表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season3 〜 番外編の番外編 〜  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season3 〜 番外編の番外編 〜
2/2

第2章 灯の話し(柊と凪)

同じカフェ、別の日の午後。

柊と凪は、灯のまなざしと言葉から“支える”ことの本質を受け取ります。

環の過去が、現在の“居場所”へとつながっていく時間です。

平日の午後。

取引先とのミーティングを終えたしゅうなぎは、

少し休もうと例のカフェへ向かった。


ドアを開けると、窓際の席に見覚えのある女性が座っていた。

左手の動きを気遣いながらも、

柔らかく微笑むその姿に、柊は思わず声をかけた。


「すみません……あかりさんですよね?」


女性は一瞬驚いたように目を瞬かせた。

「え?……あら、あなたは……もしかして、たまきちゃんの……」


柊が少し照れくさそうに笑った。

「そうです。先日、環がこのカフェで灯さんとお会いしたことを話してまして。」


灯の目がぱっと明るくなる。

「そうなのね。環ちゃん、本当にステキな女性になっていてね……

 幸せそうで、うれしくて……私、泣いちゃったのよ。」


柊も頷いた。

「そんなこと、話してました。

 灯さんの言葉を、今でもノートに書き留めて見返してるって。」


凪がうれしそうに笑う。

「そうそう、“ぽかぽかノート”って呼んでるんですよ。

 環さん、灯さんの話になるとすごくうれしそうで。」


灯は一瞬、手を口元に当てて目を潤ませた。

「え? あの子……そんなことを……。

 大したことなんて言っていないのにね。

 ……ほんと、いい子ね、環ちゃんは。」


柊が静かに言葉を重ねる。

「灯さんがいてくれたから、今の環がいるんだと思います。」


灯は少し俯いて笑った。

「ふふ……そう言ってもらえると、うれしいわ。

 でも、もう大丈夫ね。あの子には、ちゃんと居場所があるから。」


凪が言う。

「はい。僕たちの中では、環さんがぽかぽかの中心です。」


灯は、涙を拭いながら笑った。

「……そう。あの子、ほんとうに幸せなのね。」


灯はカップを両手で包みながら、

少し遠くを見るように微笑んだ。


「私はね、環ちゃんを助けることができなかったの。

 それだけが、ずっと心に残ってる後悔なのよ。

 でも、この前会った環ちゃんは、もう昔の環ちゃんじゃなかったわ。

 生き生きしてて、幸せがあふれてた。

 あなたたちが、そうしてくれたのね。」


灯は一つ息をして、柊をまっすぐ見て言った。

「環ちゃんの手はしっかり握っててあげてね。離しちゃダメよ。

 あの子、やさしくて強く見えるけど本当はとっても繊細な子なの。誰かの支えがないと崩れてしまいそうだから。


 私はもう、すっかり役立たずのおばさんになっちゃったけど……ふふ。

 でもね、環ちゃんが私を覚えていてくれただけで、十分幸せだったわ。」


そう言って、灯は少し笑ったあと、懐かしそうに続けた。


「昔ね、環ちゃんが時々家に泊まりに来てたのよ。

 そのたびに、必ずベッドから落ちちゃってね。

 あの子、寝相が悪くて。なんかなつかしいわねぇ。」


柊が思わず聞き返す。

「え? それ、昔からなんですか?」


灯がくすっと笑う。

「そうやって聞くってことは……今も?」


柊が頭をかきながら苦笑した。

「ええ……まぁ。」


凪がすかさず笑いながら言う。

「結構、音、響くんでビックリします!」


灯は両手で口を押さえて吹き出した。

「まぁ、変わってないのね、環ちゃん!」


三人の笑い声がカフェに広がる。

柔らかな陽の光がテーブルを照らし、

その空気の中に、

“あの頃”と“今”の時間がやさしく重なっていた。


「今日は声をかけてくれてありがとう。

 うれしくてたくさん話しちゃったわね。ごめんなさいね。」


「いえ、私たちも灯さんとお話しできてよかったです。」


灯はふわりと笑って、カップを見つめた。

「そう言ってもらえるとうれしいわ。

 環ちゃんには頼もしいあなたたちがいて、

 あの子は本当に幸せになったのね。

 環ちゃんの幸せは、私の幸せよ。ありがとう。

 ――いつまでも仲良くね。」


外の陽射しがカフェの窓を照らした。

やわらかな光が三人の間を通り抜け、

あかりの名前のように、

そっとその場を明るく照らしていた。

「手を離しちゃダメよ」――

灯の願いは、二人の胸に深く沈み、そっと結び目を強くしました。

過去を悔やむのではなく、今を支えること。ぽかぽかの継承は続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ