第十四話 力
ゴウッ!
アナは槍を僕ごと大地に突き刺した。どくどくと腹から血が溢れでる。お腹に火の棒をさしこまれたみたいだ。やばい、串刺し状態では回復出来ない。
「お前はよく頑張った。そこで朽ち果てろ。餞別だ、その槍はくれてやる!」
アナは僕に背を向け町の方へ歩き出す。
僕は力を込め槍を抜こうとするが、力が入らない。どうしても抜けない。
ここで終わるのか?
否!
諦めるな!
諦めてたまるか!!
まだ、僕は生きている!!
よく考えろ! 今何が出来るか?
モモさんを見ると、彼女はうつ伏せに倒れている。その横には巨人の両腕が転がってる。肩が微妙に動いているので、気を失ってるだけだろう。しばらくで回復すると思われるが、僕がそれまで持ちそうも無い。
サリーも同様横たわっている。動かないとこを見ると、気を失っているのだろう。連戦でマナを使い果たして、さらに骨折による痛みによるものだろう。戦力にはならない。
力がほしい。僕にもっと力があれば、彼女たちもこんな目に遭わないですんだはず。なんで、僕は女なんだ。僕が男、キラだったなら……
「ゴアッ!」
僕の横で、ミノタウロスが呻く。腰位までは燃え尽きて、角がボロボロ崩れ始めている。
僕は力がほしい……
僕に力があれば……
僕に力が……
僕は力を見つけた!!!
僕はミノタウロスに手を伸ばす。
届かない。
全身に力を入れて伸ばす。
でも届かない。
けど、あと少しだ。コイツが手を伸ばしてくれれば……
「おい、牛野郎! 目を覚ませ! 手を伸ばせ!!」
僕はありったけ手を伸ばす。
「ナ、ナゼ?」
ミノタウロスの口から言葉が洩れる。
やった! まだ意識はある。
「お前は、今から俺のものだ! 俺に力を貸せ!」
僕はミノタウロスの目を見据える。
「ナニヲイッテイル、オレハ、オマエラノテキダ」
ミノタウロスは何とか目を開く。
「そんなこと関係ない! お前は今からうしお! 牛男だ! これからは俺を守る為に生きていけ!」
僕は大声を出す。
「ムリダ、オレハオマエラヲキズツケタ」
牛男の角は崩れ去り顔面にひびが入る。
「許す、俺が許す、だから手を伸ばせ!」
僕は手を伸ばし振る。
あと少し、あと少しで届く。
「ムリダ、オレハモウクズレル、ソウツクラレタ」
コイツの強大な力は代償があったのか。炎が腹まで達している。ひびも残った全身に広がっている。時間が無い!
「勝手に作られて、勝手に戦わせられて、勝手に死ぬ。それでいいのか?」
「………」
「お前死にたいのか?」
「…………ィ」
「お前死にたいのか? こんなとこで、1人で、無意味に!」
「……シニタクナイ……」
牛男の目から涙が溢れる。
「牛男!! 俺の手を取れ!!」
「ムリダ」
「無理なわけあるか! 俺が癒す!!」
「イタイ、シニタクナイ、ダレカタスケテクレ」
牛男の両目から大量の涙が溢れる。
やばい! 牛男の残った体に無数のひびが!!
「牛男手を伸ばせ! 俺が癒す! 崩れても崩れても俺が癒して癒して癒し続けてやる!!」
牛男が手を伸ばす。
その大きい手を掴む。
僕は今残っているマナで、ありったけのタッチヒールを注ぐ。
ひび割れが止まらない、間に合わなかったのか?
砕け散り、その下から、新しい皮膚が覗く。僕の魔法と、牛男の回復力がみるみる炎を押しやり再生していく。
牛男は立ち上がると、僕に刺さった槍を抜く。
僕らは手を握って立つ。
『うしお』と『うしちち』のツインビーフコンビ結成!
これからが伝説の始まりだ!
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