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浦島少女13

皆が一斉にこちらに視線を向けた、だからあんなドラゴンとかゴラオンみたいなもの凄いモンスターが私の言う事を聞いてくれるのか……でも、何で私なの?


「どうして選ばれたのが新庄なのだ、理由は‼」

 

私の抱いていた疑問を佐山君が代弁して聞いてくれた、私の為に本当に怒ってくれている様だ。優しいな、佐山君は……


「魂を定着させるには誰でもいいという訳ではない、年齢、体格、血液型、身体能力


そして何より性格が重要なのだ。何十億という人間が居る中でメリーシア様の魂を定着させられる適性を持つ人間は中々見つからなかった。


諦めかけていた時、ようやく探し当てた人物が葵様だったのだ……


奴らの作ったゲートを利用し誠に勝手ながら葵様を我らが世界【ゲルドラ】にお招きし


メリーシア様の魂を定着させた。だが我々の世界とこっちの世界では時間の流れが違う事を知らなかったのだ。


魂の定着には三日間を要してしまったのだが、向こうの一日はこちらの五年に相当した


つまりこちらでは十五年経過してしまっていたのだ。葵様には本当に申し訳ない事をしてしまった


私はそれに報いる為、葵様の為にはどんな事でもするつもりだ……」

 

フェイさんは私を優しい目で見つめながらそう話してくれた。


そうか、今まで私に優しかったのは、私の中に〈メリーシア様〉の魂が宿っているからだったのか……


「しかし、どうしてそちらの世界の人間ではなく選ばれたのが新庄だったのだ?


十五年という年月は〈ゴメン〉で済まされるほど短くないぞ⁉」


「だが、ガレリアに対抗できるのはヴァンアレス様やゴラオンだけだ


その両者をこちらの世界に召喚できるのはこちらの者だけなのだ


だからどうしても地球の人間にメリーシア様の魂を定着させる必要があった、葵様には申し訳ないと思っている……」


「申し訳ないで済む問題か‼新庄が新庄が十五年も行方不明になって、親御さんや友人がどれ程心配したと思って……」

 

今にも殴りかかりそうなほど興奮し詰め寄ろうとするが、周りの人間がそれを慌てて止めている。


しかし勢いの付いた佐山君は止まらない、そのままフェイさんに詰め寄っていく。


「止めて‼もういいから、本当にもういいの……でも有難う、佐山君」

 

怒りが収まらないとばかりにフェイさんに食って掛かろうとした佐山君を私は引き止めた


その気持ちは凄く嬉しい、でも事情を聞けば仕方がないとも思えた。


私が選ばれていなければガレリアによって人類は滅ぼされていたかもしれないのだ。


「しかし、新庄、君は十五年も……」


「私しかいなかったのだから仕方が無いよ、浦島太郎みたいになってしまったけど


死んでしまった訳じゃないし、〈青春よ、もう一度‼〉って感じで二度おいしいかもしれないじゃない。


だからもう止めて、お願い……」


「新庄がそう言うなら……」

 

佐山君は釈然としなかったみたいだが、何とか怒りを抑えてくれた。


よく考えてみれば私より彼の方が被害者なのかもしれない。


確かに現実では十五年も経ってしまったのだが、私には

その自覚がない。


気が付けば十五年経っていたというのが現状で、ビックリしたという以外の実害はないに等しいが


私のいなくなった十五年を過ごしてきた人達にしてみればまるで違うのだろう。


特に交際を申し込んでその翌日にいなくなられた佐山君の気持ちを思うと


自分の事ながらいたたまれない気持ちになる。でも有難う、感謝してもしきれないよ……


一方で怒りの矛先を向けられたフェイさんは殴られる覚悟をしていたのか


じっとしたまま動かず、座った姿勢で微動だにしなかった。


「フェイさんもゴメンね、地球の為に頑張ってくれたのに酷い事を言ってしまって。


私が地球を代表して言うのはおこがましくて気が引けるけれど、気を悪くしないで。


佐山君は私の為に言ってくれたのだから、ごめんなさいね」

 

ありのままの気持ちで素直に頭を下げると、フェイさんは嬉しそうに笑った。


「いえ、滅相もありません……それにしても、貴方は本当にメリーシア様によく似ている……やはり、貴方を選んで正解でした」

 

その時、温かな目で見つめるフェイさんを見て、私の背中に電気の様なモノが走った


フェイさんは国の行く末と、メリーシア様への忠義で頑張ってくれていると思っていたが


今ハッキリとわかった、フェイさんはメリーシア様を愛していたのだ。


だからこれほど私の事を思ってくれているのだ。私には〈女の勘〉などという上等なスキルは無い


だが私の心に定着されたメリーシア様の魂が激しく訴えかけてくる


おそらくメリーシア様もフェイさんの事を……


そう思うと、佐山君がフェイさんに対し感情的になり食って掛かったのもどこか頷けた


フェイさんはどういう気持ちで私と佐山君の仲を見ていたのだろう……ごめんなさい、女のくせに鈍感で……


私が自分の愚かさに気づき落ち込んでいると、今まで聞いているだけだった畠山総理がモニター越しに語り始めた。


〈事情はわかりました、そうなると新庄葵さんは日本にとって……


いや、世界にとって最重要人物と言う事になります、今後はわが日本政府が責任を持って貴方を保護します。


もちろんフェイ殿も一緒に居ていただきたいのですが、よろしいですか?〉


「ああ、かまわない」


〈では、フェイ殿にもう一つだけおうかがいしたい、あのガレリアという化け物は今後も再び襲ってくると思いますか?〉


 畠山総理としてはそこを一番聞きたかったのだろう、皆も思わず息を飲む。


「これはあくまで推測だが当分は攻撃してこないはずだ。ガレリアはその特性上魔力がなくては動かない。


メリーシア様によって魔力の枯渇した向こうの世界からこちらに運び込むならば人力による原始的な方法しかない。


それだと一日にせいぜい一体か二体だろう、ガレリアをこ

の世界に大量に運び込むには相当の時間を要するはずだ」


フェイさんの見解を聞いてホッと胸をなでおろす偉い大人たち。


畠山総理にも安堵の表情がうかがえた。


〈では、そういう事で今後もよろしくお願いします。新庄葵さん、フェイ殿……では後の事は頼むよ、勝間大臣〉


「はい、お任せください、総理」

 

勝間大臣がモニター越しに頭を下げると、畠山総理との通信が切れた。


「しばらくあの怪物からの攻撃は無いだろうとの事だが、それも確定ではない。


各自、警戒を怠らず、万全の態勢で備える様に。それと新庄葵さん、フェイさん、あなた方の事は我々が責任を持ってお守りしますからどうかご安心を」


勝間大臣の言葉と同時に武装した自衛隊の人が私とフェイさんを守るように立っていた。


「では今から警護が整った宿泊施設へと案内します、どうか我々とご同行ください。


あとご家族の方へ連絡もしておいてください、申し訳ないですが当分家には帰れないと思いますので。 


それと佐山参事官、君も新庄さんと一緒に居てくれ。いきなりこんな事態に巻き込まれて高校生の身では不安だろう


そんな時に知り合いがいると心強いモノだ、新庄さんの事を色々と支えてやってくれ」

 

勝間大臣の心遣いには感謝している、この人は他の偉そうな大人とは少し違う様だ。


「はい、了解しました。佐山参事官、責任を持って新庄葵、フェイの両名の身辺警護


及び連絡、世話係としての任務を遂行いたします‼」


背筋を伸ばし、敬礼しながら勝間大臣の言葉に力強く返事をした佐山君。


頭の整理もつかないまま訳の分からない事に巻き込まれ、世界を救う救世主という


身の丈に合わない重責を背負わされたままあれよあれよと話が進んで流されていく


心細さと不安を感じていただけに、佐山君がずっとそばにいてくれるというのは本当に心強かった。


家族とはしばらく会えなくなるかもしれないけど、その分佐山君とは濃密な時間を過ごせそうだ。


しかしそんな夢の様なシュチュエーションもフェイさんの気持ちを思うと手放しで喜ぶ気にはなれなかった


私とメリーシア様は別人だ、でもフェイさんは私と彼女をどこか重ねている節がある


その気持ちを考えると、どうにかしてあげたいのだが私には良い方法が思いつかない


私はこの時、いかに自分が子供で何もできない人間なのかをつくづく思い知った。


誰かに守られてばかりの人生、以前の私ならばそれも喜んで受け入れたであろう。


でも今は違う。私も誰かを守りたい、分不相応な事は百も承知だ、でも、そう思えて仕方がないのである


これもメリーシア様と魂を重ねたからこそ思える事なのだろうか?難しい事はわからないけれどそう感じた


いやそう思わずにはいられないのである。


そして今なら私にもわかる気がする、メリーシア様がなぜ自らの命を賭して世界を守ろうとしたのか?


もちろん全世界の人を守りたい気持はあるのだろうが、一番は〈大好きな人のいる世界を守りたい〉という事なのじゃないのだろうか?


私と一国の女王様を比べるのはおこがましいけれど、その気持ちはわかる、だって女の子だもん。

 


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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