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浦島少女15

六都市での戦闘が終わると私達は再び昨日と同じ会議室に呼ばれた


〈ガレリアによる攻撃はしばらく無いだろう〉というフェイさんの予測は外れ


ガレリアによる連日の大攻勢に皆困惑しているようだ。


この未曾有の事態に会議が始まる前から会議室空気はピリピリとした緊張感に包まれていて防衛省の偉い人達と


今日もモニター参加の畠山総理は明らかに昨日よりも険し

い表情を浮かべている。


昨日フェイさんとやり合った新崎さんなどは露骨に不機嫌な態度でこちらを見ていた。

 

総理がモニター越しに目配せをすると勝間大臣が無言で頷く。


「初めてくれたまえ」


 防衛大臣勝間さんの声で会議は始まった。


「では、各地の被害状況から。東京、大阪、名古屋、横浜、札幌、福岡の六都市に同時多発的に出現したガレリアは


各都市で破壊活動を開始、各地で多大な被害が出ております。


特に救助の遅れた札幌や福岡での被害は深刻で、公共施設、道路、鉄道、空港などのインフラが半分以上機能を停止している他


水道、電気、ガス、電話などのライフラインに支障をきたしている地域も多々見受けられ早急な救援活動が必要な状況です。


現状では死者、行方不明者もその数までは把握できておらず、推定ですが全国で死者だけでも20万人ほど出ていると思われます」

 

司会進行役を務める若い男性が報告書を読み上げると、その被害の大きさに皆の表情はさらに曇り


畠山総理は目を閉じゆっくりと首を振っていた。重苦しい空気が漂う中で


その静寂を破るように〈ドン〉という机を激しく叩く音が会議室に響くと次の瞬間


大声で叫ぶ人物がいた。防衛省の偉いおじさん、新崎さんである。


「昨日、〈ガレリアは当分出現しないだろう〉と言っていたよな⁉︎


それがどうだ、この悲惨な状況は⁉︎このどう責任を取るつもりだ、貴様は‼︎」

 

額に血管を浮かび上がらせ、フェイさんを指差し糾弾する新崎さん

 

しかしフェイさんは動揺することもなく座ったまま目を閉じ、腕組みしながら微動だにしな


そんな態度がますます新崎さんを苛立たせた。


「何だ、その態度は‼︎貴様はこの悲惨な状況を招いた責任をどう感じているのだ‼︎」

 

ものすごい剣幕でフェイさんを指差しながら、感情に任せて捲し立てる新崎さん。


とにかくもの凄く怒っている事だけは誰の目にも明らかだ、でも責任って……

 

そんな激怒している相手に対し、フェイさんはあくまでも整然とした態度を崩さない。


その余裕は何処から来るのか、私の様な〈テンパり女〉には見習いたいぐらいですが


今はそんな事を検証している場合ではないようです、全く動じないその態度が


益々新崎さんを苛立たせているのは周知の事実であり、空気を読まないフェイさんの性格がマズい方へと向かっているの

が現状の様です。


強めの口調で質問をぶつけられたにもかかわらず、座ったまま何も言葉を発しないフェイさん


先程とは違う緊張感が会議室に漂い、皆の視線が彼に集中する。


お願いですから何か言ってくださいフェイさん、私息苦しさで窒息しそうです


水の無い場所でおぼれ死ぬのだけは勘弁して欲しいのですが……

 

そんな私の気持が通じたのか、軽くため息をついたフェイさんは、ようやく口を開いた。


「昨日は〈どう思うか?〉と意見を求められたから私の見解を述べたに過ぎない


それをもって責任を取れとは責任転嫁も甚だしい。そもそも昨日私が〈また近々、ガレリアが出現する〉


と言っていたとして、どうするつもりだったのだ?貴様らの軍隊ではガレリアに対し全く相手にならないことは実証済みであろう。


結局、葵様に助力を求める以外に手はないのだから、同

じことではないか」


うわ〜身も蓋もない事を言ってしまった……何も話さないのは問題だったが


話したら話したで、新たな火種を起こしてしまった様な気がするよ……


案の定、新崎さんは顔を真っ赤にしながら返す言葉がなくて小刻みに震えている


重苦しかった空気は更に悪くなり会議室に嫌な暗雲が立ち込める。


この流れで和気藹々になどなるはずも無く、できる事ならば〈嵐が来そうなので早退してもいいですか?〉


と言いたいところなのだが、そんな事をすればフェイさんに向いている鬱憤がこちらに進路を変える事は明白です。


接近して来る大型台風に対し、私にできる事は只々身を潜めてやり過ごす以外の対処法は無いようです


ごめんなさいフェイさん、お役に立てなくて……


そんな時、勝間大臣が救助隊のごとく仲裁に入るように口を挟んでくれた。


「まあ。そのくらいにしておいてやってくれぬか、フェイ殿。新崎くんも落ち着いて座りたまえ


今重要なのは責任追求ではない、これからどうするか?あのガレリアの大群にどう対処していくか?という事じゃ」 

 

その諭す様な説得に、新崎さんは腕組みしながら納得いかないとばかりに顔を背けドカッっと座った。


留飲は下がらない様だが事の大小にかかわらず、責任のなすりつけ合いというのは不毛な結果しか生まない事は誰もが知っている。


私も真由と〈庭の朝顔が枯れてしまったのはどちらのせいか?〉という言い合いをしたことがある


責任をなすりつけ合いお母さんに怒られた苦い記憶だ。


その時は〈真由が悪いと認めないならもう一緒に寝てあげないよ‼〉という強権を振るい


妹に無理矢理謝罪させた、今思えば酷い姉だったと思うが当時は


〈してやったり〉と思ったモノだ、あの頃の真由は可愛かったな……


我が家の庭の朝顔と世界の平和を同列に語るのも不謹慎極まりないとは思いますが


事の本質は同じだと思うのです。でも、バッシングを受けると


打たれ弱さに定評のある私のメンタルは耐えられないと思うのでとりあえず謝罪しておきます、ごめんなさい。


話が大分逸れてしまいましたが、そんな紆余曲折ありながらも憤懣やるかたない新崎さんと


常にマイペースのフェイさんの姿をヤレヤレと見つめる勝間大臣


その時、畠山総理がモニター越しに言葉を発した。


〈事態は緊急を要します、自衛隊による救援活動はどうなっていますか?〉


「はい、現在自衛隊は各地で救援活動に勤しんでおります。しかしガレリアの攻撃は六都市、同時多発的に起こっていますので


各都市への人員配置も混乱していて、都心などの中心地はと

もかく、特に被害の大きい札幌や福岡では


人手が足らないと報告が来ております、早急に手を打つ必要があるでしょう」


〈とにかく被害者の救護が最優先です、勝間大臣、その辺りの手配を早急にお願いしますよ〉


「承知しました総理、できるだけ速やかな救援活動ができるように手配いたします」

 

モニターの畠山総理も小さく頷いた、しかしこれでは問題の根本的解決にはつながっていない事は私にもわかる。


そんな疑問を代弁するかのように一人の男性が手を上げて質問をした。


「しかし、今後どうするつもりですか?あのガレリアとかいう化け物が再び大軍で襲ってきたら……


昨日のガレリアによるアメリカ軍と中国軍への攻撃も報道官制を敷いて世間には伏せていましたから


一般市民の動揺と不安はかなりのモノです。さらに第二次、第三次の攻撃がある様ですと


各地で市民による暴動や略奪行為のような事が起こりかねません。


こちら側の対抗策が例のドラゴンと巨大生物兵器しかない以上、今朝のような同時多発的な攻撃には


後手、後手に回るしかありません、今後どういった対策で臨むのが良いのか、検討する必要性があります」

 

新崎さんの隣に座っているオールバックの中年男性がそう発言する。


そうなのだ、それが一番の疑問であり最大の問題なのである、しかしその難問に対して答えられる者はいなかった。


皆モニターの総理と勝間大臣の方をチラチラと伺いながら誰か意見を言うのを待っている様子である。


だが勝間大臣は目を閉じたまま口を開くことはなく、畠山総理もどうしていいか困っている様子であった。


堪りかねた私は右横のフェイさんに語りかけた。


「ねえフェイさん、どうすればいいと思う?」

 

藁をも掴む気持ちで問いかけた、おそらくこの中で一番有効な手段を提案できるのは彼であろう


誰もがそう思っているのに違いない、でもここまでの流れ的にフェイさんに意見を求め辛い空気になっている事は否めない


だからここは私が聞くしかないと決意したのです。決し

てこの場の空気をこんな風にした新崎さんを責めているのではありません


責任転嫁と弾劾は何も生み出さないと語ったばかりですから。


でも〈新崎さんのせいで……〉という気持ちはちょっぴりあります


言っている事が矛盾していると思われるかもしれませんが


そこは〈感受性豊かな女子高生の心〉という事でご納得いただけると幸いです。


人には感情というモノがあるのでこれは仕方がないモノなのです


〈だって人間だもの〉と言ったのはモンテスキューだったかな?

 

そんな私の問いかけに、静かに答えるフェイさんだったが、その回答は皆が期待したモノでは無かった。


「ここは私が意見を提案する場ではないようですので……」


少し含みのある言い方だった、先ほど新崎さんに責任追及をされたことに少し不満でもあったのかな?


でも今はそんな事を言っている場合では……

 

そんな空気を察したのか、モニター内の畠山総理がフェイさんに向かって語りかけた。


〈私からもお願いします、今は緊急事態です、どんな意見でもいいから言っていただけませんか?


その結果どのような事になろうとも全責任は私が取りますので、是非忌憚のない意見を、どうか……〉


 畠山総理はそう言って素直に頭を下げた、一国の総理大臣が頭を下げたのである。


妹に頭を下げる事すら躊躇する私とはえらい違いである


色々言われている様だがやっぱり国のトップにいる人は国民の為には必死なのだと


当たり前の事だろうが今更ながらに痛感し感心した。


「私の方からもお願い、何か手段があるのなら教えてフェイさん‼︎」

 

フェイさんの目を見て必死にお願いしてみた、この場面では彼以外頼れる人はいないのだ


これ以上人が死なない為になんとかしたいという気持ちだけは私も同じだった。


「わかりました、あくまで私の推測の基づく見解であれば話しましょう。


先日〈ガレリアの大軍による侵攻はしばらくないだろう〉という根拠は


ガレリア自体、その性質上〈魔力がないと動かない〉というところから来ている


つまり魔力の供給が閉ざされた我々の世界【ゲルドラ】から、こちらの世界にガレリアを搬送しようとすると


人力によって運ぶしかなく、ゲートを通ってガレリアを運ぶとなると、一日で一体、よくて二体が限界だ


つまり200体のガレリアを搬送するには少なくとも100日や200日はかかるはずだと推察した。


それが〈しばらくガレリアによる侵攻は無い〉と推測した根拠だ。


しかし昨日は各地の合計で300体を超えるガレリアが現れた、これは由々しき事態である証明でもある」

 

私にはフェイさんが何を言いたいのか、さっぱりわからなかった。


「どういう事?私にもわかる様に説明してくださいませんか?」

 

そんな私の素朴な疑問に小さく頷いてくれたフェイさん


しかし次の瞬間、聞かされた内容は私だけでなく、ここにいる皆の度肝を抜く信じ難いモノであった。


「つまりこの日本国内でガレリアが製造されているという事です


【ガジルス帝国】は国力のほぼ全てを注ぎ込んでガレリアを量産しました


それと同等の数をこの短時間で導入できるという事は国家規模の生産環境の整った設備を所有できる


日本の権力者が秘密裏にガレリアを生産し裏で糸を引いているということに他なりません」

 

あまりの事に皆一瞬言葉を失った、この日本の偉い人の中に裏切り者がいるって事?誰がそんな事を……


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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