浦島少女24
「はい、佐山参事官です、あっ新崎政務官、どうしました?私に直接電話など……」
どうやら電話の相手は例の防衛省の偉い人、新崎さんのようだ。
だが私たちへの連絡は全て勝間大臣を通してくる事になっている
それは政府内に情報を漏らしている人間がいるからだ。
そういえばこの新崎さんは少し前にフェイさんと一悶着あった経緯がある
もしかしたらこの人が?私の脳裏にそんな疑惑がよぎった
どうやら佐山くんも同じことを感じたようで皆の顔に緊張感が走る
佐山くんはすかさずスマホの画面を人差し指で触れると、向こうからの声が聞こえて来た
会話が皆に聞こえるようにスピーカーに切り替えてくれようだ。
「今、携帯をスピーカーモードに切り替えました、ここには新庄やフェイさんも聞いていますから
皆とも会話ができるはずです、どの様な用件だったのでしょうか?」
〈そうか、それは話が早い、実はフェイ殿に直接聞きたいことがあって、な……〉
「何だ、私に何が聞きたい?」
相変わらず私以外には偉そうな態度のフェイさん、もうこれがデフォなのだろう
また新崎さんと揉めたりしなければいいのだけれど……
〈実は先ほど水野教授の身柄を確保したのだが、どうやら水野教授は敵の黒幕の正体を知らないようだ
もう少しじっくり取り調べしないと確かなことは言えないが、どうもシラを切って相手を庇っている様子はないみたいで、少し困っている……〉
「ちなみに水野教授はどこで発見されたのですか?」
〈【住田化学工業】の施設に隠れていたところを内調が発見した
例のアルツハイマーの機械を製造する過程で提携していた会社だ
しかし【住田化学工業】はもちろん、関連する【住田重機械工業】や【住田電気工業】などの
住田グループの別工場にも当たってみたが全部空振りでな、これからどうしたモノかと途方にくれていて……
何か思いつくことがあるのなら教えて欲しいと思って電話した
本当はそちらへの直接の連絡は勝間大臣に止められているのだが
この非常時に手続きでチマチマ時間をかけてなどいられないからな
一刻も早くと思い電話した次第だ、何か思いつくことがあるのなら教えて欲しい、フェイ殿〉
その言葉を聞いた時、私たちはとんでもない違和感を覚えた。
「ちょっと待ってください、畜産工場はどうしたのですか⁉︎住田グループにも【住田フード】という関連会社がありますよね?
その息のかかった畜産工場なり畜産農業なりがあるはずです、どうしてそちらを探さないのですか⁉︎」
〈畜産?何の話だ?牛や豚が今回の件と何か関係あるのか?〉
「だから、例のガレリアの製造には生命が必要であり
その材料として畜産による豚や鶏などの家畜が使われていると予想される為
畜産工場や畜産農場を探して欲しいと、フェイさんの見解を勝間大臣には伝えましたよ‼︎」
〈何だ、そりゃあ⁉︎そんな話、全然聞いていないぞ。
そうか、わかった、住田グループの畜産関係を中心に捜索を始める、助かった、じゃあな〉
新崎さんはそう言って、さっさと電話を切ってしまった。しかしこれは一体どういうことだろうか?
佐山くんもフェイさんも少し混乱しているようだ。
「おい、佐山、今の話はどういうことだ?」
「わかりません、一体どうして新崎政務官にその話が伝わっていないのか……
考えられるのは二つ、勝間大臣は新崎政務官が怪しいと思い、意図的に新崎政務官に情報を与えていなかったのか、それとも……」
考え込んでいた佐山くんが突然、〈あっ〉と叫んだ。
「どうした佐山?」
「そういうことか……俺は急いで防衛省に戻る、新庄たちはここに居てくれ」
何かに気づいた佐山くんは私達にここに残るよう言ってくれたが
何かとてつもなく嫌な予感がして、私はすぐに反論した。
「嫌よ、私も行く‼︎」
「一緒に行けば危険かもしれないのだ、ここにいてくれ新庄‼︎」
「政府の誰かが裏切り者かもしれないのでしょう?だったら、ここにいても危険度は大して変わらないじゃない。
だったら私も行くわ、連れて行ってよ、佐山くん‼︎」
「しかし……」
佐山君は私を連れて行く事に難色を示していたが、私は一歩も引くつもりはなかった
この胸騒ぎが単なるまやかしだとは思えないからだ。
しかしそんな私のわがままともいえる提案に困惑気味の佐山くん
彼にしてみれば私がついてきても足手纏いにしかならないと思っているのだろう
しかし今回は私の断固たる決意を感じて、どうするべきか戸惑っている様子だった。
「問題ない、葵様は私が必ずお守りする」
私の気持ちを汲んでくれたのかフェイさんがフォローしてくれた。
その言葉もありしばらく考え込んでいたが、最後は折れるような形で承諾してくれたのである。
「わかった一緒に行こう、でも無茶はしないでくれ、少し危険な目に遭うかもしれないけれど
絶対にフェイさんから離れないで、それだけは約束だ、それを守れないのであれば連れて行かない、いいね?」
「うん、わかった」
こうして到着早々数時間でこのロッジを後にする事になった、ただ一つ気になる事があるのは
あまり深く考えず勢いで言ってしまったので、真由も一緒に連れて行く事になってしまった事だ。
私が危険な目に遭うのは致し方がないとしても、真由にまでそのリスクを負わせるのはどうかと思うし
私とフェイさんが行く以上、あのロッジに真由だけ一人置いていくわけにはいかないからである
今更ながらに考えの浅はかさを思い知る。
移動する車の中で、自分の愚かさを反省しつつ、気になって隣に座っている妹の方をチラリと見た
すると真由はニコリと笑って私の耳元で囁いた。
「佐山さんもかっこいいけれど、フェイさんも渋くて素敵よね、見た目だけなら真司よりかっこいいし
物静かなところがダンディズムを感じさせるわ、佐山さんかフェイさんか、どっちかにしろと言われたら正直迷っちゃう……」
誰も貴方にそんな選択は迫らないから安心しなさい、こんな場面でも中々図太い真由
我が妹ながら大したものだと、尊敬はしないが感心してしまったものである。
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