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浦島少女7

はあ?何ですか、それは⁉もしかして貴方もウチに付いて来るという事ですか?


それはもう〈心配性〉とか〈過保護〉の次元を遥かに越えてしまっていますよ。


さすがの佐山君も唖然として言葉を失っている、そりゃあそうでしょう


まさかの〈同伴宣言〉いくら助けてくれた恩人といっても許容できる限度というモノがある。


でも助けてもらった立場の私からは断りづらい、申し訳ないがここは佐山君にやんわりと断ってもらおう


ゴメン佐山君、何度も頼ってしまって……


私はその意志を伝える為にジッと佐山君の方を見つめ目で訴えかける


そんな私の意図が伝わったのか、彼は無言で大きく頷いた。


良かった、本当に頼りになる、ありがとう……しかし佐山君の口から出た言葉は私の期待とは大きく異なるモノであった。


「わかりました、ではご同行ください」


 えっ、なんでそうなるの?私のいない十五年間で世間の常識が変わったのかな?これがイノベーションというヤツですか?


呆然と立ちすくむ私を見てニッコリと微笑んだ佐山君、小さく頷き〈わかっているよ〉という言葉が聞こえてきそうである。


少しだけ佐山君の意外な面を垣間見ることが出来た。少女漫画ではこういう場合の〈意外な一面〉というのは


間違いなくチャームポイントなのだが、今回の案件は〈いい人過ぎて少し天然〉という微妙なモノであった。


そんな戸惑う私を尻目に佐山君の車の後部座席にそそくさと乗り込む謎の男


乗せる方も乗せる方だと思うが乗る方も乗る方だろう、これ私の感覚の方がおかしいのでしょうか?


「さあ乗って新庄、家まで送るから」


優しく微笑みかけてくる佐山君は間違いなく良い人だ、でもこれは無い。


せっかくの二人きりのロマンチックなドライブが〈護送される珍獣〉みたいになってしまった。


何だか訳がわからない内に車に乗り込み名前も知らない男の人との三人でのドライブが始まった。


勿論車内は物音一つしない無言である。そんな時、みんなの〈頑張れ〉という声が頭に浮かんできたが


とてもじゃないがそんな状況ではない、ゴメンみんな、私頑張れないよ……


 重苦しい空気の中、しばらく走っていると、佐山君の携帯電話の着信音が鳴り響く、運転中の佐山君はワイアレスイヤホンで電話に出た。


「はい、佐山です、どうしましたか?」


 どうやら仕事の電話らしい、そういえば佐山君は今、大変な状況に追い込まれているのだった


私の浮ついた気持ちなど二の次、三の次である……でも希望を言えば五番目ぐらいには入りたいけれど……


だが、電話をしている表情が急に険しくなった。


「えっ、それはどういうことですか?あ、はい、今から知人を送り届けてそちらに向かうつもりで……


えっ、でも、それでは⁉……わかりました、では急いで戻ります」


通話を切った佐山君は険しい顔を崩さず何か思いつめたような表情を浮かべている。


「どうしたの?何かあったの、佐山君?」


運転で視線を前に向けながらも話を切り出し辛そうにしていた佐山君だが、しばらくして私の質問に答えてくれた。


「実は大至急仕事に戻らなければいけなくなり、新庄を送っていけなくなった……」


申し訳なさそうに言葉を絞り出す佐山君、そんな事、気にしなくてもいいのに。


「全然かまわないよ、駅の近くでおろしてくれれば、私電車で帰るし」


「それが、電車も全面運行禁止になっている様で、一体何が起こっているのか……」


「えっ、電車止まっちゃったの?どうしよう……」


今居る所から歩いて帰るにはやや距離がある。走って帰れない距離ではないが


この謎の男性と二人きりで走りながらを帰るのはさすがに抵抗がある。


佐山君もそれを感じている様子だどうするべきか悩んでいると、佐山君が提案する様に私に話を切り出してきた。


「新庄、このまま、僕の仕事場に一緒に付いてきてくれないか?悪いようにはしないから……どうかな?」


「えっ、佐山君の仕事場?って、事はもしかして……」


「ああ、防衛省だ、新宿区市ヶ谷にある建物だよ」


ほえ~、テレビ局に続いて新宿市ヶ谷とか、私には一生縁のない場所だと思っていたのに……


でも、もしも佐山君と結婚したら度々足を運ぶことになるのかな?


いやいや、何を考えているのよ、私‼馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの、こんな大変な時に


我ながら死にたくなるほどハッピー脳の馬鹿女、もう恥ずかしくて死にたいくらいだよ……


「緊急避難的な措置だけど、いいかな?親御さんには僕の方から連絡入れておくから」


私は恥ずかしくてまともに佐山君を見ることが出来ない


赤面した顔を見られたくない為、うつむきながら無言で頷いた、続けて後ろの人にも声を掛ける。


「貴方もよろしいでしょうか?ここで下ろして欲しいのであればそうしますが?」


「ああ、連れて行ってくれてかまわない」


後部座席から低い声が返ってきたが、もう後ろの人を気にしている余裕さえなかった。


だが私はこの時気が付かなかったのである、この緊急事態が発生に民間人を防衛省に招き入れてでも時間が惜しいという切迫した状態だという事を……


防衛省に入り車から降りると周りに数人の人が集まって来る、佐山君は歩きながら数枚の書類を手にしてその人たちに事情を聴いていた。


「どうなっている、まだ戦闘は開始されていないはずだろ?アメリカか中国がこちらの返事を待たずに仕掛けて来たのか?」


「いえ、その……詳しい事は奥の部屋で」


深刻な表情で会話を交わす佐山君と数人の大人たち、周りの人たちはどう見ても佐山君より年上に見えるが今の対応を見ると佐山君の方が偉い様だ。


凄いな、それに仕事をしている彼は本当にカッコいい


大変な時にこんな事を考える私は不謹慎だと思うのだが、こればっかりは仕方がない、本能的にそう思ってしまったのだから。


 建物内に入ると私と謎の男の人はある部屋へと案内された。


「申し訳ないけど、ここで待っていてくれるかな、何かあったら壁の内線を使って連絡してくれ


こんな事に巻き込んでしまってすまない、新庄」


「仕方が無いよ、非常事態だし……佐山君は日本の為に仕事してくれているのだもの


文句を言ったらバチが当たるよ、気休めないもならないだろうけれど、頑張って‼」


私の言葉に軽く頷き笑顔で答えてくれた。


「有難う、新庄のおかげで頑張れそうだ、じゃあ、また後で……」


そう言い残し彼は足早に去っていった。案内された部屋には数点の椅子と長机、そしてスライドを映す為のスクリーンがあった


どうやら普段は会議室として使っている部屋の様だ。


静まり返った部屋の中で見知らぬ人と二人きりで待たされるのは気まずいのを通り越して苦痛である、せめて何か話さないと……


「あ、あの……お名前を聞いてもいいですか?」


私はお伺いを立てる様に恐る恐る名前を聞いてみた。


「私はフェイと申します」


「フェイさん?外国のお方でしたか、日本語お上手ですね、私は……」


私が自己紹介をしようとした時、彼はそれを遮る様に口を挟んできた。


「存じております、新庄葵様ですよね?」


「あっ、はい、そうでございます……」


私の事をテレビか週刊誌でも見たのかな?しかし困った


ただでさえ間が持たないのに自己紹介でさえさせてもらえないのではどうやって時間を潰していいのやら……


〈お好きな少女漫画は何ですか?〉と聞いてもダメだろうし、さて困ったぞ……


そんな事を考えていると部屋の外が何やら騒がしい、会話は聞こえないがどうやらとんでもない事が起きている様子である。


「何があったのでしょうか?」


そんな事を聞いてもフェイさんに答えられるはずも無いだろうに、でも聞かずにはいられなかった。


勿論このままでは間が持たないという事もあるが、黙っていると不安で心配で居ても立っても居られないからである。


「それはわかりません、しかし確かめる方法ならばありますよ」


「えっ、どういうことですか?」


確かめる方法とは?私は言っている意味が分からず思わず聞き返した。


「直接調べればいいのです、貴方がお望みであればそうしますが、どうしますか?」


フェイさんが何をするつもりなのかはわからなかったが、このままジッとしている事には耐えられなかった。


「お願いします」


「承知しました、では部屋の外へ」


私とフェイさんは部屋の外へと出て建物の奥へと進んでいった


途中でいくつかのICカード認証の扉があったが、フェイさんが手をかざすだけでなぜかそこを通り抜けることが出来た


奥に進んでいくにしたがって聞こえてくる人の話し声が徐々に大きくなり、かなり混乱しているのがわかる。


怒鳴り合う声や、苛立つ声が次々と耳に入ってきて尋常ならざる状況だという空気がヒシヒシと伝わって来る。


しばらく廊下を歩いて行くと軍服を着た一人の男性が私達の前に立ち塞がった。


「おい君達は部外者であろう、どこに行くつもりだ?ここから先は、関係者以外は立ち入り禁止だ、ここを通りたいのであれば通行証を見せろ」


険しい表情を浮かべ、こちらを睨みつけてくる軍人さん、何とか誤魔化さないと……


「あっ、そのトイレに行こうと思っていたら、道に迷ってしまって……」


苦しい言い訳だが漫画だとこの手で上手くいっていたので、もしかしての願いを込めて言ってみたのだが


現実ではそんなにうまくいくはずも無く、世知辛いものであった。


「そんな訳が無いだろうが、今君達が通って来た廊下にもトイレはある


今は非常事態だ、関係のない者はこれ以上奥へは入ってはダメだ‼」


ですよね~、わかっていましたとも。私はこれ以上どうする事も出来ずただ苦笑いを浮かべる事しかできないでいた


取り付く島も無いとはこの事だろう、だがそんな私の姿を見てフェイさんは軍服の男に向かって右手を差し出すと、すっと掌を向けた。


「何だ、何のつもりだ⁉」


警戒心を強め、声を荒げる軍人さんだたったが、その直後、険しい表情が急変し力の抜けた顔へと変わると


すぐに目がトロンとして、その場に崩れる様に座り込んでしまった。


「何、何をやったの?フェイさん⁉」


「特には何も、ただ静かにしてもらっただけです、さあ、行きましょう」


よくわからないけれど、催眠術みたいなモノかな?後ろめたさを感じつつも


力なく座り込んでしまった軍人さんを尻目にその前をそそくさと通り過ぎる、多分これは怒られるヤツだ


でももう後戻りはできない、何が起きているのか知りたい、佐山君が頑張っているんだもん、私も……


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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