2.デザスト
冒険家のトムは数日前に起こったタルティルでの巨大生物出現に伴い、出身国のトシャンカに帰国することにした。その前にタルティルへ赴き、児童養護施設に立ち寄った。その時、巨大生物が現れトム達を襲い地下シェルターに避難した。
しかし、トムだけが森へと導かれるように皆とはぐれてしまった。そこには謎の青年タージがいて巨大生物と戦った巨人へ変化していったのだ。
その頃、トムの弟トイは謎の黒ずくめの代行者キラーと出会うのであった。
トムは突如現れた白色の巨人ヘリトを見上げた。
「なんなんだよ…」
ヘリトは、デザストであるフェンリルと一定の距離を置き、出方を伺った。フェンリルは威嚇といわんばかりに吠えた。ヘリトは狼狽えず腰を落とし重心を下げた。
先に仕掛けたのはフェンリル。強靭な肉体から繰り出される初速は早く、ヘリトは対応が遅れてしまった。ヘリトは両手を交差させて噛みつきを防いだが、鋭い牙にダメージを受けてしまった。
『ぐっ…!』
ヘリトは噛みつきから離れようと振りほどこうとするが、フェンリルの顎は強くなかなか離れなかった。ヘリトは踏ん張り、フェンリルの腹部に蹴りをいれた。
ヘリトとフェンリルの戦いの光景を遠くで見ていたトイは代行者キラー。
「ヘリトが苦戦している…」
トイは少し不安そうに見つめていた。すると、代行者キラーは
「苦戦するのもそのはず。あの形態はヘリトプリミティブ、いわば弱体形態です。あの姿は器が消耗している時やヘリトでいられる時間が少ないことを表しています」
「…器?」
「昔は想い主と呼ばれていましたね。ヘリトは常にあの状態でいることが出来ません。なので、心身を癒すための器、人間が必要なのです」
ヘリトは横転し、フェンリルに馬乗りになった。そして、噛みつかれた腕を喉元まで押し付けた。
すると、フェンリルは嗚咽をして噛みつきを解除した。ヘリトはすぐさまフェンリルから離れた。噛みつきはダメージが大きいのか腕を押さえていた。フェンリルはつばを吐きヘリトを睨み付けた。
フェンリルは鼻を動かし、ヘリトから目を離した。嗅ぎ付けた先にはトムがいた。
「うぉ!?急にこっち来るなよ!」
フェンリルは方向転換をして森にいるトムに狙いを定めた。それを察知し、ヘリトはフェンリルが動き出した瞬間、フェンリルの尻尾を掴んだ。フェンリルは暴れるがお構いなしに振り回し森から遠ざけた。
ヘリトは森を見つめ軽く頷いた。すぐにフェンリルに目線を合わせた。ヘリトは左手を握り、胸に手を当てた。少しの溜めのあと、握った左手を払う仕草をすると白かったヘリトの身体が青色に変化した。
「死ぬかと思った…あの巨人に助けられたな…あれ?青くなった?」
「色が変わった?どういうことだ?」
「あれは…ヘリトストレンジですね」
「ヘリトストレンジ…」
ヘリトストレンジは構えた。フェンリルは再び噛みつき、ヘリトを噛み千切らんと襲いかかった。しかし、フェンリルはヘリトストレンジの身体をすり抜けた。フェンリルはすり抜けたことに驚き、ヘリトの方を向いた。
ヘリトストレンジは、深く息を吐き身体の力を抜いた。ヘリトストレンジは2体、4体と増えてフェンリルを囲うように16体に増えた。フェンリルは四方に現れたヘリトストレンジを見て、威嚇を続けた。
ヘリトストレンジ達は、開いた右手をフェンリルに向け光弾を放った。
キャォオン!!光弾を受けたフェンリルは血飛沫を上げた。ヘリトストレンジ達はフェンリルの頭上へ高く飛び上がった。ヘリトストレンジ達は再び、右手をフェンリルに向け、光弾を放ち砂煙と共にフェンリルは爆散し青い柱のような光が空へ突き抜けた。
地上に着地したヘリトストレンジはヘリトプリミティブに戻り、塵のようにその場で消えた。
「消えた…あのバケモンを倒してくれたのか」
トムは混乱はあったが、早くトイたちのもとに戻ろうと森の出口へ向かった。
「やっぱ出口わかんねぇ…ん?」
森の木々を掻き分けながら歩いていると、さっきヘリトへ変わった青年タージが倒れていた。
「おい!大丈夫か!?」
ヘリトの戦いを一部始終見ていたトイと代行者キラー
「消えた…ヘリトは人類の味方なのか?」
戦いを見ていたトイは1つの答えを出した。
「さぁ?ヘリトは器によって変化します。善なら善に悪なら…悪に…ね」
「それより君は一体なん、、、」
トイは代行者キラーに顔を向けるが既にその場から消えていた。
「…」
ありがとうございました。
ヘリトにはヘリトプリミティブ、ヘリトストレンジ等の姿に変化することがわかりました。ヘリトになった想い主のタージとトムは対峙することになります。
トムにはタージ、トイには代行者キラー。2人の運命はここから分岐します。