浦島少女12
それから私たちはお互い照れてしまいそこから言葉を交わさず会議室へと向かった。
その部屋はそれほど大きいわけではなく十人ほどの偉そうなおじさんたちが険しい顔で座っていた
その中にはもちろんあの新崎正孝さんもいる、そして一番驚いたのはモニターでこの会議に参加している人物だ
その人がモニター越しにこちらに挨拶してきた。
〈初めまして、新庄葵さん、フェイさん、私は日本国の内閣総理大臣をさせていただいています畠山幸一です〉
総理大臣?日本で一番偉い人だよね、そんな人が私と話?頭が混乱して考えがまとまらない
どうすればいいのかもわからない為、言われるまま会釈をして椅子に腰かけた。
すると一人の若い男性が立ち上がり軽く頭を下げた後、会議の進行を始める。
「事態が事態ですので細かな挨拶などは割愛し早速本題に入りたいと思います。
今回のアメリカ軍と中国軍を襲った謎の生命体の正体と目的、そしてその対処法について話し合いたいと思います。
まずは確認から、あの漆黒の飛行生命体兵器の名前は〈ガレリア〉【ガジルス帝国】なる謎の国家が開発した生体兵器だとの事です。
そのガレリアについてわかっている事は、体長約2m、推定速度マッハ3・2で飛行可能であり
その皮膚の固さはタングステンに匹敵し、短距離空対空ミサイル〈AIM―9サイドワインダー〉や
20mm機関砲の攻撃を無効化します、両腕の爪が主武器であり
航空機機体の素材であるジュラルミンはおろか原子力空母の装甲も簡単に切り裂きます。
その恐るべき怪物が約100体でアメリカ軍と中国軍に攻撃してきました
それに対しここにおられるフェイ殿の所属する【フェルナンド聖王国】の兵器……と言っても良いのかは不明ですが
【竜王ヴァンアレス】は全長約32m、推定体重約120トン、推定速度マッハ7・2
口から吐く炎はタングステン並の硬度の皮膚を持つガレリアを一瞬で融解させることから見て、約3500℃から5000℃であると推定されます。
そしてもう一つの【巨大生体兵器ゴラオン】は全長約1・2km、推定重量約7億8千万トン
全身を体毛に覆われ、それによりガレリアの攻撃を無効化しています、種武器は複数の触手でガレリアを捕捉、撃滅したと思われます」
それを聞いていた防衛省の偉い人達は皆目を閉じ、何かを考え込んでいた。
今の説明は先程モニターを見ていた者達であれば嘘ではない事はわかっているのだが
改めて聞かされても信じ難いという表情を浮かべていた。
「ドラゴンとか全長一キロを越える化け物とか、我々は夢でも見ているのか?」
「体重100トンを越える生物が飛ぶなんて、そんな事は生物学上有り得ない。
ましてやマッハ7・2だと⁉超音速飛行機どころかミサイル並の速度ではないか⁉」
「それより全長一キロを越える生体兵器が自力で移動するとか、どういう仕組みになっているのだ⁉」
険悪な雰囲気の中、皆が不明点を口にし苛立っていた。未曾有の危機に対し明らかに混乱しているのがわかる
そんな空気の中で一人黙って聞いていた人が口を開いた。
「止めないか、騒々しい。信じられなくともこれは事実だ、そして我々はその脅威に対応しなければならないのだぞ
そんな浮足立っていて国民の安全を守れると思っているのか、馬鹿者共が‼」
一人の老人が一括すると、ざわついていた会議室内がピタリと静かになった。よくわからないけれどかなり偉い人なのだろうな……
「すみませんな、新庄葵さん、そしてフェイ殿。高い給料をもらっておきながら
いざとなったらみっともなく慌てふためきよって……誠に見苦しい所をお見せしました」
丁寧に頭を下げるその老人、フェイさんもただならぬ雰囲気を感じたのか目を細めその老人の事を尋ねた。
「貴殿は何者なのだ?」
「私は防衛大臣勝間久重と申す者、ここの責任者と思っていただいて結構です。
さて、フェイ殿、我々も切羽詰まっているのは事実でしてな、できれば貴殿の知っている事を教えていただきたい。
【ガジルス帝国】と【フェルナンド聖王国】とは何か?何処にあるのか、そしてどうして突然我らの前に現れ敵対するような行動をとるのか?
そして、そこの可愛らしいお嬢さん新庄葵さんがどうしてあのような強大な怪物を従えることが出来るのか?
その辺りを教えてはいただけませんかな?」
防衛大臣 勝間久重さんはあくまで冷静な態度のまま柔らかい口調で問いかけてきた。
しかしその言葉遣いとは裏腹に目つきは鋭く、心の奥底では別の意図が隠されている気がしてならない
少なくとも私達に強い警戒心を持っている様子が見てとれた。
しかしその辺りについては私も知りたかった。何故私にあんな力があるのか?
フェイさんは何者で、何故私に従う様な言動をするのか?
そしてそれが私のいなくなっていた十五年と何か関係があるのか?どうしても知りたい。
「わかった、説明しよう……よろしいですね、葵様?」
「へっ?ええ、よろしいです」
確認する様に問いかけられたが、突然振られた私はびっくりしておかしな返事を返してしまった。
タダでさえ緊張しているのに急にこちらに振るのは止めて欲しい
とはいえ〈今から質問しますよ〉という予告も変ではあるが……
しかしそんな私の気持ちなど気にすることも無くフェイさんは淡々と説明を始めた。
「まず我々の国【フェルナンド聖王国】はこの世界とは別次元に存在する
【ゲルドラ】という世界にある一国家だ、こちらから見れば〈異世界〉というヤツだろう。
二十年前我が国と【ガジルス帝国】とで戦争が起きた、両国の間で三年ほど膠着状態が続いた後
相手は生体兵器〈ガレリア〉を開発、実践投入してきたのだ。
【ゲルドラ】では科学と並行する様に魔術の研究も進んでおり、幾人もの魔導士が日々研究開発を進めていた
その科学と魔術の結晶ともいえるのが【生体魔道科学兵器】なのだ。
ガレリアの出現により我が国は甚大な被害を受け一気に劣勢に立たされた。
勢いに乗る【ガジルス帝国】は戦線を広げ世界中を相手にして侵略戦争を始めたのだ。
我が国では遅ればせながらガレリアに対抗すべく開発されたのが【ゴラオン】だ
しかし【ゴラオン】はその巨大さ故に移動するだけで町や村を破壊してしまう為、その活動範囲は海を中心に展開するしかないという欠点がある。
しかし海だけではガレリアの侵攻を止められないと悟った我が国のメリーシア女王様は
竜王ヴァンアレス様に助力を頼む事にした、元々メリーシア様は正当な竜王の血を引くお方でしたので竜王様も助力を承諾してくれました。
この二つの戦力によって【ガジルス帝国】と互角以上に戦えるようになった我が国だが、そこには大きな誤算があったのだ……」
思いつめたような深刻な顔で話を一旦中断したフェイさん、何があったのだろうか?
「大きな誤算とは?何があったのか聞いても良いかね?」
勝間久重防衛大臣がすかさず問いかけると、フェイさんは無言で頷いた。
「ガレリアとゴラオン、ヴァンアレス様との戦闘は苛烈を究め、その戦闘に巻き込まれて膨大な人間が死んだ
【ゲルドラ】では全世界の半数以上の人間が死に、十三もの国が滅びた
ゴラオンとヴァンアレス様は無敵を誇ったが、無限のごとく湧き出て来るガレリアのせいで終わりの見えない戦いへと突入したのだ。
このままでは全人類が死滅してしまうと考えたメリーシア様はある決心をされた
それは己の命と引き換えに【ゲルドラ】から魔力を消滅させる事、つまり魔力自体を封じてしまおうと考えたのだ……」
沈痛な面持ちで唇を噛みうつむくフェイさん、常にクールで冷静な彼がこんな顔をするなんて……
しばらく無言のまま目を閉じうつむいていたが、思い返したかの様に再び話を始めた。
「話を中断してすまない、メリーシア様は自らの命を懸けて魔力の封印に成功した
これによって我々のいた【ゲルドラ】の世界ではで魔法や魔術などの魔力系統の力が一切仕えなくなってしまったが
人類が滅びてしまうよりはマシだからな、魔力の供給が無ければガレリアは動かない。これで長きにわたる戦争も終わり平和が訪れると誰もが思った。
だが【ガジルス帝国】は諦めなかった。奴らはとんでもない事を考えたのだ、それがこの世界、地球への侵攻だ」
今までどこか別世界の話と思い聞いていた人達が急にざわめき立った。
「どういうことだ、それは⁉」
「何故、異世界の人間がこの地球に侵攻してくるのだ‼」
「きちんとわかる様に説明しろ‼」
急に皆が色めき立ち、そこにいるほとんどの人が彼を責め立てたがフェイさんは意外にもそれを何も言わずに受け止めている。
しばらくその殺伐とした状況が続いたが、またもやその騒ぎを一括したのは勝間大臣であった。
「いい加減にせんか‼今は責任追及とかしている場合か⁉
我々は一刻も早く事情を知り、対策を練らなければならんのじゃ、騒ぐだけなら子供でもできるわ、愚か者共‼」
偉い人がお怒り気味に怒鳴った言葉の効果は絶大であった、誰もが口をつぐみ先程までの騒ぎが嘘の様に静まり返る。
軽くため息をついた後に再び笑顔を見せた勝間大臣はフェイさんにむかって優しく語り掛けた。
「すまんのう馬鹿共がうるさくして、話の続きを聞かせてくれるかな?
どうしてその【ガジルス帝国】はこの地球を狙って来たのか?
そもそもどうやってこちらの世界とそちらの世界が繋
がったのか?
封じたはずのガレリアはどうしてこの地球で暴れているのか?その辺りを教えてはくれないか」
しばらく黙って聞いていたフェイさんは勝間大臣の言葉にゆっくりと頷いた。
「かまわない、こちらの世界の人間にとっては、とばっちりを受けたみたいなものだからな
責めたくなる気持ちもわからんではない。だが一つ言っておきたいのは
この世界にガレリアを持ち込んだのは私達【フェルナンド聖王国】では無く【ガジルス帝国】だという事だ……」
フェイさんの言葉に下を向きうなだれる人達、確かにここでへそを曲げられて〈もうお前等なんか知らん、勝手に死ね〉
とか言われたら人類が滅亡してしまうかもしれないのだ
全世界の命運はこの人にかかっているといっても過言では無いのである。
「話が逸れたが、先程の質問に答えよう。まず魔力というのは、別次元にあるエネルギーの様なモノで
魔術によってゲートを開く事によってその恩恵を受けることが出来る
メリーシア様はその身を挺してゲートを封印し、【ゲルドラ】に魔力提供ができない様にしたのだ。
だが【ガ
ジルス帝国】の奴らはある事を考えた、それは〈【ゲルドラ】に直接魔力提供ができないのであれば
別世界を経由してバイパス的に魔力提供をする〉というモノだ。その経由地として選ばれたのがこの地球という訳だ。
だが【ゲルドラ】とこの地球を繋げるには両サイドからゲー
トを開かなければならない
その為に一人の人間が選ばれた、それがこちらの世界に居る〈水野〉という男だ」
その名前を聞いた瞬間、横にいた佐山君が立ち上がった。
「水野って、帝都大学の水野教授か⁉【脳の記憶と思考の情報化によるアウトプットシステムとその活用法について】の論文はそちらの世界から来た技術だったのか⁉」
思わず立ちあがり鬼気迫る勢いで質問する佐山君に対し、フェイさんはコクリと頷いた。
「ああ、その通りだ。奴らは水野という男を選び、魔力を必要としない思念派で水野という男の脳に
〈ゲートの開け方〉の方法を教えた、功名心に駆られた水野という男は奴らの口車に乗せられ話に乗ったのだろう
【ガジルス帝国】の真の狙も知らずに……
ゲートが開いてしまえばこちらに魔導士を送り込み地球への侵攻作戦を進めるべく、奴らはこの地球にガレリアを運び込んできたのだろう
それを知った我々は【ガジルス帝国】の野望を阻止するべく一つの方法を思いついた
それは〈死んでしまったメリーシア様の魂をこちらの世界の人間に定着させる〉というモノだ……」
その時、私は全てを悟った、そのメリーシア女王様の魂を定着させる為に選ばれた人間というのが……
「その対象として選ばれたのが、ここに居らっしゃる新庄葵様という訳だ」
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