浦島少女25
防衛省へと向かう車の中で、佐山くんはどこかに電話をしていた。
「佐山だ、昨日言っていた事だが、すぐさま実行してほしい……
ああ、そうだ、少し事情が変わって今すぐお願いしたい……
それと調べて欲しいことがある、ああ、そうだ、【住田フード】に関して……
すまない、今度何か奢るから、よろしく」
電話を切った彼は〈ふう〉と大きく息を吐いた。
「今の電話、どこにかけていたの?」
「ああ、総務省の方に、ちょっとね……」
「総務省って……もしかして、ヨリちゃん?」
「ああ、そうだよ、実は昨日沢城から電話があってね、新庄のことをテレビで知ってすごく心配していた
それで〈私にできることなら何でもするから、その時は言って〉と言ってくれたから一つお願い事をした」
「何を頼んだの?」
「今、新庄はマスコミと民衆に狙われている、だから新庄が移動する際や見つかりそうな時に手助けを頼んだのだよ。
具体的にいうと〈今日、新庄葵は国会に現れる〉という嘘情報を流してもらった
これには畠山総理にも話を通してもらって一芝居打ってもらう事になっている
今頃記者会見で総理が〈本日、新庄葵さんに参考人招致として国会に来てらう事になった〉と発表しているはずだよ
これで防衛省に張り付いているマスコミ連中や民衆はほとんど永田町へ移動しているはずだ」
「私の為に……ありがとう、佐山くん、それにヨリちゃん……」
思わず胸が熱くなってくる、十五年も経っているのに、私の為に佐山くんやヨリちゃんが立場も忘れて助けてくれる
本当に嬉しい……【渡る世間は鬼ばかり】という諺があるが、私の周りは天使みたいな人達ばかりだよ。
今度ヨリちゃんに会ったらいっぱいお礼を言おう、ありがとうって伝えよう
もし今後ヨリちゃんに何かあったら必ず助けるよ……って約束しよう
年は離れてしまったけれど私達いつまでも親友だよ、ヨリちゃん……
防衛省に着くと、マスコミ関係者はほとんどおらず、思いの外何事もなく入れた
これもヨリちゃんとみんなのおかげだ。建物の中に入ると様々な会話が飛び交っていて
バタバタしていて皆忙しそうにしている、佐山くんが伝えた情報により
【住田フード】グループへの捜査が始まっているようだ
そんな時、私達に気がついた新崎さんが少し驚いた顔で問いかけてきた。
「おっ、どうした佐山参事官?こっちに来るとは聞いていなかったぞ⁉︎」
佐山くんはその問いかけに対して答えることはなく、逆に真剣な表情で聞き返した。
「新崎政務官、勝間大臣はどこにいますか?」
その尋常ならざる雰囲気に何かを感じたのか、目を細め静かな口調で答える。
「大臣なら、奥の部屋にいるが……何かあったのか?」
「はい、重大な事がわかりました、できれば一緒に来ていただけませんか新崎政務官、数名の武装した自衛官と共に……」
佐山くんの言葉には断固たる決意が感じられた、その気迫に押されゴクリと息を呑む新崎さん、そしてニヤリと笑った。
「何だかわからんが、面白い。ニ分待て、部下たちに今後の指示を出した後に武装させた自衛官を呼ぶ」
「了解です」
防衛庁の建物内に緊張感が走る、いよいよ物語も佳境を迎えクライマックスへと移行し始めた
その結末がハッピーエンドで終わるのか、バッドエンドを迎えることになるのかは誰にもわからないが
終わりが近づいていることは誰の目にも明らかだった。
〈コンコン〉というドアをノックする音に中から返事が聞こえてくる。
「入りたまえ」
私達は意を決し部屋の中へと入ると勝間大臣は窓の外へ視線を向けており、私達には背中を見せたままだった。
「勝間大臣、お話があります」
真剣な口調で話しかけるというより訴えかけるかのような口調で語り掛ける佐山くん
それに対してまだ背中を向けたまま動揺することなく、いつもの口調で話す勝間大臣。
「その声は佐山参事官か、どうした急に?こちらに来るとは聞いていなかったが」
「貴方に大事なお話がありまして……」
「何かな、改まって?」
すると佐山くんは一旦間を開け、鋭い目で相手を睨みつけると強い口調で語り始めた
「勝間大臣、貴方が黒幕ですね?」
その言葉に一番驚いたのは新崎さんであった。
「なっ、何だと⁉︎勝間大臣が黒幕⁉︎どういうことだ、佐山参事官‼︎」
驚愕の表情を浮かべ困惑気味の新崎さん、それに対して勝間大臣は動揺する事も無く、余裕の態度を崩さなかった。
「フフフ、何を言っているのかわかっているのかな、佐山参事官?
現役の大臣に向かって参事官程度の小童が、事と次第によっては更迭じゃ済まないぞ?クックック」
うすら笑いを浮かべながら、脅しとも取れる言葉を発する勝間大臣
終始余裕綽々といった態度で全くポーカーフェイスを崩さない。
「承知しております、しかし私は確信している、貴方が黒幕だと」
「証拠は?」
「まず、畜産関係を探せというフェイさんの助言を無視し新崎政務官たちに知らせていなかった。
そしてそのすぐ後、マスコミに対して新庄の誤った情報のリークも貴方ですね?
それにより新庄を精神的に孤立させ、ガレリア製造工場の捜索に加わらないようにし
〈マスコミや民衆から身柄を隠す〉という口実で隔離した
我々と防衛省の連絡を自分だけに絞る事により全ての情報を遮断する
全ては貴方のシナリオ通りというわけですね、我々はそうとも知らず、まんまと踊らされていたという訳です」
この一見優しそうなおじいさんが黒幕⁉この人のせいでお母さんとお父さんが……どうして?
「ほっほっほ、中々面白い話じゃが、どうして私がやったというのだ、何を根拠にそう思う?」
「ガレリアの製造には複数の生命、皮膚に合成する金属、そして科学者が必要です
そこに使用されていたのは【住田重化学工業】、【住田金属】そして【住田フード】
全て住田グループ傘下の企業です、確か大臣の奥様は【住田グループ】の御令嬢でしたよね?
貴方の支持母体も【住田グループ】が一番大きいときいています。
そして【住田金属】の工場から【住田フード】の畜産工場へ
〈増築目的〉という項目で大量の金属が送られていることは調査済みです
畜産工場の増築には不相応な程の大量の金属が送られていること自体不思議ですね
今、新崎政務官の指示で複数の捜査官と武装した自衛官がその畜産工場に向かっています
これで【住田フード】関連の工場からガレリア製造の証拠が出てくれば……まだ説明が必要ですか?」
佐山君が理路整然と説明を続けている間もずっと背中を向けたまま聞いていた勝間大臣だったが
説明が終わると突然笑い始めた。
「クックックック……意外と早くバレてしまったのう、そうじゃ
私がガレリアを大量生産し送り込んだ張本人の黒幕じゃよ
水野教授から【ガジルス帝国】の話を聞いた時はにわかには信じられなかったが
脳のデータ移植の技術や、実物のガレリアを見せられて〈これだ〉と思った、コレは天の啓示だと……」
「じゃあ、やっぱりアンタが……」
「ああ、中国に技術提供の話を持ち掛け、その内容をアメリカにリークした
そうして両国が日本に向けて戦闘状態になる様に仕向けたのだ
ガレリアの実践テストを兼ねて……全てワシの筋書き通りよ、クックック」
振り向いた時の勝間大臣の顔は今までの優しいお爺さんというモノではなく
邪悪な笑みを浮かべた極悪人という印象を受けた。目がギラギラと輝き
残忍な冷笑を浮かべたその姿は、怖さというより禍々しさを感じる程であった。
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