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第6話 「王都のギルド」


「……ここが、冒険者ギルド? イメージとちょっと違うわね……」


 王都・エステリアの冒険者ギルドに到着したカリーチェは、開口一番そんな事を口にした。

 一体どんなイメージを持っていたのかは知らないが、流石に王都のギルドは田舎町のシュアープのギルドとは規模が違う。建物の大きさも、職員の数も、仕事を求める冒険者たちの数も、全てが桁違いだ。ついでに、シュアープのギルドで感じた「臭い」も無い。清潔なものだ。


「中も人が多いな……。おい、(はぐ)れんなよ?」


「人を子供扱いしないでよっ!」


「……いや、子供だろ?」


 そんなやり取りをしながら、ユーキとカリーチェの2人は案内板に従って受付へと向かう。幸い、所属変更の手続きも、新規登録の手続きも同じ受付でしてもらえるようだ。


「んじゃ、俺は先に所属変更の手続きをしてっから、お前はそこのテーブルで登録用紙を書いとけよ」


「え……? ちょっと……」


「分からねぇトコがあったら、とりあえず飛ばしとけ。後で教えてやっから。知らねぇ人に声をかけられてもついてくんじゃねぇぞ?」


「子供扱いしないでってばっ!」


 カリーチェの文句を無視してユーキは移動する。運良く受付に並ぶ者は居なかったので、そのままカウンターへと顔を出した。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「あぁ、所属変更の手続きに来たんだけど……」


 受付嬢がにこやかに話しかけてきたが、こちらもシュアープのギルドとは随分(ずいぶん)違う。何と言うか、営業マニュアルに沿()ったかのような挨拶に聞こえるのだ。

 あくまでユーキの個人的な感想だが、シュアープのギルドの受付嬢……、師匠・バルトスの奥さんの応対の方が好感が持てる。


 とはいえ、事務手続きにそのようなものは不要なのかもしれない。

 ユーキは少しだけシュアープのギルドを懐かしく思いながらも、淡々と手続きを進めていった。


「15分くらいか……。思ったより早く済んだな」


 事務的に、無駄なく手続きを行う受付嬢の仕事は速く、予想の半分くらいの時間で手続きは終了した。これで「インヴォーカーズ」は王都のギルドで仕事を行う事が出来る。あまりの仕事の速さに、ユーキは受付嬢への評価を改めていた。


 自身の用事を終えたユーキがカリーチェを探すと、先程のテーブル横の椅子に座ってこちらを睨んでいる姿が見えた。

 もう登録用紙を書き終えたのだろうか?それとも、分からない所が多すぎて空白だらけかも知れない。

 まぁ、それならそれでも良い。どうせエメロンたちが来るまでは暇なのだ。そう思って登録用紙を覗き込んだのだが……。


「ちゃんと書けたか? ……って、おいっ! お前っ、何も書いてねーじゃねぇかっ⁉」


「…………」


「名前すら書いてねーって、どーいうコトだよっ⁉」


 テーブルの上に置かれた登録用紙は白紙だった。

 慣れていないだろうし、時間がかかるのは分かる。「斡旋を希望する仕事の種類」など、いきなり書こうとしても難しいだろう。しかし、名前も書いていないのは問題外だ。

 だが、その問題外の答えはユーキにとっては予想もしないものだった。


「字……、読めない……」


「……はぁっ?」


 「字が読めない」と、カリーチェはそう言ったのだ。理解し(がた)いその言葉に、ユーキは素っ頓狂な声を上げてしまう。


 現在のブラムゼル大陸における識字率は高い。それは(ひとえ)にブライ教の行っている『教会学校』のおかげだ。大きな町はもちろん、小さな村にも出張所を立てたりして教師が巡回しているという話だ。

 よっぽどの辺境か、スラム育ちでもない限り、カリーチェくらいの歳ならば、読み書きや簡単な計算くらいは出来る筈だ。


「……お前、マジで言ってる?」


「ジョーダンで……っ、こんな事言う訳ないでしょっ⁉」


 再度確認をしてみるが、間違いは無さそうだ。まるで辱めを受けたような気分になったカリーチェは怒り気味で叫ぶ。

 決してユーキは馬鹿にしようとか、そういう気は無かったのだが、ここは素直に謝った方が良い。


「わ、悪かったってっ。……んじゃあ、俺が代筆してやっから質問に答えてくれ」


「……ぬぐぐ」


 ユーキは謝って、解決策も提示したというのに、カリーチェは何が気に入らないのか(うな)っている。


 ……しかし、カリーチェの事を「お姫様」か「お嬢様」か、なんて考えていたが大きな勘違いだ。読み書きすら出来ないなんて、教養以前の問題だ。

 しかし、スラム育ちにしては生活力も体力も無さ過ぎる。『教会学校』も開かれない程の辺境の生まれか、よっぽど特殊な生い立ちなのかも知れない。


「……まぁいいか。とりあえず順番に聞くぞ? 名前・年齢・出身は?」


「……名前はカリーチェ。歳は18。出身は……」


「おいおいっ! 待て待て待てっ‼」


 いきなり叫んだユーキに、カリーチェは戸惑う。

 別にカリーチェが喋るのが早くてペンが追い付かなかったとかではない。またしても信じ(がた)い内容の言葉がカリーチェの口から放たれたからだ。


「……今お前、何歳だっつった?」


「18よ」


「…………」


 変わらぬ答えを聞いて、ユーキは改めてカリーチェの身体を見る。

 少しキツめの目つきだが、あどけない顔に、低い身長。立ってもユーキの胸くらいまでしかない。長い黒髪を2つに結んでいるのも、幼く見える原因かも知れない。……どう見ても12、3歳だ。

 しかしよく見てみると、胸の膨らみは他の見た目とは不釣り合いに立派なものだ。ここだけを見れば12、3歳には見えない。


「……どこ見てんのよ?」


「別に……。ってかお前、本当に18歳か?」


 ユーキは16歳……。とても目の前の小さな少女が自分よりも年上には思えない。にわかに信じ(がた)い事実に再度問うが、カリーチェは半目で頷くのみだ。

 しかし、疑っていてもしょうがない。カリーチェが何歳だろうとユーキには関係ない。こんな所で時間を取るよりは先に進めようと、ユーキは問題を棚上げした。


「んで……、名前はカリーチェ。……ファミリーネームは無しでいいんだな? それから、出身は……?」


 昔はともかく、現代では殆どの人がファミリーネームを持っている。

 しかし辺境の部族なんかでは、未だにファミリーネームを持たない民族もいる事をユーキは知っていた。エルフ族なんかも持っていないらしい。カリーチェもその口かも知れない。

 だがその後の「出身」の問いに、カリーチェは口を(つぐ)んだ。


「…………」


「……おい、出身も秘密か? つっても、ここが空欄じゃ冒険者登録できねぇぞ?」


「……たぶん、……エクメーネになる、……と、思う」


 ユーキの詰問に、カリーチェは重い口を開いた。

 しかし、どうにもハッキリしない。「と思う」というのは一体どういう事だ?自分の出身地が分からないとでもいうつもりか?

 ただ、カリーチェの口から出た地名が帝国の帝都・エクメーネというのは予想通りだった。とはいえ、このカリーチェの様子を見ると、本当にエクメーネが出身地かも怪しい。


「お前、ホントは記憶喪失か何かじゃねぇのか?」


「んなワケないでしょっ! ほらっ、さっさと次いくわよっ、次っ!」


「…………」


 カリーチェの様子は明らかにおかしい……。ユーキが記憶喪失を疑ったのも仕方の無い話だ。

 カリーチェは物を知らなさ過ぎる。文字が読めず、魔物の知識にも乏しい。『一般魔法』を使った道具も物珍しそうにしていたし、一体どこで生まれ育てばこんな物知らずになるというのか?


「……はぁ、まぁいい。次いくぞ」


 しかしユーキはこの疑問も棚上げにした。

 キツく問い詰めれば話すかもしれない。しかしカリーチェの様子を見れば話したくないのは明白だ。なら、無理に聞き出す必要も無いだろう。

 カリーチェは悪巧みが出来るような性格には見えないし、話したくなれば勝手に話すだろう。


 そう考えて次の項目へと進んでいく。

 「資格」は予想通り、何も無し。

 「スキル」も、特筆するものは無いようだ。

 「斡旋を希望する仕事の種類」も、よく分からないようなので「特に無し」と記入した。


 「スキル」の項目の際、「それって魔力感知とか、オートガードみたいな?」なんて言い出した時は頭を抱えた。

 魔力を感知する事が出来るのなら確かに立派なスキルと言えるだろうが、そんな事が出来る人間なんて聞いた事が無い。それに「オートガード」とは一体何なのだろうか?全くの意味不明だ。


 そんなカリーチェにユーキは辛抱強く説明をして、規約事項の説明も一通り終えた。

 無駄に疲れた感のするユーキだったが、必要事項を書き終えた登録用紙を持ってカリーチェと共に冒険者登録をする為に受付へと向かった。

 ……しかし、そこでユーキは自分の迂闊(うかつ)さに気付く。


「……では、何か身分を証明できるものを提出して頂けますか?」


「あ……」


 ユーキは失念していた。冒険者の登録には住民票などの、身分証明書が必要だという事を。

 ゆっくりと振り返りカリーチェを見るが、不安な表情で首を振る。今までの彼女の言動を見れば、その様な物を持っていない事など分かり切っている。

 この街・エステリアの出身でないカリーチェには、今から住民票を取りに行くのは不可能だ。というか正直、エクメーネ出身だというのも本当かどうか疑わしいものだ。


「もしかして……、あたし、冒険者になれないの?」


「…………」


 不安気なカリーチェに、ユーキは返す言葉が無い。冒険者どころの話では無いからだ。

 今時、身元がハッキリしない人間を雇ってくれる職場がどれだけあるのだろうか?これではスラムの住人と変わらないではないか。

 ……冒険者は労働者としては底辺だ。しかしカリーチェの立場は……、更に最底辺の身分の者たちと、そう変わらなかった。


「ねっ、ねぇっ! 何とかなんないのっ⁉ あたし、無一文だし……。は、働けないと……」


 事態の深刻さに気が付いたのか、カリーチェは必死に受付嬢に(すが)る。

 確かにお金を持っていないカリーチェは働けないと生活できない。必死になるのも当然だ。ユーキだって、自分がその立場なら必死になっただろう。

 しかし、いくら受付嬢に言っても無理なものは無理だろう。


 そんな風にユーキが考えていた時、後ろから怒鳴り声が聞こえた。


「オイっ! いつまでゴチャゴチャやってんだァっ⁉」


 その大声に振り向くと、そこには赤ら顔をした男が腕を振り上げていた。その腕は振り下ろすつもりは無いらしく、ただブンブンと振り回して威嚇している。


「こっちもヒマじゃあね~んだぞぉっとっととと……」


 男は自分で回した腕に振り回されてふらついている。

 赤い顔に、怪しい呂律(ろれつ)。千鳥足に、この臭い……、酒だ。


「……で、身分証が無けりゃ冒険者登録は無理なんですか?」


 ユーキは軽く溜息を()きながら、カウンターへと向き直った。

 こちらこそ酔っ払いなどを相手にしている暇は無い。それに、こういう手合いは相手にしても話にはならない。無視するに限る。


「えぇっと……、絶対に無理……」

「てぇめぇっ‼ ムシすんじゃあねえろォっ‼」


 だが、露骨な無視は男を激昂(げっこう)させてしまった。ユーキの肩を掴み、今にも殴りかかりそうな素振りを見せている。

 しかし、酔っ払いの動きはまるでスローモーションだ。旅をする為に何年も鍛え、魔物や盗賊との戦闘経験もあるユーキには止まって見える。


(こりゃ、素人だな……。やり合って負ける事はあり得ねぇけど、ギルド内で暴力沙汰は不味いよなぁ……。とりあえず、躱して適当にあしらうか)


 こんな(のろ)いパンチに当たる訳が無い。躱された男は更に激昂(げっこう)するだろうが、どうせその内ギルド職員に取り押さえられるだろう。全く……、余計なトラブルに()ったものだ。

 そんな風に考え、ゆっくりと身を(よじ)る。……だが、いつまで経っても男の拳はやってこなかった。


 何故なら……、男の身体をカリーチェが、その小さな身体で抑え込んでいたからだった。

 勢いを止められた男は、腕を振り上げたまま叫ぶ。


「ガキィっ‼ 邪魔すんろかァっ⁉」


「するに決まってるでしょっ⁉ あんたバカなのっ⁉」


「あんらとォ……っ⁉」


 ……カリーチェの行いは正しい。……言っている事も正しいのだろう。

 暴力行為を身体を張って止め、公共の場での迷惑行為を咎める。10人に聞けば10人ともが、カリーチェの味方をするだろう。だが……。


「お、おい……」


「昼間っからお酒を飲んでっ、怒鳴り散らして人に迷惑をかけてっ、おまけに暴力を振るうなんて、人としてサイテーよっ!」


「らまり……っ、やがれっ‼」


 しかし正しい行いの結果が、その行動の通りに正しく報われるとは限らない。いや、むしろ報われない事の方が多いのではないだろうか?

 カリーチェの正論に返す言葉を失った男は……、振り上げたままの腕をカリーチェの頭に目掛けて振り下ろした。


「ぅぎゃんっ!」


 打ち下ろしの拳を頭に受けたカリーチェは、悲鳴を上げて床へと倒れた。

 素人の一撃でダウンしてしまったカリーチェだが、無理もない。ユーキと違い、カリーチェの身体は鍛えられてはいない。しかも、その身体は13歳くらいかと見間違う程に小柄な女の子なのだから。


 ただ、今回の件はカリーチェも迂闊(うかつ)だったとも言える。少し考えれば、こうなるのは目に見えていた筈だ。だからこそユーキは、手を出さずに無視しようとしていたのだ。

 カリーチェの行動は、10人に聞けば10人が正しいと言うだろうが、実際に同じ行動をする者は10人に1人も居ないだろう。


「はっ! ガキが、大人に逆らうからよ……ぼォっ⁉」


「……テメェ。女子供に手ぇ上げるたぁ、覚悟出来てんだろぉなぁっ⁉」


 だがユーキはここで、10人に聞けば9人は間違っていると答えるであろう選択をしてしまう。

 カリーチェを殴った男の顔面を、殴り返したのだ。


 いや、ここまでなら正しい行いだと答える者はもっと居るだろう。しかしユーキの報復は、この一撃だけでは終わらなかった。


「ぶっ……、がっ……、げぇっ……」


 恐らく最初の一撃だけでも、放っておけば男は倒れたであろう。……しかしユーキはそれを許さず、次々に連撃を放った。男が倒れそうになる度、下から打ち上げて倒れる事を許さない。

 前や横には倒れる事が出来ない……。男が仰向けに「倒れる事が出来た」のは、ユーキの8発目の打撃でようやく、であった……。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「ヴィーノのおかげで宿代が安く済んで良かったねっ」


「そうだね。部屋も2部屋借りれたから、男女で別れられるし」


「ボク、みんな一緒の方がいいけどなー」


「どの道、4人部屋までしか無かったから全員は無理っスよ。他の宿はビミョーに条件が悪かったっスし……」


 そんな雑談を交わしながらアレクたち、宿の確保組は冒険者ギルドの扉を(くぐ)った。

 宿選びは、何度か王都へ来た事のあるヴィーノが主体で行い、代金の値切り交渉までしてくれた。1ヵ月分の前払いとなってしまったが、仮にリングがすぐに見つかったとしても、次の目的地に行くまでの路銀を稼ぐ必要がある為、問題ない。

 むしろ、そろそろ年頃だというのにアレクの発言の方が問題だろう。


「それにしてもユーキたち……、少し心配だね」


「ダイジョーブだよっ。ユーキとカリーチェなら、きっと仲良しになってるさっ」


「そうっスね。なんたって「年下キラー」っスからね」


「……そう言う事じゃあ無いんだけどな」


 ユーキたちを心配するエメロンだったが、アレクとヴィーノは斜め上の信頼で応える。別にカリーチェとの仲を心配して言った訳ではない。

 いや、そちらも少しは不安ではあるが、ユーキの事だ。きっと上手くやるだろう。


 エメロンが心配だったのは、カリーチェの冒険者登録の事だ。

 街に入る直前の会話から、カリーチェはクライテリオン帝国から来たものと推測できた。普通は入国許可証などを持っている筈だが、あまりにも世離れしたカリーチェは持っていない疑惑がある。

 身分証明が出来なければ冒険者登録は不可能だ。……まぁ、他に手段が無い事もないのだが。


「とりあえず、ユーキたちと合流しよう。明日からの予定も組まなくちゃいけないしね」


「……って言っても、この人ゴミじゃあ探すのにも骨が折れるっスね」


 ヴィーノがそう言ったのも無理はない。エステリアの冒険者ギルドは建物の大きさも、人の多さもシュアープのギルドとは段違いだ。

 「ギルドで合流しよう」と決めてはいたが、「ギルドのどこで」とは指定していなかった。こんなに広くて、人が多いと知っていれば、もっと詳細に待ち合わせ場所を決めていただろうに。


「どうする? 手分けして探す?」


「それともアタシがフードを被って探してきてあげよっか?」


 アレクと、鞄の中から顔だけを出したリゼットがそんな事を言う。

 土地勘の無い場所で手分けするなんて、更に合流に時間がかかる結果になりかねない。リゼットの案も却下だ。透明のフードがあっても、何が起こるかわからない。今、顔を出しているのも危なっかしい。


「それより、受付で聞いてみればいいんじゃないかな? ユーキは「インヴォーカーズ」の所属変更に来たんだし、ひょっとするとユーキが言伝(ことづて)を頼んでるかも」


「あっ、そっか。確か、伝言サービスがあるとか言ってたよねっ?」


 エメロンに言われて、アレクは冒険者がパーティを組むメリットの1つ、伝言サービスを思い出す。

 伝言を届ける距離や、伝言の保存期間によって料金が発生した筈だが、ギルド内でその日の内ならば無料だった筈だ。


 目端(めはし)()くユーキなら、アレクたちが合流に手間取る事を予想するかもしれないし、エメロンが伝言サービスの存在に気付くのを予測するかもしれない。

 そう思えば手分けしてバラバラに探すなんかよりも、よっぽど可能性が高いように思えた。


 誰もエメロンの提案には異論は無く、全員揃って伝言サービスを取り扱っている受付へと向かう。きっとそこには「どこそこで待つ」なんて伝言が残されているだろうと期待して。

 だが……。


「事情聴取……?」


 誰も予想も予測も、ましてや期待なんて全くしていなかった事態にエメロンとヴィーノは顔を青くした。

 だが事態をきちんと把握できていないのか、アレクとリゼットの2人はキョトンとしていたのだった。


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