35 事件発生
────ズズズズズ…………。
何かを引きちぎる様な音と共に、真っ暗な闇の中から最後に姿を現したのは、今まで見たことがないくらい美しい青年だった。
闇を祓うイメージを与える、混じり色が一切ない真っ白な髪に、白い肌。
凹凸のはっきりした顔立ちに、高く通った鼻筋、ぱっちりした目には長いまつ毛がバッサリ生えている。
顔立ちだけ見れば、脆弱なスーパー美青年のイメージが湧くのかもしれないが、ところがどっこい。
身長はかなり高く、2m近くあるかもしれない。
しかもヒョロッとしてなくて、見事な金細工が施された軍服の様な服の下には、しっかりとした分厚い筋肉がついている様に見えた。
正面で殴り合いの喧嘩をすれば一発KO……いや、息を掛けられただけで即死するかも!
そんな恐怖を抱く程、立派な体格をしている。
その完璧な美は、青年を酷く神聖なモノに見せ、人々が思い描く完璧な存在……要は『神』を連想させる存在に見えた。
「…………。」
言葉もなくその美しい存在に圧倒されていると、周りに並ぶ騎士たちが、笑顔のまま涙をダラダラと流し始めた。
「我らが神、神王様!!此度も、こんな汚れた存在である我らに生きる事を許して下さる!!」
「それに感謝し、感謝の心を神王に捧げよ!」
そう言い放った瞬間、人々は我先にとステージに向かい、長い長い列を作る。
えっ!!並ぶの!?
慌てて俺も人の流れに乗って並び、最後尾に近い位置に並ぶと、更に小さくなってしまったステージを見て、目を細めた。
「な、なるほど……。一人一人前もって集めたあの金の山から自分の金をとって、直接渡すんだ。受け取る神王様も楽じゃねぇな。
一体何人いるんだよ……。」
ズラッ〜と並ぶ人々の多さにため息をついたが、神王様は立ち続ける俺達と違い、やたら豪勢な黄金の椅子に座って興味なさそうに跪く人々を見下ろしている。
いや、興味ないなら周りの騎士たちにお金集めされて帰ればいいじゃ〜ん。
当分回って来ないだろう順番に、先程の緊張は鳴りを潜め、俺はボンヤリと周囲を見回したのだが……とんでもない人物達を見つけてしまい、ギョッ!と目を見張る。
俺よりだいぶ前の方にいる冒険者らしい格好をしている男たち。
なんと以前、『神王は人形なのでは?』と言い放ち、更に壊してやろうと企んでいた奴らだった。
「うわっ!アイツら前に見た嫌な奴らじゃねぇか!……マジでやるつもりか?」
神王を実際に見た今、アレは絶対にヤバいヤツだと分かったため、やめた方が良いと思ったが……何もしてない現時点でそれを言うわけにもいかず、大きく肩を竦める。
正直、こいつらが失敗して死んじまっても自業自得だし。
あれから少しだけギルドの方で奴らの話を聞いたが、まだ冒頭なのにお腹一杯という程のクズ野郎共だった。
こういう奴らの面倒くささと、イカれっぷりは死ななきゃ治らない事を知っているので、口は出さないつもりだ。
ま、せいぜい頑張れよ〜。
へっ!と鼻で笑いながら、心の中で中指を立てておいた。
そうして何時間か過ぎていき、だいぶ神王様が近づいた時────せっかくだからと、その美しい顔をマジマジと観察してみる。
その顔は見れば見るほど美しく、しかし表情が一つも変わらぬ無表情で、人形……と言う表現は確かにピッタリだと思った。
なんだか凍っているみたいだ……。
その美しさも相まって、まるで氷の王子様というイメージが湧いたが、瞳の色だけは燃えるような赤色をしている事に気づく。
瞳は赤色なのか……。
その瞳がサンを思い出させてくれて、ジワッとした暖かい気持ちに浸っていると────とうとう事件は起こった。
────────バキッ!!!
突然ステージの前で大きな破壊音がし、ハッ!!としてそちらを見れば、先程の冒険者二人の前にある、献上金が積まれていた祭壇が砕け散っているのが見える。
祭壇を壊したのか?!
冷静に状況判断すると、やはりその通りだった様で、そいつらはピュ〜♬と口笛を吹きながら大笑いし始めた。
「あ〜らら!すみませ〜ん。ちょっ〜と手が滑って壊れちゃいましたぁ〜。どうかお許し下さい、神王様♡」
ザッ!と青ざめる周りの人たちは、直ぐにその男たちから離れるため、こっちに向かって逃げてくる。
俺はそんな奴らを避けながら、ステージの上へ視線を向けると、騎士たちは憤慨した様子で睨みつけ、今にも殺しにかかりそうだったが……神王の命令がなければ動くつもりがない様だ。
休めの体勢のまま動かない。
それを見て、冒険者二人は更に笑い、神王に向かって指を指した。
「それさぁ〜。本当は人間じゃねぇんだろ?
どうせ上の奴らが俺達から金を奪おうとして作った人形なんじゃね〜の〜?
────ふざけんなよ?バカみたいなホラ話を俺達にして、ずっと人類を支配し続けるつもりかよ。
そんなの今日で終わりだわ。ばぁぁぁぁ〜かっ!」
「────なっ!!なんと無礼な……っ!!
神王様に今直ぐ土下座しなさいっ!!いえ、直ぐに自害し首を捧げよ!!この大罪人めっ!!!」
神官が大激怒し弾劾したが、男たちはどこ吹く風。
それどころか剣まで抜いたため、そこら中から悲鳴が上がった。
「お前らだって、こんなクソみたいな茶番劇、いつまで続くんだって思ってんだろう?
これは、上の奴らが金を独占しようと企んでいるだけだ。
そのせいで大事な大事な家族や恋人を失った奴らだっているだろうに、何黙ってんだよ。
だからお前らは全員、底辺なんだっつーの!
一生俺達のためにせいぜい利用される便利な道具でいろよ、チキン野郎ども♡」
煽る様な言葉に、人々の何人かの気配が変わり、それに俺は焦る。




