第九話 心が折れる
「それでは、そうだな、マリーの取れる選択肢を考えてみようか!」
アナが最高の笑顔で僕を見る。くそー! 鬼畜めが!
「まず1つめは、このまま何もしない。多分漏らすだろう。掃除は喜んで私がしよう。多分マリーには今後不名誉なあだ名がつくだろう」
アナがゆっくりと諭すように言う。
「失禁聖女!」
ストレートすぎる。あまり面白くない。
「次の選択肢は、尿瓶を使う事だ。そんなものうちにないから、何らかの代用品を用意しよう。デメリットは、少しこぼすかもしれないことだ!」
アナは、目を瞑り首を横に振る。おすすめではないという意思表示だろうか?
「あたしたちがマリーちゃんを抱えてトイレに連れてくっていう選択肢もあるわねー」
サリーが指を立て嬉しそうにほざく。死んでも嫌じゃボケェ。
「そして、これがおすすだが、全部服を脱いでシャワーを浴びながら用を足すというものだ。デメリットは年取ったときにシャワーを浴びるたびに用を足す体質になってしまうかもしれない事だ!」
アナは活き活きとしてる。どこがおすすめなんだ。なにも良い事ねーよ。クソッ! そんなに僕をいたぶるのが楽しいのか? この、真性変態めっ!
「では、マリーどれにするかい? 私にとってはどれもデメリットはないから、好きな選択肢を選ぶのだ!」
アナは大声でのたまうと、僕に近づいてくる。
「僕にとっては全部デメリットしかないわ! ボケー!!」
「おやおや、元気なウサギちゃんだ! キミは自分の立場がわかっているのかな!」
アナはそう言うと僕のあごをしゃくる。
「覚えてろ! 絶対しこたま泣かしちゃる!」
僕は吐き捨てるが虚勢でしかない。ヤバい漏れそうだ。時間がない!
「あらあら、口のききかたがわかってないよーねー! 助けては貰ったけど、あたしたちひどい目にあわされた訳だから、アナが好きなようにしてもいいんじゃないかなー!」
誰がお前に迷惑をかけたサリー! けど、なんかひっかかる言い方だなぁ……
やばい! 膀胱が破裂しそうだ! アナの選択肢はどれを選んでも軽く人としての尊厳が無いような……
僕は泣きそうになる……
決して彼女らは僕を陥れそうとしてる訳じゃない。と思う……
もうだめだ!
誰か助けて……
誰か……
ぶちっ!!
なにかが切れる音がする。右手に巻いてたミサンガが切れておちる。
すぱーん!!
どこからともなく飛んで来た、ハリセンが僕の頭をたたく!
「どんなピンチも気合いで乗り切ってきたのに、おしっこしたいくらいで心折れて助けを求めるないの!!」
僕の目の前には、ハリセンを持って仁王立ちの母さんがいた!
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