第八話 チュー
音がしたと思われる所に着くと大きなクレーターが出来てた。
「ハーッハッハッハ!」
中央には、哄笑をあげる金色の鎧をまとったアナがいた。
まあ、予想通りと言えば予想通りだ。
「いただきまーす!」
木陰から何かが僕に向かって飛んでくる。それは僕にぶつかりしがみつく。それは僕の頭を両手で掴む。目が合った。
「エルフ?」
まだ、幼さが少し残った、この世のものとはおもえない位に整った顔。尖った耳に金髪のツインドリルヘア。
ブッチューーッ!
いきなりチューしやがった! そいつは僕から離れると地面にくるっと着地する。
「充填完了! モモ拾って!」
疾風のごとくやって来た、モモさんがそれをかっさらう。
ビターン!!
「あれは誰ーッ!! もう! 許さないわー!!」
何故かサリーにビンタされ、サリーがまた手を振り上げる。僕は堪らず、目を瞑る。また、頭をつかまれて……
唇に暖かく柔らかいものが触れる!
サリーが僕を抱きしめてチューしてる!!
僕は固まり時間が止まる。
ダッダッダッ!
何かが近づいてきたが、僕は動けない!
「お前ら、余裕だな! 二人まとめてぶったおして、まとめてチューしてやる!!」
サリーを無理矢理引き離す。見ると金色の鎧のアナ!
間違いなく100%形態で暴走してる。やばい!
「グラビティ・ゼロ」
僕はまたサリーを抱き走り出す。
サリーは、しあわせそうな顔で僕にしがみついてくる。
もう、なにがなんだか解らない。
薬草採取のはずが、エルフ美少女にチューされて、ロリ巨乳美少女にチューされて、金髪美少女ハーフエルフに追っかけられてる。
とりあえず、モモさん達と合流しよう!
僕は大きめにジグザグに走る。
いつの間にか、後ろには誰の気配もない。
なんとかアナをまけたのでは?
アイツはおばかだから、基本的に直進しか出来ないはず。
山頂の方に向かって走る。そちらの方が木が多いので見つかりにくいだろう。
走り続けると、思惑と逆に岩肌の多い所に出た。
ジャラン!
鎖のような音が聞こえる。
いきなり遠くから鎖が伸びてきて、僕に絡まり引き寄せられる。
なんだ?
抵抗するがサリーごと宙を舞う。みるみる岩肌に近づき、ぽっかり空いた穴に吸い込まれる。僕は洞窟に吸い込まれた。
鎖は消え失せ、僕は着地する。そこにはモモさんがいて、出した巨人の手で天井を叩いて崩落させた。辺りが真っ暗になる。
「光よ!」
サリーの魔法が辺りを照らす。
そこは結構広さのある鍾乳洞のような所で、僕にチューした美少女エルフもいる。まぁ、多分ベルなんだろう。当然モモさんもいる。モモさんは、若干髪がボサボサで、服がやたらボロボロだ。僕はサリーを下ろし、僕達は円座に座る。
美少女エルフが口を開く。
「これが本来の姿かしら! 私はベルよ!」
ベルが言うには、僕達と別れた後、どうしても負けたくなかったベルは、一回こっきりしか使えないエルフの秘宝をつかって、時の止まった異次元へ行き、一ヶ月位、修行とダイエットにモモさんと一緒に励んだらしい。
しょうも無い事で、貴重な魔道具を使わないで欲しいものだ。ベルには一回所持品検査が必要だな。
それから2人は経緯を話し始めた。モモさんが言うには、ご飯はアンブロシアと水だけの地獄の日々だったそうだ。
喰ったのか!
あれを!
しかも、可憐なモモさんが!
道理でモモさんの目が座っている。
どうせ、ダイエットなら牛男も連れていけよ!
ベルがめでたくダイエットに成功し現世に帰って来て、薬草採取してる所でアナが襲いかかってきたそうだ。
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