31 雀の人
「……駄目じゃん。『力』なんかあったって……。」
なんでも叶えてくれると思っていた『 力 』 は、結局俺の願いを叶えてはくれない。
二人で逃げたかった。
だから、俺の夢は永久に叶わいという事。
『力』なんてあっても役に立たねぇじゃん!
ずっと万能だと信じていた『力』がゴミの様に感じて、ショックでその場でへたり込んでしまった。
すると─────……。
「おいっ!おっさん!こんな所で何してんだっ!!」
まだ若い青年の声に驚いて顔を上げると、そこには剣を装備した十代後半くらいのツリ目の青年と、同じく十代後半くらいの魔法使いのローブと杖を持った少女と回復士の様な少女がいた。
ポカン……としていると、青年がチッ!と大きな舌打ちをしながら、更に俺を怒鳴りつける。
「ったく〜!こんな所にいたらあぶねぇだろ!モンスターに襲われたらどうすんだ!!」
「あ……あぁ……す、すまん。ありがとう。」
だいぶ怒ってはいるが、どうやら心配してくれているらしい青年にお礼を告げると、青年は、ビシッ!と俺を指差し言った。
「いいか!おっさんみたいな萎びたジジィでも、命を大事にしろよなっ!戦闘はこの俺様の様な天才冒険者に任せろ!分かったなっ!」
言いたい事だけバ────ッ!!と言って、そのまま去っていった少年を見つめていると、魔法使いの少女と回復士の少女は大きなため息をついた。
「ごめんね、おじさん。あいつ、あんなんだけど、悪いヤツじゃないの。」
「……うん。多分おじさんがお父さんとイメージが被っちゃったんだと思う。だいぶ前に『帰った』から……。」
二人の少女は、最後はしんみりしながら俺に手を振って森の奥へ行ってしまう。
まるで嵐の様な出会いに、呆然としていたが、あんなに若い子たちに心配される自分が恥ずかしくなって、ゆっくりと立ち上がった。
「くそ〜。まだ萎びてねぇし!夢が二度と叶わなくても、このまま朽ちて思い出まで奪われてたまるか!くそったれ!」
フンフン!と鼻息荒く叫ぶと、そのまま麦ダンコロ虫を探しに走っていった。
そして途中で透明化すると、キョロキョロと麦コロ虫を探し続けたのだが……どうも見つからない。
「う〜ん……中々見つからないな。昨日は運が良かっただけだったか〜。」
探せど探せど見つからない麦に、焦りながら草の根を掻き分ける。
せっかく気配が透明に出来ても、見つからなければ意味がない。
俺はその場にズコ〜とすっ転び、不貞腐れてしまった。
「もう踏んだり蹴ったりだ!クソ〜。
ヒュードとか他の嫌な奴らだって、自分に恵まれた力を使って毎日楽しく暮らしてたのにさ!俺だけいつも貧乏くじ!」
キィーキィー!とヒステリックに叫びながら、最後に空に向かって大声で叫んだ。
「探せないなら意味ないじゃねぇーか!教えてくれよ!神様のばっかやろー!!」
すると────……。
────ブゥン!!
突然何かが作動する音と共に、巨大なプレートみたいなのが出現した。
「なっ、なんだ!?」
驚いて飛び起き、その浮かんでいるプレートを見つめる。
するとそこには…………雀の様な顔をした人間??が写っていた。
────えっ???か、仮面でもつけてるのか??雀の。
どう見ても雀の顔に、不自然な人間の男性?の体が生えていて、違和感しかない人物の上半身が写っているプレート。
ポカーン……としながらその雀の人を見つめていると、その雀の人は突然軽快に喋りだした。
《私は『渡り人の時空案内人』です。
一定の条件を満たした場合に出現し、渡り人の人生のサポートする事を目的とするスキルですので、何なりとお尋ねください。》
「はぁぁぁぁぁ??!!」
これまたわけのわからない事を言い出した雀の人に、俺は困りながら話し掛けた。
「えっと……良く分からんが、これは俺の出したスキルって事であっているのか?」
《────はい。私の出現条件は、スキル<時渡り(未来)>が発動済みである事。
移動先で一定以上の知的生命体との接触経験値と、それに伴う感情値の上昇。
そして新たな到着地で生きていく覚悟と一定以上の探究心です。
現在その条件を満たしたため、私は発動されました。
この1000年の間の事なら、何でも答える事ができます。》
<渡り人のギフトスキル>
【時渡りの時空案内人】
時を渡った際に、それまでに起こった歴史上の事なら何でもを知ることのできる、スーパー万能知識スキル
「えっ!何でも分かるの?!す、す、凄げぇ〜じゃん!
じゃあ、何でこんな世界になったか?とかも分かるって事か?」
《はい。お答えできます。
今から約1000年前に神王が誕生。それと同時にこの国以外のすべての大陸が消されました。
現在人型生物が住む事が可能なのはこの国だけです。
総人口は5000万人まで。それより増えれば神王によって『帰され』ます 。》
「……えっ?消された??神王に??!そんなバカな!
だって王国にはめちゃくちゃ強い騎士団がいただろう!?それに他国だって、それぞれに戦力を持っていたはずだ。
それを無視して全部消すなんて、そんなこと────……。」
特にセイリーン王国の騎士団は世界一の戦力を持っていると言われていて、少なくとも正面からノコノコやってきた敵など、魔法一発でドドン!と消し去る程の実力があった。
それを全部制圧するなどどう考えても────。
《────可能です。
その結果、当時の総人口は約一割弱まで減少しましたが、神王の気まぐれにより5000万人までの人口なら残ったこの地で暮らすことを許されました。
以降毎月の献上金を支払えばこの地で暮らすことを許されています。》
「う、うそだろう……?」
あんまりにも衝撃的な内容に、呆然としながら立ち尽くす。
この世界は……神王によって滅ぼされかけた世界だったのか!




