そろそろか……?と目をゆっくり開けたその時……目の前には誰かの足が。
どうやら俺の真ん前に誰かが立っているらしく、何かしくじったかっ!!?と焦りながら、ゆっくりと視線を上に向けていくと…………。
そこにいたのは俺を見下ろす神王様であった。
「────〜〜〜〜………っ!!!???」
上がりそうになる悲鳴を必死に堪えるため、献上金から手を離し、口元を抑えて物理的に口を閉める。
すると、俺が持っていた金がチャリチャリ〜ン!と地面に落ちる音が響いたが、それを気に掛ける余裕は俺にはない。
な、な、なんで???
何で目の前に神王が……???!!
パニックになりながら神王を見つめていると、神王は先ほどまでの無表情ではなく目を大きく見開いていて、周りにいる騎士達も驚いて言葉が出ない様子だ。
「……あ、あの……申し訳……?」
「────名は?」
とりあえず謝らなきゃ溶かされる!!と思い、震えながら謝罪を口にしようとしたのだが、それを遮る形で神王が質問をしてきた。
それにギクッ!と体を大きく震わせたが、慌ててそれに答える。
「グ……クーラと申します。」
ついグランと言いそうになったが、言い直してその場で土下座したが、神王様から何の返答もない。
俺の手、溶けてないよな……?
土下座をしたまま心配で自分の手を見下ろしていると、突然腕を掴まれ、無理やり立たされた。
「……っ??!────い……っ!」
それが結構な力だったので、痛みに顔を僅かに歪めたが、神王は気にすることなく俺の顔を覗き込む。
そして、腕を掴んでいない方の手で俺の顎を鷲掴むと、そのまま穴が開きそうな程見つめてきた。
すぐ目の前にある見たことのないくらいの美しい顔と、圧倒的な強者独特のオーラに完全にビビリ、今にもちびりそう!
神王は恐怖で震える俺を静かに見下ろし、僅かに口端を上げた。
「お前……似てるな。そっくりだ。まるであの頃のままの…………。」
「にっ、似てる……?」
まさかドブネズミとかタヌキに似ているとかじゃあるまいな?
歴代自分に似ていると呼ばれてきた動物の事を思い出して、ズン……と気分は沈んだが、もしかして神王の好きなタイプのモノならワンチャンある!
わずかな生存ルートに賭けて、ごくりと唾を飲み込むと、神王様はそのまま思わず拝みたくなる様な綺麗な笑みを浮かべて言った。
「俺を地獄に落とした人に。」
────終わった……。俺の人生はここで終了……。
どうやら恨んでいる人物に俺はそっくりらしく、俺は自分の最後を悟る。
せめてドロドロに溶かして大地に帰して欲しい。
虫に食べられるのは、復讐された気分になって多分最悪な気分になるから。
サンに料理を教える際、それはそれは偉そうに、羽虫の絶品唐揚げについて教えてあげた過去が頭を過ぎり後悔に泣く。
目を閉じ終わりを待ったが……中々来ないので、チラッと片目を開けると、そこには悲しそうに微笑む神王の顔があった。
「???」
その顔が、どうしても恨んでいるモノとは程遠くて首を傾げたが、横からオズオズと話しかけてくる騎士の存在により思考は中断される。




