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浦島少女14

重要な会議を終え、大人たちがざわざわと談話しながら部屋を出て行く


世界の危機を迎えているのだから皆真剣そのものだ。勝間大臣だけは出て行く際に私に向かってニコリと微笑みかけてくれた


私はどうしていいのかわからず、とりあえず頭を下げて会釈した。


しばらくして防衛省の偉いおじさんたちは誰もいなくなり、私と佐山君、そしてフェイさんの三人となる。


隣の佐山君がスッと立ち上がりそっと右手を差し出してくれた。


「じゃあ行こうか、俺が案内するよ、これからよろしく」

 

何という佐山君だ、まるで少女漫画のヒーローか乙女ゲームのイケメン彼氏である。


どうにも気恥ずかしいが私は差し出された右手をそっと取り立ち上がる


まるでダンスホールに誘われた主人公のような気分だ。


こういう事をさりげなくこなすところはある意味佐山君が天然といえる所業だろう


なぜならこういった一連の言動はイケメンじゃないと絶対に絵にならないからである。


私達は最後に会議室を出た。フェイさんは気を利かせてくれているのだろう


私達とやや距離を取って後ろを突いてくる、そんな気遣いが今では少し心苦しい。


「新庄、家の方に連絡しなくてもいいのかい?ご両親は心配していると思うよ」


「えっ、うん、今から連絡する、有難う……」


「せっかく十五年ぶりに会えたというのに又家族と引き離す様な事になってすまない」

 

佐山君が申し訳なさそうに頭を下げる。


「えっ、どうして佐山君が謝るの?十五年も家を空けていたんだもん


今回はそこまで長くはならないだろうし、ちゃんと行先はわかっているのだから問題ないよ」


「そうか、じゃあ俺は宿泊の手続きをしてくるから少し待っていて、送り迎えには護衛車が付くはずだし、すぐ戻るから……」


温和な口調でそう話すと、今度は真剣な顔でフェイさんに視線を移した。


「少しの間、私はここを空けますが、この建物内であれば大丈夫のはずです。


ですがもしもの時は新庄の事を頼みます」


「ああ、了解だ、命に代えても葵様はお守りする」


佐山君はその返事に力強く頷き、小走りで立ち去った。それからしばらくの間フェイさんとの二人きりの状況が訪れ


沈黙の時間が流れる。先程の思いをどう伝えていいのか、上手く言葉にできないのがもどかしい。


せめて感謝の気持ちを伝えたいと思うのだがどう話していいのやら……


私がバイブルとして愛読していた少女漫画がここにきて福音どころか何も役に立てていない事がわかった、少女漫画の先生方ごめんなさい……


気持だけが先走りして全然言葉にならない、チラチラとフェイさんに意味深な視線を向けるだけという


意味不明な行為を繰り返すだけの愚かな子羊と成り果てた私こと新庄葵、自称十八歳〈実年齢三十三歳〉であった。


そんな私の挙動不審ぶりを見かねたのか、フェイさんは小声で私の耳元に囁いた。


「ご安心を、宿にいる間は葵様と佐山が二人でいられるように少し距離を置きますから


お二人がどの様な事をされようと私は関知しませんので……」


相変わらずの気遣い100%、デリカシー0%の言葉、先程までなら苦笑いでスルーしていたのだが


今の私にはそれが出来ない。フェイさんの気持ちを知ってしまったから


心が痛んでとてもやり過ごす事などできないよ……

 

私はうつむきながら思わずフェイさんの服の袖をつかんだ。


「どうしましたか、葵様?」


こちらの反応が意外だったのか、不思議そうな顔で私の顔を覗き込んできた。


「あのね……私の心が……いや、魂が叫ぶのよ、有難う……って


いつも有難う、貴方のおかげよって……訴えかけてくるのよ……これって、これって、さ……」

 

それ以上言えなかった、気持ちが溢れてきて言葉にならない、単なる思い込みだと言われるかもしれない


でも佐山君が好きなはずの私がフェイさんに対してこんなにも切ない気持ちになるのは偶然や思い込みではないはずだ


間違いなくコレはメリーシア様の……

 

その言葉を聞いたフェイさんは両目を大きく見開き、言葉を発することなくもの凄い目で私を見ていた


それは今までの優しい眼差しとは明らかに違うもの。しばらく驚愕の表情で私を見つめていたフェイさんだったが


不意に背中を向け、いつもの口調で語り掛けてきた。


「もう佐山の手配した車が来る頃です、さあ、まいりましょう……」

 

あくまでも毅然とした態度と口調で対応するフェイさん、だが私は気づいてしまったのだ


冷静さを装いながらも、唇と声が少し震えていたことを……


 

私達は防衛省が用意してくれたホテルへと向かった。そこは私でも知っているぐらいの超有名な豪華ホテルで


ロビーから豪華絢爛と言った感じの装いである。既に数人のSPの人が待機していて


これ以上ない程警戒が厳重である事を思わせた。


客室に入ると中は〈どうしてこんなに広いの?〉というくらい広々とした部屋


いわゆるスイートルームというヤツだろう、国際的なビップやアラブの王様とかが使う部屋なのかな?


根っからの庶民根性が染みついている私にとっては逆に広すぎて落ち着かない。


そんな時、ふと昔の事を思い出した。家族で旅行に行った時、お父さんが……


〈今日は葵と真由の為に奮発したからな、一人二万円もしたのだぞ、凄いだろ‼〉と言っていた事を思い出す


今思えば当時としては豪勢に見えたあのホテルも、ここに比べたらまるでウサギ小屋だ


ゴメンお父さん、変な事を思い出してしまって……

 

〈ルームサービスも自由に使っていい〉と佐山君には言われたが、値段を調べてみたらコーヒー一杯1600円となっていた。


三杯も飲めば私の一か月のお小遣いがほぼなくなる金額である。


コンビニで買う100円のコーヒーだって凄くおいしいのに金銭感覚がおかしくなりそうだ……


私がいなくなっている間に日本にインフレが起こったとは聞いていない


寧ろデフレで経済が困っていると聞いた、なのにこのコーヒーの値段は……もう考えるのは止そう。


私は早々に広すぎるベッドにもぐりこみ眠りにつく事にした


今日は色々あってとにかく疲れたからだ。昼間はクラスのみんなと会い


酔っ払いに絡まれてフェイさんに助けてもらい、緊急事態で佐山君の勤める防衛省に来たら


凄い数の化け物がアメリカ軍と中国軍を襲っていてそれをドラゴンと怪物でやっつけて、実は私の魂は別世界の女王様と一体化していて……


どれだけ色々な事があれば気が済むの、試験の前日でもこんなに詰め込まないよ。


もう疲れた、このままゆっくりと眠りたい……そうだよ、眠って起きたら全て夢だったと言ってよ、おねがいだから……


そんな思いを抱いたまま私の意識はゆっくりと薄れ始め、そのまま眠りについた。



「起きてください、葵様、早く起きて‼」

 

激しく体を揺らされ目を開けると、そこには必死の形相をしたフェイさんがいた。


「あ、おはようございます、フェイさん……って、フェイさん⁉」


 いきなり意識がハッキリした私はベッドから飛び起き、思わず身構えた。


「ど、ど、ど、どうしたのですか⁉いきなり朝から、〈夜這い〉というヤツですか⁉


でも今は朝だから〈朝這い〉?……って何言っているの私、フェイさんの事は嫌いじゃないですが、私、男の人とそういう事は……」


 激しく動揺する私だったが、フェイさんは表情を変えず真剣な口調で説明を始めた。


「葵様、落ち着いて聞いてください、今この日本国の各地でガレリアが暴れているとの事です


佐山の方からも各地で甚大な被害が出ていると報告がありました」

 

あまりの事に頭が付いて行かない、何が何だか理解できず私は呆然と立ち尽くした。


「嘘、嘘でしょう?何で……そうだ、テレビで‼」

 

私は慌ててテレビを付けた、するとそこには目を覆いたくなるような映像が飛び込んできたのである。


テレビ画面には街のあちこちで火の手が上がり、人々が逃げ惑う姿が映し出されていた。


空中には無数のガレリアが暴れまわっており、自衛隊の飛行機が応戦しているも全く相手にならないという状態で


正に地獄絵図といった光景が展開されていた。


「なに、コレ……嘘でしょう?」

 

呆然としている私の耳に現地にいるレポーターの声が飛び込んで来る。


〈皆さん見てください、信じられない事ですが正体不明の怪物が日本の各地で暴れています


自衛隊も出動していますが対処は難しいようです、各自治体の避難要請に応じて速やかに


落ち着いて行動してください、くれぐれもパニックを起こさず、落ち着いて避難を……きゃあ―――‼〉


女性レポーターの悲鳴と共に映像は途切れた。何が起こったのかは想像もしたくない、どうして?どうしてこんな事に……

 

そんな時、佐山君が部屋に飛び込んできた。



「新庄、大変だ、ガレリアが発生して‼……」


「うん、私も今、知った……早く何とかしなくちゃ、何処に現れたの?」

 

佐山君は慌ててポケットから小さなメモを取り出し、聞かせてくれた。


「東京、大阪、名古屋、横浜、札幌、福岡、神戸の六都市だ‼」


「日本で人口の多い六都市じゃない、そんな所に……」

 

頭が真っ白になって何も考えられない、手足が勝手に震えだしテレビ画面から目が離せない


止めてよ、どうしてそんな事をするの?一杯死んじゃう……

 

次の瞬間、フェイさんが私の頬を平手で叩いてくれた、〈パチーン〉という乾いた音が部屋に鳴り響く


驚いた私は殴られた方の頬を押さえ思わずフェイさんの方を見つめた。


「呆けている場合ですか⁉今こうしている間にも大勢の人間が死んでいるのです


早く対処をしないと本当にこの国は死体だらけになってしまうのですよ‼


貴方しかいないのです、この状況をなんとかできるのは、貴方だけしか……しっかりしてください‼」

 

そうだ、その通りだ、呆けている場合ではない、一人でも多く助けないと。


「フェイさん、私はどうすれば?六都市をどうやって助けたらいいと思う?」


「そうですね、西と東に分け、ヴァンアレス様とゴラオンを向かわせましょう」

 

フェイさんはこの非常時に的確な助言をくれた、それを拒絶する理由もない私は大きく頷くそして次は佐山君に問いかける。


「わかった、佐山君どちらを西と東に向かわせたらいいと思う?」

 

突然の質問にやや戸惑った佐山君だが、そこは持ち前の冷静さと頭の回転で素早く答えてくれる。


「この東京と横浜は距離が近い、ならば移動速度があまり早くないゴラオンを東に


そして音速の七倍以上の飛行速度で移動可能な竜王は西へと向ければいいと思う」

 

さすがに佐山君はこんな時でも冷静では的確だ、フェイさんもその提案に頷いてくれた。


私もすぐさまそれに従う事にしたが、ある事に気が付いてしまった。


「でも順番に対処していたら札幌や福岡につく頃には……」


「今はそんな事を言っている場合じゃない、早く新庄‼」


「うん、そうだね、一人でも多く……」

 

フェイさんと佐山君の助言を得て私は竜王ヴァンアレスとゴラオンを召喚し、何とかガレリアを撃退する事には成功した


しかしガレリアによる被害は想像以上に酷く、特に援護が遅くなった札幌と福岡には甚大な被害が出たのである。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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