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浦島少女21

それから私達はホテルには戻らず、ある山奥へと向かった。


そこには政府が所有する隠れ家的なロッジがあり、私をマスコミや民衆から隠すためにそこに避難させてくれるとのことだ。 


そこはほんの一部の人間しか知らない秘密の隠れ家らしく、周りにも民家や店などもほとんどない場所らしい。


車を走らせて三時間ほどが経ち目的地へと到着すると、そのロッジは人里離れた山奥にひっそりと建っていた。


山奥にある秘密の建物と聞いていたのでもっとこじんまりしたモノかと思っていたのだが想像よりもずっと立派で大きかった。


森の中にひっそりと佇むその情景は、まるで絵画を見ているようでどことなく安らぎを感じさる


中に入ると広々としていて部屋も多く、私や佐山くん、フェイさん


そして数人のSPの人が滞在できる余裕があり、しばらくはここで過ごすことになると聞いていた私は少しホッとした。


与えられた部屋に入り換気のために窓を開けると、気持ちのいい風と鳥の囀る声が部屋に入って来る


木々の隙間から木漏れ日が差し込み、その幻想的な雰囲気は


東京生まれ東京育ちの私にはまるで童話の世界に迷い込んだような錯覚さえ感じさせた。


数日前、違う場所ではガレリアによる凄惨な破壊活動が起き大勢の人が死んだ


数時間前では私の家族を殺し私をも殺そうとした人達が目の前で何人も死んでいくのを見た


この穏やかな場所を思うと同じ国の出来事とは思えないほどである。


「葵様、少し休まれては?」


落ち込む私に気を遣ってくれるフェイさん、常にポーカーフェイスの彼にも少し疲労の色が見える。


それでも私の事を最優先で考え行動してくれる彼には感謝の言葉もない


それが私ではなく私の魂と融合したメリーシア様への愛だとわかっていても……


「ありがとうフェイさん、でも私は大丈夫だから……それよりフェイさん


ほとんど寝ていないですよね?私には佐山くんやSPの人達もいますから、少し休んでください」


気遣いのつもりで言った言葉だったが、それを聞いた彼はすごく寂しそうな表情を浮かべたのである。


「私の体などどうなってもかまいません、お願いですからそんな事を言わないでください


貴方を守る役目を私にやらせてください、どうかお願いですから……」


彼は懇願するような声で頭を下げる、その時、私の胸の奥が苦しくなるのを感じた


おそらくメリーシア様の魂が叫んでいる、もうこれ以上自分を責めないで欲しいと……


そうか、フェイさんは後悔しているのだ、世界を救うためとはいえ


自分の命を引き換えにしたメリーシア様の役に立てなかった事を……


いや違う、一緒に死ねなかった事を悔いているのかもしれない


今自分の体を酷使して私を守ってくれているのは彼にとって使命感や義務感ではなく贖罪


自らの命を削ることで自分が救われているような気持ちになっているのかも


もしかしたらフェイさんは〈死にたがっている〉のかもしれない、でもそれって……


「そんなに自分を責めないで……」


私の口から自然と出てきた言葉、だが私自身そんな事を言うつもりはなかった


しかし頭で考えるより先に口が動いたのだ。その言葉を聞いてフェイさんは驚愕の表情を浮かべた


両眼を見開き、思わず固まってしまった彼は思わず小声で口走った。


「メリーシア様……」


彼にもわかっていた、これは私の言葉ではない、メリーシア様の言葉なのだと。


唖然とした表情で無言のまま唇を震わせるフェイさん、そんな彼の目から一筋の涙がこぼれ落ちる。


その瞬間、ハッと我に返った彼はクルリと背中を向け、目一杯感情を隠しながら絞り出すように言葉を発した。


「では、少しだけ休ませていただきます、何かあったらまず私を呼んでください、すぐさま駆けつけますから……」

 

背中を向けたままゆっくりと部屋を出て行こうとする彼に、私はそっと声をかけた。


「いつも有難う」


その言葉が私自身のモノなのか、メリーシア様のモノなのかそれはわからない


でもそんなことはどうでもいい、これは私の本心なのだから……


振り向くことなく無言で頷いた彼はそっと部屋を出て行った。


こんな事態になってしまった為、私達はもう会議に出なくてもいいと言われた


厄介払いという事では無く、勝間大臣が私の身を案じての措置である。


私が防衛省に来たりすればまた襲われるかもしれないし、内部に私の情報をリークしている者がいる以上


モニターでの会話も危険だと判断したたようだ。元々私がいても会議には何のプラスにもならないし


防衛省の人達にしてみればフェイさんの意見や見解が聞きたいだけであり


フェイさんが私から離れない以上、自動的に彼も会議に出席する事ができないというわけだ。


だから私達抜きで会議を行い佐山くんがその情報を聞いてフェイさんに教え


何が気づいたことを伝えるという回りくどい方法を取る事になった。


そんな訳で特に何もする事がない私は一人になるとまた色々な事を考えてしまっていた


どうしてこんなことになってしまったのか?何か間違っていたのではないか?


そんな考えがグルグルと頭を駆け巡る、だからあれ程旺盛だった食欲もわかず


政府の人達が用意してくれた昼食も食べる気にはならなかった


〈無理してでも食べた方がいい〉と佐山くんは言ってくれたが、どうしてもそんな気になれないのだ


その時、〈コンコン〉という私の部屋のドアを叩く音が聞こえる。


「新庄、今いいか⁉︎」


どうやら佐山くんのようだ、そういえばいきなり部屋に入ってきた佐山くんに裸を見られたのは今朝の事である。


色々なことがあり過ぎてもうはるか昔のことにすら感じた。


「はい、どうぞ」

 

私の返事と共に佐山くんは勢いよく部屋に入ってきた。


「新庄、いい知らせと悪い知らせがある、君の家の焼け跡から二人の焼死体が発見された


状況からどうやらご両親のようだ……」

心痛な面持ちで事実を報告してくれた佐山くん


もしかしたら……という淡い期待はここで無惨にも打ち砕かれ、現実を思い知ることになる……えっ⁉︎二人?


私は慌てて佐山くんの顔を見上げる、すると彼はいつもの優しい笑顔で教えてくれた。


「妹さんは無事だ、今政府の方で無事保護したと連絡があった


身の安全を考えて今こちらに向かっているそうだ、おそらく三時間ほどでこちらに着くと思う」


「本当に?本当に真由が……」


私の両眼から再び涙が溢れ出てくる、あれだけ泣いてもう涙も枯れ果てたと思っていたのに……


私は両手で顔を覆い、噛み締めるように泣いた。良かった、本当に良かった……


そんな私の頭をそっと抱きしめてくれた佐山くん、今そんなことされたら感情の歯止めが効かなくなる、もうダメだ……


「うああああああ――‼︎」

私は生まれたての赤子のように泣きじゃくった


溢れ出る涙が佐山くんの服を濡らしていく人間感情が昂るとカッコなどつけていられないとわかった


彼に激しく抱きつき、嗚咽するように泣いた。


「良かった……うえっ、本当に、良かっ……うっ、うえっ、よか……うああああ」


佐山くんは何も言わず、ただただ私を抱きしめてくれた


そんな彼の優しさがとても嬉しく、救われた。再会してからというもの佐山くんには助けてもらってばかりだ


有難う、もうその言葉しか浮かばない、馬鹿の一つ覚えでもいい、何度でも言うよ、有難うと……


ひとしきり泣いて少し落ち着いた私は色々な事を思い返し、急に恥ずかしくなってきた。


先ほども述べたが佐山くんと再会してからというもの、私は助けられてばかりなのだ。


それに対し私は彼に可愛らしいところや優しさみたいなモノを微塵も見せておらず


そればかりか醜態を晒してばかりなのである。いくら彼が十五年経った大人の男性とはいえこれは酷い状況だ


愛想を尽かされ三行半を突きつけられても文句は言えない、いや文句など言ったらバチが当たるだろう。


申し訳ない気分で佐山くんをチラリと見ると、彼もどうやら気恥ずかしいようだ。


顔を赤らめて露骨に視線を逸らしている、考えてみれば過程はどうあれ


誰もいない二人きりの部屋で激しく抱き合ったのだ。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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