表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/26

浦島少女16

フェイさんの言った事は少なからず衝撃を与えた、皆信じられないといった面持ちで唖然としている。


「馬鹿な、あの化け物が日本国内で生産されているだと⁉︎」


「どこの売国奴が、そんな馬鹿な真似を⁉︎」


「しかし、それが事実だとすれば、あのクラスの兵器を量産できる施設ならば


簡単に割り出すことが出来るはずだ、早速警察を動かして……」


「いや、常時ならばそれも有効なのだろうが今は非常時だ


警察も市民の避難誘導や交通の整理、治安維持に奔走していて捜査などできる状態ではないぞ⁉︎」

 

皆がそれぞれ意見を出し合うが中々まとまらない、会議が迷走しかけたそんな時である。


再び新崎さんが激しく机を叩き一瞬皆の会話を止めると、吐き捨てるように言い放った。


「今はその化け物を生産している施設を一刻も早く見つけ出し


第二次、第三次の攻撃を未然に防ぐことが最優先だ、警察が使えないのならば内調や陸幕二課を動かしてでも探し出せ‼︎」

 

新崎さんの言葉に皆が納得したようで錯綜していた会話が一瞬で治る、さすがは防衛庁の選ばれしエリート様だ


ただの威張っている中年おじさんではないみたい。少しだけ私の中の好感度が上がり認識を改めたところである


私の中の支持率上昇など、この際どうでもいいのだろうけれど……


そんな新崎さんが続けてフェイさんに問いかけてきた。


「その施設を探し当てたとして、今回、裏で糸を引いている日本側の首謀者を特定できると思うか?」

 

先程のわだかまりを捨て、鋭い眼差しでフェイさんを見つめながら問いかけてきた。


「わからん、生産施設で製造に関わっている人間の大半は【ガジルス帝国】の魔導士だろうからな


ならば事情を知っている可能性は低い。逆にその施設から首謀者を割り出すことはできないのか?」

 

逆に質問する形になったが、その問いかけに新崎さんは素直に答えた。


「できなくはないだろうが、今の非常時では警察の人員が当てにできない以上


少し時間がかかりそうだ、内情を知っている人物が特定できれば……」


「ならば〈水野〉という人物を探せ、奴ならば首謀者が誰か知っている可能性が高い」

 

その言葉に新崎さんは思わず両眼を見開いた。 

「そうか……帝都大学の水野教授か⁉︎、わかった、協力を感謝する‼︎」

 

先程までいがみ合っていたフェイさんと新崎さんだったが


この非常事態ではお互いの禍根を捨てて仲良くなったように見えた。争いは何も生み出さないのだから仲直りはいい事だよね


〈仲良きことは美しきかな〉と言ったのは……誰だっけ?まあいいでしょう


どうしても気になるという方はご自分でググってください。


「内調と陸幕二課には〈帝都大学の水野教授を探せ〉とも伝えろ、草の根を分けてでも探し出せ


日本の命運がかかっているのだからな‼︎」

 

新崎さんの号令により、皆が一斉に立ち上がり動き出した。先の見えない真っ暗な未来に少し光明が刺したようで


皆のテンションが一気に上がったのが感じられた。その時私はふと感じた疑問を左隣りにいる佐山くんに聞いてみる。


「ねえ佐山くん、〈内調〉とか〈陸幕二課〉って何?あまり聞きなれない言葉だけど」

 

そんな素朴な質問に佐山くんは優しく答えてくれた。


「一般にはあまり知られていないかもね、〈内調〉とは〈内閣情報調査室〉の略称だよ


内閣官房の情報機関の一つだ。陸幕も〈陸上幕僚監部〉の略称で防衛省の特別機関だ


作戦参謀本部の役割を担っていて、ニ課はその中でも情報を扱う部署で内調と少しかぶるかな


わかりやすく説明すると〈内調〉や〈陸幕二課〉は規模が違うけれど


日本のCIAみたいなモノだと考えればわかりやすいかもね」

 

私のようなど素人にもわかりやすい説明をしてくれた佐山くんだったが、同時に驚きもした


私はそんな事、全然知らなかったのだから。


「ほえっ、日本にもそんな組織があったなんて、全然知らなかったよ⁉︎」

 

驚く私の姿を見て彼は再び優しく微笑だ。


「まあ、僕もこの仕事に就くまでは知らなかったし、一般の人はほとんど知らないと思うよ」

 

私一人が驚きで呆けている中、皆がバタバタと席を立ち慌ただしく行動を開始していた。


皆が頑張って日本の危機を何とかしようとしている時に私だけがいつまでも呆けている訳にはいかない


決意も新たに会議室を出ようと立ち上がるが、その時ふと小さな疑問が頭に浮かんだので、それとなく聞いてみた。


「ねえ、佐山くんはどうして防衛省に入ったの?」

 

何気ない質問だった、私もそれほど気にすることもなく何となく思いついた事を聞いた程度の質問だったのだが


佐山くんは少し戸惑うようなそぶりを見せ、視線を逸らしたのである。あれ?聞いてはいけない質問だったかな?


でもそんなにおかしな質問じゃなかったし……ここは無理矢理でもフォローをした方が良いのかな……


「佐山くんは昔から正義感が強かったし〈皆を守りたい〉という理由で防衛省に入ったの?」


「えっ、うん、まあ……そんなところだよ」

 

どうにも〈らしくない〉煮え切らない返事だったが、〈皆を守りたい〉という理念は崇高で気高い理想だと思うのだへどなあ


人に話すには少し恥ずかしいのかもしれない。男の子はそういうところがあると聞いたし……


上から目線ともとれるこの独自の解釈はもちろん少女漫画の知識に裏打ちされたモノに他ならない。


そもそも私にとって身近な男性といえばお父さんしかいなかったので


男性に対する知識を得る為の観察対象というかサンプルが極端に少なく


間違った結論に行きついた可能性は高い。


そんな私の記憶に基づいた経験則では私と真由がまだ幼かった頃


お父さんがエッチな本を隠し持っていたところをお母さんに見つかり


私と真由の前で激しく怒られていた事しか思い浮かばない。


その時のお父さんのバツの悪そうな顔はこの世で一番情けない姿だった思い出がある。


幼心ながら娘として〈そこに触れてはいけない〉と思ったモノだ。


そんなこんなで防衛省の人達がほとんど退席し私達もそろそろ出て行こうと思った時である


うしろから不意に呼び止められる声がしたのだ。


「ちょっと待ってはくれぬか?」


反射的に声の方に振り向くと、その声の主は勝間大臣であった。


「はい、なんでしょうか?」

 

咄嗟に佐山くんが返事をすると、勝間大臣はニコリと笑って口を開いた。


「色々と迷惑をかけるの、すまない。それにまだまだお主たちの力を借りねばならぬようじゃ


国防を任された身としては女子高生に頼るなど情けなさの極みじゃが、現状ではそうも言ってはいられぬ状況じゃ


申し訳ないがこれからもよろしく頼む」

 

丁寧に頭を下げる勝間大臣に〈偉い人なのに随分と腰の低い人だな〉という印象をうけた


こんな右も左もわからない小娘に頭を下げるとか中々できる事ではない


偉い人でも行きつくところまで行ってしまうとかなりの人格者になるのだろうか?


補足しておきますがコレは決して新崎さんの事をディスっている訳ではないと重ねて説明しておきます。


「いえ、そんな、私でできる事ならば全力で協力させてもらいますから」


「ほほう、それは頼もしい、よろしくお願いしますよ、お嬢さん。


それまではホテルでゆっくりと過ごしてください、こちらでできる事ならばどんなことでもするつもりだから


遠慮なしに言ってみるといい」


「えっ、別に要望とかは特にはないですよ、ホテルは私が泊まるにはもったいないぐらいの贅沢な所ですし


佐山くんとフェイさんが私を守ってくれていますから安心です。


ただ一つお願いがあるとすれば、家族と会って直接私の無事を知らせたい……


という事ぐらいです。十五年も家を空けてやっと帰ってきた娘が


また帰ってこないとなると両親や妹も心配するでしょうから……


電話はしたけれど、やっぱり会って話をしたいものですから……」

 

私の要求を聞いて、勝間大臣は嬉しそうに〈ウンウン〉と頷くと微笑ましい顔でこちらをみて言葉を発した。


「わかった、それぐらいならばお安い御用じゃ、早速手配しよう。


親御さんもいい娘さんを持ったのう、いつご家族と面会できるかは佐山参事官を通して連絡を入れる


それまでホテルでゆっくりと過ごしてくれたまえ」

 

私にはこの人は偉い大臣というより優しいおじいちゃんという印象を持った。


「ありがとうございます、でもみんなが一生懸命日本のために頑張っているというのに


私だけホテルでぬくぬくと過ごすのは気が引けます、私にもできることがあればご協力したいと思います」


「ほほう、それは頼もしい、それでどんな事をしてくれるというのかな?」

 

勝間大臣の切り返しに私は即座に答えることができなかった、なぜならば


〈私にもできることがあれば協力したいと思います〉という言葉は


単に褒められたから気分がよくなって調子に乗り言ってみただけだったからだ


もちろん深い考えなど皆無である。


大体追及されるとは思っていなかったのでどうしたらいいか言葉に詰まってしまう。


返答に窮し、気まずくなった私は助けを求める様に思わずフェイさんの方を見つめると


彼はいつもの様に静かな口調で答えてくれたのだ。


「では、我々はガレリアを製造している工場の捜索を手伝いましょうか


ガレリアの製造には少なからず魔力を使用しますので、その魔力をたどって探すことが可能です。


これはメリーシア様にしかできなかった〈魔力探知〉という特殊な技術ですが


メリーシア様と魂を融合させた葵様でしたらできるかもしれません、やってみるだけの価値はあるかと……」

 

さすがはフェイさん、私の期待以上に応えてくれる。これで私の馬鹿丸出し無責任発言も


その説明責任を追及される事なく、いい感じで事なきを得た。


再び調子に乗った私は勝間大臣に向かって、意気揚々とドヤ顔で言い放った。


「だ、そうです‼︎」

 

私自身何もしていないのに偉そうに言ってみた、あくまで〈できるかもしれない〉という可能性の話なのだが


これでもしできなかったら……まあその時は笑顔で誤魔化そう。


女子高生の笑顔と涙はファイナルウエポンだと聞いたことがある


私程度の人間の武器がどれほどの威力を発揮するのか甚だ疑問だが


この勝間大臣ならば笑って許してくれそうな気がするからだ

この時点での私はそんな呑気な事を考えていたのである……


「色々とご迷惑をかけるのう、ではよろしく頼みます。くれぐれも無理はしないように」

 

最後まで私を気遣ってくれる勝間大臣を見ているとどこか温かい気持ちになり自然とホッコリしてしまう。


どこかおじいちゃん孝行しているような気分になったからだ。


あっ、そういえば新潟に居るはずの本当のおじいちゃんってまだ生きているのかな?


この時代に戻ってきてから聞いていなかった今度お母さんに聞いてみよう。

 

 

ホテルに帰ってフェイさんに教わりながら例の〈魔力探知〉という技術を何度も試してみたのだが


全然できなかった……やはり私には才能がなかったらしい。


だがフェイさんは特に何も反応を見せなかった、もしかしたらあの場の私の立場を考えて


出来る訳もない〈魔力探知〉の話をワザと持ち出してくれたのかもしれない


いや、多分そうなのだろう、フェイさんはそういう人だ、それなのに私ったら調子に乗って…… 


完全なピエロである、いやピエロというのはかなりの技術と練習が必要だと聞いたことがある


〈人を笑わせるピエロ〉と〈人に笑われる私〉では同じような言葉でも天と地ほどの開きがある


道化と呼ぶのもおこがましい、つくづく自分の馬鹿さ加減が嫌になる


どこかに穴があったら入りたい気分だ、もちろん〈ゴラオンのお口〉以外の穴にだが。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ