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第45話 「シンディの心」


「……ねぇ、カーラちゃんに……わたしは必要?」


「……あたり前でしょ」


 レックスが死んでから、シンディは度々同じ質問をカーラに繰り返していた。その質問をする度に、カーラは少し辛そうに顔を歪める。

だが、シンディがこの問いを止める事は決して無い。止める事は出来ない。なぜなら、それがシンディの「生きる意味」だからだ。


 「例の事件」が起こした衝撃は、当時5歳であったシンディが受け止めるにはあまりに重い。


 自分の勝手な行動でレックスを死なせてしまった。その原因の多くは自分にある。その事をシンディは理解していた。

 自分がレックスから離れなければ……。不思議な階段に興味を()かれて上らなければ……。犬に囲まれた時に木に登って助けなど呼ばずに、大人しく食い殺されていれば……。

 こんな自分など死んだ方がいい。そうシンディが考えてしまったのも無理はなかった。


 しかし、それを否定した者がいた。


「死んで詫びようとか思ってんじゃねぇだろうなっ⁉ 勘違いすんな‼ お前が詫びる相手はレックスじゃねぇっ‼ カーラだよっ‼ まずカーラに謝るのがスジだろうがっ‼ それともお前も死んで、カーラを1人ボッチにするつもりかっ⁉」


 レックスが死んだ時、ユーキから言われた言葉。それが現在のシンディの「在り方」を決定づけた。

 カーラを1人ボッチにはしない。それがシンディの「生きる意味」だ。そして、自分が居なくてもカーラが1人ボッチじゃなくなったら……。カーラに自分が必要無くなったら……、あの世に行って、レックスに謝ろう。


 このような考えを持っている幼児に、(すこ)やかな成長など望むべくも無いだろう。事実、シンディは滅多に口を開く事も無く、学校へ行くようになっても友達の1人もいない。

 それはレックスの死から3年が経過しても変わる事は無い。時間がシンディの心の傷を癒す事は無かった。


 ただ幸か不幸か、レックスの死が影響を与えたのはシンディだけでは無かった。当然、カーラにも相応の変化をもたらす。

 快活で、ハッキリものを言うカーラは敵も多いが、味方も多かった。学校でも仲の良いグループを作り、よく遊んでいた。だがレックスの死後は、友達とも縁を切り、新顔の孤児たちとも仲良くしようとはしない。

 カーラのそばにいる人間はシンディ1人だけになっていた。


(……これじゃ、レックスちゃんに謝りに行けないよ)


 シンディの生存という事実だけを見るのなら、これも幸運と呼べるのだろうか?だが残念ながら、この幸運は誰1人として幸せには導かない。

 シンディとカーラは2人だけの閉じた世界で、停滞した時を過ごしていた。


 だが、そんな(とど)まり(よど)んだ日々のある日、突如変化が訪れた。ユーキがカーラに話しかけてきたのだ。

 きっとカーラは無視をするか、怒鳴りだす。そう思っていたのに、何と会話をしているではないか。あれほどユーキを嫌っていたのに、あれほど憎んでいたのに、どういう心境の変化だろうか?


「最近、菓子作りにも挑戦しててよ。プリンを作ってみたんだ。シンディもどうだ?」


 ユーキは当たり前のようにカーラの隣にいるシンディにも声をかけ、手作りのプリンを勧めてくる。

 目の前に置かれたカップとスプーンにどうしていいか分からず、ついカーラの方を見上げてしまった。


「食べてみたらいいんじゃない? ……意外とおいしいわよ」


 カーラはそう言って、自分のプリンを口につける。「おいしい」と言いながらプリンを見るカーラの目は、まるで不味い食べ物を見るような目つきだ。

 ……不思議な気分だ。言葉と表情が噛み合わないカーラの顔を見ていると変な気分になってくる。……だけど悪い気分では無い。むしろ、もっと感じていたい。もっとカーラの顔を見ていたい。こんな気分はいつぶりだろう?こんな気分の事を、何と言うのだっただろう?


「意外とは余計だ。さ、シンディも食ってみてくれよ」


「…………ぅん」


 プリンを乗せたスプーンを口に運ぶ。すると冷たくて甘いものが口全体に広がり、鼻まで甘い香りが抜けて、溶けて消える。

 お菓子を食べるのが久しぶり、という訳ではない。プリンだってたまに口にする。なのに何故か、このプリンは遠い昔に味わったような、懐かしい香りがした。

 シンディはプリンの味に夢中になり、あっという間にカップの中は空になった。


「どうだ? 初めて作ったにしちゃ、悪くない出来だと思うんだが……。美味かったか?」


「…………ん。…………ぁりがと、ユーキお兄ちゃん」


 多分、そこまで美味しいものでは無かったと思う。お店のプリンの方が、もっと香りが良く、もっと甘くて、もっと舌触りが良い。でも何故か、シンディはユーキの作ったプリンの方が好きだった。

 だからユーキに礼を言う。「ありがとう」と「ごめんなさい」はしっかり言いなさいと昔、誰かに教わったから……。


「こんなの……、誰でも作れるんでしょ? クラスにも作ってた子がいたもの」


「そう言ってしっかり食ってんじゃねぇか。……良けりゃ作り方、教えてやろうか?」


「……いらないわよ」


 ツンケンとした物言いではあるが、カーラがこんなに自分以外の人と話すのを見るなんていつぶりだろうか?

 このまま、カーラとユーキが仲良くなってくれればいい。自分でも理由は分からないが、ユーキなら安心してカーラを任せられる気がする。そしてユーキがいれば、きっとカーラにもまた友達が出来る。そうなれば……。


(……あれ? また……、何か変な気持ち……)


 疑問に思った自分の感情。しかしシンディは、それを深く考える事は無かった。なぜなら、自分の残りの人生に自分の気持ちは関係ないのだから。ただカーラが1人にならないように一緒に居て、自分が必要無くなったら消えるだけの人生なのだから。

 そんな風に考えるシンディは、自分が「ある重要な事」を出来ていない事に気付いていない。それが出来ない理由に気付かない。


 かつてユーキはシンディに言った。「まずカーラに謝るのがスジだ」と。そしてシンディは父親に「ありがとう」と「ごめんなさい」はしっかり言いなさいと(しつけ)けられた。だが、シンディはカーラに謝っていない。「レックスが死んだのは自分の責任だ」と。


 なぜ言わないのか、なぜ言えないのか、シンディはそれを考える事すらしない。ただ、沈黙を続ける罪悪感がシンディを苦しめる。だからシンディは沈黙する。だからシンディは考えない。

 そんなシンディの停滞した日々にも、終わりが近づいてきた。


「……計画の実行は今夜だ。僕はあいつらと同行して時間を稼ぐ。君はその間に予定通りに……」


「わかってるわ。20時に森の一番高い木の下、よね?」


 ある日、勉強の苦手なシンディの為にカーラが教えてくれていた時。唐突に男の子が現れた。男の子の名前はアベルだ。他の事は何1つ知らないが、名前だけは知っている。

 アベルはカーラと話し、時折シンディに冷たい視線を向けてくる。だが、シンディはアベルに何も感じない。安心も不安も、好意も嫌悪も。ユーキの時に感じた様な、落ち着かない気分になる事も無い。


 そのすぐ後、カーラとの勉強会はお開きとなって孤児院へと帰った。……帰ったすぐ後にカーラがまた出掛けようとする。シンディもついて行こうとするが「大事な用があるから留守番してて」と言って、1人で行ってしまった。


 部屋で1人、カーラの帰りを待つが一向に帰ってくる気配はない。夕方になり、日が落ちても帰って来ない。


(20時に、一番高い木……)


 なぜ行こうという気になったのか、シンディは自分でも分からない。「一番高い木」というのが、自分の思っている木の事なのかも分からない。だが、シンディは「その場所」へと向かった。


 読みでも、勘でも無かった。だが「その場所」にはカーラは居た。そしてアベルも一緒に……。

 2人は何かを話し、カーラがアベルに布で隠された「何か」を手渡した。アベルが布を取ると、その下には鳥カゴの中に入った妖精がいた。そして妖精も交えて3人で更に話し込む。時折カーラの怒鳴り声が聞こえるが、話の内容はよく分からない。


 ただ黙ってその様子を見ていたが、突然アベルがカーラを殴った。お腹を殴られたカーラは、力なくその場に崩れ落ちる。

 その姿を見て、シンディの心がザワつく。だが、何をすればいいのか、何をしたいのかが分からない。


 シンディが己の心に戸惑って立ち尽くしていると更に2人の大人の男が現れ、アベルと親し気に話した後、カーラを連れて森の奥へと消えて行く。


「…………カーラちゃん」


 誰も居なくなった森の中でシンディは呟き、そして考えた。……何かを真剣に考えるという事自体が久しぶりだ。


 何が起きたのか……。カーラがアベルに連れ去られた。

 どうして起きたのか……。分からない。

 放っておくとどうなる……。分からない。

 自分はどうしたいのか……。分からない。けどこのままは、嫌だ。

 なら、自分に何ができるのか……。何も、できない。

 でも、できる人を……、知っている。

 あの人なら……、ユーキお兄ちゃんなら……。


 ユーキはレックスと一緒に、迷子になった自分を探しに来てくれた。(むら)がる犬たちを追い払ってくれた。レックスを殺した亀の化け物から助けてくれた。

 ユーキには「力」がある。それは戦う力という意味だけではない。何かを為すために行動する力……、そして決して諦めない力がある。それは、どれもシンディにはない「力」だ。


 だから、シンディは駆け出した。ユーキに助けを求める為に。それはユーキの都合や気持ちを一切考慮しない身勝手な想いだった。

 それでもシンディは走る。他に手段が思いつかないから。ユーキなら、きっと助けてくれるだろうという謎の確信があったから……。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 日が落ちて間もなく、この時間になると冒険者ギルドを利用する者も少ない。殆どの者は今日の仕事を終え、家路(いえじ)に、宿に、(さか)り場に移動しているからだ。

 そんな静かなギルド内のラウンジでバルトスは落ち着かない様子で、ただ弟子の帰還を待っていた。


「師匠っ! やっぱりアレクたちは家に帰ってませんっ!」


 そこに駆け込んできたのは弟子のエメロンだ。待ち望んでいた弟子の帰還ではあったが、その報告は喜ばしくない。


「チっ……、病院にもいやしねーっ。……あのバカガキ、一体どこをほっつき歩いてやがるっ」


 盗賊たちの襲撃の後、町へと帰還したバルトスたちだったが、ギルド内のどこを見てもアレクたちが居ない。不測の事態の際にはギルドを集合場所と決めていたのにも関わらず、だ。

 行方不明となったアレクたちを探す為、バルトスたちは3手に別れて捜索を開始した。


 ユーキは孤児院を、エメロンはバーネット家を、そしてバルトスは町の病院を。

 しかしアレクたちは家に帰っている訳では無く、怪我をして病院にいる訳でもない。こうなれば孤児院も期待薄だ。


 十中八九、アレクたちは盗賊の手に掛かったと思われる。バルトスたちに対するあの時間稼ぎはこの為だったのだ。目的は、子爵家に対する身代金目当ての誘拐か、それとも……。

 誘拐が目的だったなら、アレクたちの命はまだ無事である可能性が高い。だがそれは何の確証も無い推測だし、それが正しかったとしても時間と共にアレクたちを救出する可能性はどんどん下がっていく。


「エメロン、バーネット子爵にはこの事を話したか?」


 バルトスの質問に、エメロンは一瞬戸惑う。

 アレクが子爵令嬢である事実はバルトスには秘密にしていた。最初はバルトスを疑っていたからだ。もちろん今では疑ってなどいないが、言う機会が無くてそのままになっていたのだ。

 しかし、よくよく考えてみればバルトスが知っているのもそこまで不思議では無い。その程度の事は調べれば分かるのだろう。


「……いえ。ヘンリーさんは不在で、アレクたちのお母さんのエリザベス様に応対して貰いましたけど、その……、アレクは冒険者になった事も秘密にしているみたいで……」


「じゃあ、アレクたちが帰ってねーコトだけ確認しただけか……」


 バルトスは考える。今、最も必要な情報はアレクたちの安否と所在だ。何の手がかりも無い状態でこれらを知る為には人海戦術を行う他に方法は無い。だが使える人員はと言えば自分とエメロン、まだ孤児院から帰ってないユーキだけだ。圧倒的に人手が足りない。


 足りないなら増やすしかない。だがそれを行うという事は、バルトスにとっては文字通り自殺行為となりかねない。貴族の娘が(さら)われてしまったのだ。(おおやけ)になれば、監督不行き届き程度で済む話ではない。


 自分とアレクたち、お互いの命を天秤に架ける。

 誰だって自分が可愛い。それは当然だ。それに、気ままな冒険者稼業をしているように見えるバルトスにだって家族がいる。自分1人の判断で家族を巻き込む訳にはいかない。

 しかし……、アレクだって可愛い弟子だ。バカなガキではあるが、馬鹿な子ほど可愛いとも言うだろう。我が身可愛さに見捨てる事は出来ない。


「クソっ! あー、メンドクセェっ‼」


「師匠?」


「エメロンっ、オレは今からバーネット子爵家に行って事情を説明してくるっ。そーすりゃ、バカガキたちの捜索に人手が出せるはずだっ」


「でも、そんな事をしたら師匠は……」


 どんな罰を受けるか分からない。本来なら、全て自己責任で片付いてしまう冒険者だが、それが貴族となればそうはいかない。

 ヘンリーやエリザベスを個人的に知っているエメロンは一瞬、そこまで酷い罰を受ける事は無いだろうとも思うが、それもアレクとミーアが無事に戻ればの話だ。もし……、考えたくも無いが、もしアレクたちが無事でなかった場合、バルトスが無罪放免となるだろうか?

 それに、冒険者は信用が一番重要な商品だ。その場に居ながら弟子を盗賊に誘拐された、などという話が広まればバルトスの信用が落ちるのは明白だ。


「メンドクセェがよぉ、ンなコト気にしてる場合じゃねーんだよなぁ。エメロン、テメェはクソガキが帰ってきたら一緒に家に帰れ。テメェらは用無しだ」


「そんなっ⁉ 僕も一緒に行きますっ!」


「今は1分1秒でも早ぇ方がいい、クソガキを待ってるヒマはねーんだよ。だからテメェが待っててやれ。それに子爵家が動きゃ、テメェらに出来る事ぁ何もねー。邪魔だからクソして寝てろ」


 それは、バルトスなりにエメロンとユーキを巻き込まないようにする為の方便だった。

 まだ15歳とはいえ、2人の戦闘能力は高い。もし盗賊と戦闘になった場合、十分に戦力として数えられる。特にエメロンの魔法はあらゆる局面で役に立つだろう。だが、2人はまだ成人にもなっていない15の子供だ。

 だからバルトスは、エメロンに反論の余地を与えないように矢継ぎ早に指示をする。


「でもっ、僕たちにだって何か……」


「グダグダ言ってる時間も惜しいんだよぉ。いいか、こりゃ師匠としての「命令」だ。テメェらはバカガキの捜索には加わるな」


 それでも食い下がろうとするエメロンにバルトスは仕方なく「命令」した。これを出されればエメロンは黙るしかない。

 師弟の関係を結ぶ際に交わされた「命令には絶対服従」というバルトスと3人の約束。それを勝手に破る訳にはいかない。


「いいな? ンじゃ、オレは行ってくる。クソガキにもちゃんと言っとけよっ」


 最後にそれだけを言ってバルトスは冒険者ギルドを出て行った。残されたエメロンは歯嚙(はが)みをしながら立ち(すく)む。

 アレクの……、大好きな女の子の危機に何も出来ない自分の無力を呪いながら……。




「エメロンっ! こっちは空振りだっ! そっちはどうだったっ⁉」


「……ユーキ」


 それからしばらくして、ユーキがギルドに現れた。予想通り孤児院にもアレクとミーアはおろか、アベルも居なかったらしい。

 そしてエメロンはバルトスとの会話、そして「命令」の内容をユーキに伝えた。


「クソっ! あのオッサン、俺たちの事をナメてんじゃねぇのかっ⁉」


「……多分、師匠は僕たちの事を気遣ってくれたんだと思う」


 話を聞いたユーキは当然の(ごと)く怒りを(あら)わにする。バルトスの意図(いと)()んだエメロンがフォローをするが、それで収まるような怒りならユーキは最初から表に出したりはしない。

 それにユーキにだって、バルトスの考えくらい分かっている。分かってはいるが、怒りが収まらないのだ。バルトスへの、ではなく無力な自分への……。

 だからこそ、ユーキは引く事が出来なかった。


「余計なお世話ってヤツだろっ⁉ 「命令」なんざ、関係ねぇよっ。エメロンっ、アレクを探しに行くぞっ!」


「でも、それは……。それに……、どこを探すつもり?」


「そ、そりゃあ……」


 だが、現実問題はエメロンの言う通りだ。たった2人で闇雲(やみくも)に探し回っても見つかる訳が無い。だからこそ、バルトスは罰を受けるのを覚悟の上でバーネット子爵家に事情を伝えに行ったのだ。

 かと言って、じっとしているなんて出来はしない。家に帰って寝るなんて論外だ。

 何か、何か手は無いかと考える。しかし、いくら考えても名案など浮かばないまま2人は沈黙の時を過ごした。


 そして、どれくらいの時間が経ったのだろう。

 基本的にユーキもエメロンも、何の根拠も無く無策で動く事は出来ない性格だ。だから根拠を探す。策を練る。しかし今回に至っては情報が無さ過ぎる。いくら考えても打開策など、その手掛かりすら掴めない。そして、流れる時間は焦りばかりを(つの)らせて、思考を更に混乱させる。


 完全に手詰まりになっていた時、不意にエメロンの「……あれ?」という疑問の声が聞こえた。


「どうした、エメロン? 何か思いついたのかっ?」


「いや、そうじゃなくて……。あれ……、シンディちゃん、だよね?」


 2人の居るラウンジからはギルドの入り口のホールが良く見渡せる。その入り口に居た少女は、確かにシンディだ。

 今でこそユーキたちがギルドに居る事も馴染んだが、8歳の少女がギルドに居る姿は異様だ。自分たちがギルドに初めて来た時に注目されたのも頷ける。もし昼間でギルドに人が大勢いれば、さぞ注目を集めた事だろう。


「なんでシンディがギルドに……? しかもこんな時間に……? 1人か? カーラはどうした?」


 突然ギルドに現れたシンディの存在に疑問は尽きない。

 今はアレクたちの件の方が重要だが、そちらの手がかりはゼロの状態だ。対してシンディは、今ここに居る。緊急性があるとは思えないが、放っておく事も出来ない。

 そう考えたユーキはエメロンに目線で合図を送り、頷いたエメロンとともにホールへと降りて行った。


「シンディ、どうしたんだ? カーラはどこ行った?」


「…………ユーキお兄ちゃん。…………カーラちゃんを……助けて」


 アレクたちを探す道標(みちしるべ)を見失っていたユーキたちの元へ、新たなトラブルが迷い込んだ。

 しかし、そのトラブルの先がアレクへと続いている事を、ユーキたちはまだ知らない。


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