第二話 泣く
「うぉー! い、痛いー!!」
巨人の手に初めて殴られたが、めっちゃ痛い。まるで岩だ。僕は頭を抑えてうずくまる。今後はモモさんを怒らせないようにしよう。
それよりも、まずはこれからの事を考えないとな。
「ところで、誰か、僕達を泊めてくれないか?」
出費がかさむのもあるが、牛男と二人で宿屋暮らしは、安全だとは思うが、変な噂が立ちそうだ。
「うちに泊めてもいいが、うちは基本的に着衣厳禁だぞ、あと、牛も厳禁だ! 今は例外中の例外だ!」
アナがまた訳の分からない事を言う。ていうか服を着ろ服を。またいじめてやろうか! うっ、モモさんが僕をみている。僕はモモさんの家に泊めてくれないかなーって感じで、モモさんを上目づかいで見る。
「私の部屋は……その……散らかってるからだめ」
目を逸らしながら、モモさんがもじもじしながら言う。そうそう、僕が求めているのは、こう言う言葉だ。萌える!
「じゃ、という事は、あたしの部屋に確定ね。その代わり、いろいろ話してね! いろいろ……」
サリーが僕の目をじっと見つめる。いろいろって言われてもなー?
「まずは、なにから話そうか?」
僕はサリーに問いかける。
「それなら、まずはねー」
「それなら、まずは、どうやったら胸がそんなに大きくなるのか教えてくれ!」
サリーにアナがかぶせてくる。
「うちの親に聞け! 終了! じゃ次」
アナは今後できるだけ流す事にした。少しさみしそうだが、心を鬼にする。まじ全く話が進まんぞ。
「なんでー、そんなにマナがたくさんなのー?」
「修行の賜物です」
サリーに僕は答える。これは本当だ。16年間毎日毎日魔法を使い続けた。どんなことがあっても。雨の日も風の日も。
「嫌なら言わなくていーけど、何の魔法が使えるのー?」
「タッチヒール、ホーリーライトだけだ」
サリーに僕は答える。キラの時は他の魔法も使えるが、マリーが使えるのはこんなものだ。サリーはきょとんとしてる。ちょっとかわいい。
「それだけ?」
「うん」
「………」
サリーは複雑な顔をしている。
「もしかして、お前、役たたずの能なし聖女なのか? ほぼ何も出来ないのに、あんな無茶して、いっぱい怪我して……牛男をたすけて! 私たちを助けて! お前はばかなのか! ばかなのか!」
アナが声を荒げる。
「ばかばか、言うなよ」
「お前はばかだ! 大ばかだ! 世界最高の大ばかだ!」
アナは立ち上がり、さらに言いつのる。
「ほんとうに。ほんとうに、おおばかだよ! うう、ぐすぐす」
アナは、僕を、持ち上げ抱きよせると泣き始めた。
「うう、アナ、なぐなよ! ぼぐだっで……」
僕もいろいろなにかが噴き出して、アナにしがみついて泣き崩れてしまう。それから僕らはしばらく泣き続けた。どうもマリーはメンタルが弱いだけでなく、涙腺も弱いみたいだ……
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