表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/485

 第一話 ベルと言う名の廃エルフ


「ううん……」


 僕は、まるで乗り物にでも乗っているような、一定間隔の振動で目を覚ました。頭がガンガン痛い。


「気がつかれましたか?」


 牛男だ、僕は牛男にマントでくるまれて、お姫様抱っこされてる。ごつごつした牛男の手の感触以外になんか柔らかいものも触れる。モミだ、モミも一緒に抱っこされてる。Wお姫様だっこだ。女子がお姫様抱っこ好きな訳が解る。楽だねー。


 通行人が僕たちをじろじろみる。そりゃそうだ。紙袋被った大男が人を2人担いでいるのだ。犯罪者にしか見えない。


 話を聞くと、牛男は衛兵の詰め所で事情聴取を受け、やっとのこと解放され、美少女が広場中央で乱闘してるという話を聞いて駆けつけてくれたそうだ。


「牛男。ありぎゃとう」


 僕は牛男に礼をいう。マントといい、牛男は紳士だ。悲しい事にまだ芋焼酎のお陰で少し麻痺っている。


「どう致しまして、ご主人様のお役にたてて光栄です」


 このうやうやしさもいい。僕は牛男の腕に触れタッチヒールを流し込む。


「ありがたき幸せ」


 牛男はコクリと軽く頭を下げた。


 モミは会うなり牛男に襲いかかってきたそうだ。まじ狂犬だな。エルフは放し飼いしないほうがよいのでは?


 そのあとは、吐くわ、屋台の物をいきなり食べ始めるわ、パンツ買うのに連れて行かれるわ、通行人に喧嘩うるわで、それはもうはちゃめちゃで手がかかったらしい。

 わかる! わかる! こいつはデフォルトで人の斜め上の行動するからな! ちなみにお金は戦いのあと貰ったおひねりで賄って、まだ余裕があるそうだ。


「うぷっ!」


 モミが痙攣して危険な声をもらす。モミが動くのでなんか柔らかいとこに手が触れる。僕、こいつとチューしたんだ……


「ご主人様! 顔が赤いようですが、どうかされました?」


 僕はモミとの戦いをつぶさに話す。


「ご主人様の神々しきお尻に汚い指を突き刺しまくり、あまつさえ口移しで芋焼酎をのませた……」


 牛男が少しぶるぶるしてる。怒ってる。いや激怒している。


「このゴミ、どぶに捨ててもよろしいでしょうか?」


 牛男の目がギラギラ光る。


 いかん! 本気だ!



「止めとこう、これでもこいつ冒険者ギルドの職員だから」


 僕たちは、モミが邪魔なので、とりあえず、家に戻ることにした。


 そうこうしてるうちに、僕たちはモミと3人娘の住んでるアパートに着く。


 おとなしく眠ってるモミをモミの部屋に運び寝かしつける。もう勘弁してほしい。


 気分は優れないが、まだ、3人娘は帰ってきてないので、僕たちはモミの言ってたハイエルフの家を訪ねてみる事にした。


 モミの言うことなので、半信半疑だったけど、目標の家はすぐ見つかった。


 何というか、小さい女の子がお人形遊びで使うような家だ。ずんぐりむっくりの木に扉が付いてる。なんかそれとなく品が無い。しかも臭い、カブトムシのような臭いがする。


「森に住んでたときに、食べ物が無いときこのような木の皮を剥いで食べてたものです。それに比べて今はしあわせです」


 牛男の目がうるうるしている。なんかこいつよく泣いてるな。


「大丈夫、そんなものは2度と食べさせない! 今晩は焼き肉だからな! じゃ、牛男行くぞ!」


 僕は牛男の主人として、絶対にひもじい思いは2度とさせない。


 気を取り直して、僕はその木の家をノックする。


 コン、コン!


 ノックをするが返事がない。


 コン、コン!


 またノーリアクション。


「誰かいましぇんかー!」


 大きな声を出す。まだ芋焼酎が抜けない。


「開いてるから入るのかしら!」


 中から気だるそうな高い声が聞こえる。僕は牛男に目配せをする。牛男もモミと接してエルフの恐ろしさは学んだはずだ。


 僕はノブに手をかけ、ドアを開ける。


 部屋の奥で、ソファに寝転がった丸々と肥えたものが、テーブルから蒸かし芋? を手に取り食べながら、本をよんでいる。


「子豚?」


 僕の口から呟きが漏れる。


「ご主人様、あれは、丸々と太った少女だと思われます。豚に見えますが、豚ではないと思います」


 牛男が真面目に解説する。


 少女? が起き上がり僕たちを睨む。


「怪しい奴らね! ベルになんの用かしら?」


 ピンクのドレスに、髪は金のツインドリル、そこから尖った耳がのぞく。僕の心に怒りが巻き起こる!


「ブタが、ロリツンデレ語つかってんじゃねーよ!」


 僕は魂の叫びをあげる!


「なに訳の解らないこと言ってるの? あと、ベルをブタブタ言って死にたいのかしら!」


 ベルと名乗った子豚は僕に指を向ける。


「万物よ、もとある形に戻れ!」


 ベルの指先が白く光る。


分子分解ディスインテグレイト!!」


 ベルの指から白い光線が出る。


「グラビティ・ゼロ!」


 僕は嫌な予感がして、部屋の中に転がり込み大きく避ける。光は大地に吸い込まれ、その付近が白く発光する。そのあとは成人男性が余裕で入るような黒い穴がぽっかり空いていた。


 こいついきなり大技放ちやがった、危険すぎる!!


 僕は変な汗が出てくるのを感じる。


「あー、あのー、僕たちが悪かった。とりあえず話しあわないか?」


 僕は笑顔で話しかける。とりあえず下手に出てみよう。さっきの魔法はヤバそうだ。


「痩せてるのに巨乳、エルフを馬鹿にしてるのかしら。そしてその美貌ふざけてるのかしら! それでは話合いましょう。あなたもデブになったあとにね!」


 また、ベルが指を突き出す。


「あまねく存在するマナよ! この者を満たせ!」


 ベルの指が金色に光る。


飽食祝福グラトニー!!」


 ベルから放たれた金色の光線が僕に迫る。速い避けられない!


 ドンッ!!


 牛男が僕を突き飛ばし、光が牛男に突き刺さる!


「牛男! 大丈夫かっ!」


 牛男は倒れ込む。


「ウオオオオー! 満腹だー!」


 牛男がなんか叫ぶ。そこには、牛男だった、はち切れんばかりの丸々太ったミノタウロスがいた……



 読んでいただきありがとうございます。


 みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。


 とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ