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 第六話 聖女売られる


「母さん。今、実体ない設定だよね。どうやってそれ持ってるの?」


「細かい事は気にしない気にしない」


 母さんはサリーに持ってる杯を渡す。


「それよりも、それと対になってる聖杯もつけるんだから、もっとお値段勉強してくれないかしら?」


 母さんが口に人差し指をつけて言う。こういう、なんというか、自分可愛いって感じの仕草がとても僕の逆鱗に触れる。ばばぁのくせに。


「すみません、これ以上は厳しいですー……」


 サリーが母さんに応える。


「厳しいってことは、まだ、いけるのね。あと、大金貨10枚!」


 母さんの目がきゅぴーんと光る。


「あと5枚!」


「あと9枚!」


「6枚!」


「ええーい! もってけドロボー、じゃ、娘もつけるわ! じゃ8枚!!」


「それでもまだ、高いわねー! 7枚!!」


「……しょうがないわね! いいわ! 商談成立!」


 こうして、めでたく聖杯と僕はサリーのものになった。


「んなわけあるかー!」


 くそっ、叫ぶが体が動かない!


「母さん、こともげもなく自分の娘である僕を売るな! サリーも僕を値切るな!」


「ちょっとまったー!」


 ここでアナが叫ぶ。これ以上面倒くさくしないで欲しい。


「大金貨8枚!! これでマリーとそこに落ちてるマリーの脱ぎたての下着を私が買おう! 聖杯と牛はいらん!」


 アナ参入! 嬉しそうに僕の下着を抱きしめている。なにが、うれしいのか? やばい、これでカオスだ。もうもはや微塵も話がすすまない……


「じゃあー、聖杯とマリーちゃんの下着を合わせて大金貨5枚! これでどうかしら! マリーちゃんの下着は、あたしが大金貨1枚でアナに売るわー!」


 サリーがビシッと人差し指を立てる。おお、しっかり値切ってる。


「わかったわ! ここがおとしどころね。今度こそ商談成立ね!!」


 ガシッ!


 サリーと母さんはしっかりと握手した。


 母さん、実体ないはずじゃ……


「使い方は、まずは娘にロザリオを掛ける」


 母さんはサリーからロザリオを受け取って僕の首に掛ける。ちなみにまだ硬直中。


「そして、待っていて、溜まったら出てくるわ。多分もうすぐ」


 母さんは主語が少ないから、言ってる事がわかりにくい。感覚で生きてるのだろう。


「溜まったら、どこからなにがでてくるのだ?」


 アナが問いかける。ギルティだ!


「アナ! 下ネタ禁止! 下ネタ女子は嫌いです!」


 僕は、アナをたしなめたつもりだった。


「すまん、だが、どこが下ネタなのか? 私にはよくわからん?」


 む、天然だったのか。僕の考えすぎだった。


「お母さんがリアルに説明しましょうか? 大人ですから!」


 嬉しそうな顔で母さんが言う。


「母さん勘弁してくれ、それより、アナ、僕の下着をどうするつもりだ?」


 僕は話をそらす。今日は絶不調だ。


「マリーの下着は、洗って綺麗にしたが、どうしてもしみがとれなくて……」


「ちょっまてや! パンツにしみ付いてるとか恥ずかしい事堂々というなや!」


 僕はアナにくいかかる。


「マリー落ち着け、この下着は、牛男や私と戦った時のやつだ。血が取れないんだよ」


 アナが僕の目の前で下着を広げる。むう、2連続勘違いだ。けど、言い方悪いよね。


「この下着はマリーの戦いで唯一の装備。いわばマリー自身。だから記念に欲しかったんだよ。目立つ所に飾ろうと思う」


 アナは拳にぎり言い放つ。


「わかった。しょうがないな。けど、飾るのは止めてくれ。見えない所にしまってて欲しい。けど、履いたり被ったりは禁止」


「あ……」


 アナが呟く。遅かった。もうブラジャー被ってやがる。


「けど、下着はつけるためにあるものだぞ。ちゃんと洗って使うから」


 だめだ、グダグダだ、もう疲れた。ていうか硬直なげーな。


「わかった。もういい下着は好きにしてくれ」


 僕は、なげやりだ。


「じゃあ、いいのか! くんくんしてもいいのか?」


 アナがいたずらっぽく笑う。


「だめ。それだけはやめてー」


 カラン! カラン!!


 乾いた音が部屋に響く。サリーの聖杯からだ。聖杯ナイスだ。



 読んでいただきありがとうございます。


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