32 真実の先っぽ?
「神王は……一体何者だ?
そもそも1000年前に生まれたって……俺が死んだ後って事だよな。
それに人々を『帰す』って一体どこに……?」
《それは────。》
雀の人が神王について答えようとしたその時、俺の頭の中にビー!ビー!という警戒音が鳴った。
《────警告!警告!これ以上の詮索をする事で、神王に気づかれます。直ちに中止する事を強く推奨します!》
俺の危険察知が物凄い反応してる!
「雀君、ストップ!スト────ップ!!!やっぱなし!今の質問はなし!!違う質問しまーす!」
《……はい。承知しました。》
ピタリと口を閉じた雀の人に、ホッと胸を撫で下ろし、続けて質問した。
「サンは……サンは、あの後助かったのか……?」
《…………。》
ゴクっと唾を飲み込みながら質問すると、雀の人は一瞬の沈黙の後、ゆっくりと口を開く。
《────はい。助かりました。》
「!!!そ、そうか……っ!!」
感極まって、そのままダラダラと涙を流した。
サンは助かった!
ちゃんとあの後逃げられたって事だ。
俺に幸せをくれたサンを助けられた事。
こんな自分でも生まれた意味があったんだと思って、本当に嬉しいと思った。
でも……。
「……サンはあの後、長くは生きられなかっただろう?
人生の中で幸せだって思える時があったのかな……。」
ゴシゴシと昨日から何度目かになる涙を拭きながら言うと、やはり一瞬の間を置き、雀の人は答えた。
《……いえ、長く生きてます。そして、幸せな時もあった様です。》
「────えっ!!」
驚きの発言に、涙がピタリと止まり、勢いよく顔を上げる。
サンは長生きしたのか!
腐色病だったのに??
「も、もしかして、俺が死んだ後、腐色病の治療法が見つかったのか!」
その可能性に気づき、その場にヘナヘナ〜とへたり込んだ。
「よ、よ、よかった〜!!じゃあ、サンは普通に生きる事ができたんだなぁ……。良かった……良かったよぉぉ〜。」
ダラダラとおじさんの汚いマジ泣きを前に、雀の人は微動だにしない。
それを良いことに、サンのその後の人生が幸せだったらしい事にも感動してワンワンと泣き叫ぶ。
そして、泣きつかれたタイミングで雀の人が突然話し出した。
《『幸せ』とは抽象的なモノで、定義は多視点によって決定が難しいモノです。つまり────……。》
雀の人は一旦言葉を切ってから、そのまま続きを話す。
《自分にとって幸せだろうと思う場面でも、それを幸せであると思わない人もいると言う事です。逆もまた……。》
「??そ、そうだな。うん、うん。幸せなんて人それぞれってヤツだから。」
まさか雀の人に、人の幸せについて語られるとは思わず少々驚いたが────内容的にはその通りだったので、全面的に肯定しておいた。
すると雀の人は、ハァ……と大きなため息をつき、心底困った様に首を振ると、俺の方を睨みつける様に見てくる。
《……もう、勘弁してくれよぉ……。このままじゃ全滅じゃねぇ〜か……。
こんな頭、綿埃みたいなヤツがキーマンとか最悪だ……。
ったく、俺もこのままじゃジ・エンドだよ。怖ぇ〜よぉ〜……。》
「────えっ?何だって??」
雀の人はとても小さい声で呟いたので、聞き取れず聞き返したのだが、雀の人はシャキン!と背筋を伸ばし《何でもありません。》と答えた。
「????あ、そう。……ん?待てよ?って事は、今は腐色病で死ぬ人はいなくなったって事か。
《神罰の証明痕》とか大層なあだ名がついてたけど、人の知恵の勝利ってやつだな。」
ザマァ見ろ!という気持ちで笑ってやったが、雀の人は一瞬沈黙してから話し出す。
《腐色病はその存在自体が消えました。……詳しく言えば、創作者が消されたのです。恐ろしいほどの力で……。》
「えっ、消えた??創作者??どう言う事だ?」
《それは────。》
雀の人が答え掛けたその時、またしても俺の頭の中には、ビービー!!という警戒音が鳴り響く。
《警告!警告!!それ以上腐色病について聞いてしまうと神王に────……。》
「はい!今の質問はなしー!!なしなしなしー!!」
両手を挙げて、大きなバッテンマークを作って雀の人に見せると、雀の人は大きなため息をついて黙った。
とりあえず余計に謎が増えた気がするが、神王様はどうやら察知系の能力を持っているのか、NGワードが多彩らしいので無理はできない。
「頭がこんがらがってきたから後で考えよう……。
なぁ、悪いんだけど、麦ダンコロ虫がいる場所知らないか?依頼を消化しないと飯にありつけないんだ。」
《……はぁ。ここから南西50メートルにある沼地にいます。
────では、さよなら!》
何だか若干不機嫌?になった雀の人は、そのままプレートごと消えてしまった。
「???何怒ってんだ、あの雀〜。変なやつ〜。」
考えても、その理由がサッパリ分からなかったので、まずは本日の依頼消化を優先させるため、南西の方向に向かって走っていった。




