第十五話 最強最弱の聖女
僕たちは走っている。牛男に僕がおんぶされる形だ。重量を減らすと、みるみるアナに追いつく。
「アナ! 最終ラウンドだ! お前をぶっ倒す!」
僕はアナに指を突き付け叫ぶ。
「性懲りもなく。牛を手懐けたか」
アナがこちらを向く。
瞬間で僕らは近づき、牛男はアナを殴り付ける。インパクトの前に重力を解放する事で拳には僕達の体重が全て乗ってる。アナはたたらを踏み若干後退する。
「なかなか、良くなったな。けど、私には全く効かないよ」
アナがやれやれポーズを取る。
「やってみないと解んないぜ! 行くぞ牛男!」
「モモモモーゥ!」
打ち合わせ通り牛男には喋らせない。馬鹿のふりをして、少しでも油断して貰うために。
牛男アンド僕は、重力操作による加速を利用して高速連打を放つが、かすりもしない。
やはり強すぎる。
けど、そろそろなはず。
「ウモモッ!」
牛男と僕は蹴り飛ばされ吹っ飛ぶ。途中で牛男は僕をお姫様だっこに持ち替えて、背中で地面を削る。おお、なかなか牛男紳士だな。
ドゴーン!!
空から何かが落ちてくる。グラビティ・ゼロで牛男が投げたモモさんだ、先程出来る範囲である程度回復させてる。
「私の事も忘れないでよ!」
モモさんは挑発的に言うと、巨人の腕で殴りつけまくる。
しかしそれも全て躱される。
「無駄だ。せっかく見逃してやったのに」
躱しながら、アナが話す。今は余裕だな。こっちは多分ラストチャンスなのに……
アナが、モモさんの巨人の両手を弾き飛ばす。
「ファイアーボルト!」
モモさんの背に隠れてたサリーがようやく溜まったなけなしのマナで炎の矢を放つ。
だが、アナの目の前で散華する。
「今だ牛男!」
僕は叫ぶ。
「モウモーッ!」
牛男は、僕をアナに向かって投げつける。
アナは僕に槍を突き出す。
僕の左肩を貫通するが、勢い余り僕はアナに抱きつく。
「帰ってこい! アナ!」
僕は封魔のロザリオを、アナの首にかける。
アナから光は消え、金色の鎧兜は消え去り力なく膝をつく。
「ウウッ!」
崩れ落ちるアナを抱き止め、地に横たえる。
「タスケテ!」
後ろで牛男の弱々しい声がする。やばい、干からびかけている。肩は痛いが、即効で牛男に駆け寄り手をつなぐ。槍を牛男に抜いてもらう。
「今度こそ、終わったわね」
モモさんに背負われて来たサリーが言う。
もう、フラグでありませんように。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ねぇ、そいつ本当に大丈夫なの?」
大地に座ってサリーが言う。僕たちは、アナが目覚めるのを待っている。
「すごく仲良しさんなのね、さっきまで戦ってたのにね」
これまた大地に座ったモモさんが言う。
血は粗方拭い、胸元は縛ってとめている。牛男を警戒してか巨人の腕は横にころがってる。
「サッキハ、ゴメンナサイ」
牛男は頭を下げる。コイツはもう、安全だろう。僕は牛男と手をつないで座っている。その繋がれた手は淡く光っている。タッチヒールを流し続けてるからだ。
僕の格好は下着姿だ、さっき買った服は収納に入れてなかったからだ。
僕、服に困りすぎだろ……
決して裸族ではない。
「ううん!」
アナが目を覚ます。
焦点の合わない目で辺りを見渡す。
その目が僕をとらえる。
「ごめんなさい! そしてありがとう!」
アナは僕に駆け寄りダイブして抱きつく。
ふにょん!!
小振りの胸が僕の頭にあたる。
「あなたが、男の子だったら私確実に惚れてたわ!」
チュッ!!
僕の額に、何かが触れる。
初めての事に僕の頭は処理出来なくて……
視界が真っ白になって……………
第二章 新たな仲間 完
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